強みを活かした新規事業の立ち上げ | 企業価値の見直しとチームビルディングを支援
写真左)朝日新聞社 メディア事業本部 アライアンス事業部 部長 梅田 実様
写真右)朝日新聞東京本社 メディア事業本部 事業創造部 事業推進担当次長 安藤 翔一様
写真中央)弊社 コンサルティング部 インサイトコンサルティンググループ 堀 好伸
企業の戦略マーケティングなどの推進・強化に向けて、クロス・マーケティングでは調査データの利活用を基点とした併走支援を行っております。今回は朝日新聞社メディア事業本部の梅田実様・安藤翔一様にお話を伺いました。
株式会社 朝日新聞社
1879年(明治12年)創刊、全国紙「朝日新聞」を発行する新聞社。現在はニュースサイト「朝日新聞デジタル」などのデジタルメディアによるコンテンツ事業、展覧会などのイベント事業、不動産事業にも携わり、時代の変化に合わせた情報発信を続けている。
朝日新聞社
メディア事業本部 アライアンス事業部 部長
梅田 実様
以前はデジタル企画室メディアラボチームマネージャー。デジタル領域における新規事業開発の統括を担う。中長期的な経営計画として、既存事業に捉われない新規ビジネスの可能性の探索と事業計画化の推進に従事していた。
朝日新聞東京本社
メディア事業本部 事業創造部 事業推進担当次長
安藤 翔一様
以前は、デジタル領域における新規事業を考えて実行するメディアラボチームに所属し、プレーイングマネジャーとしてチームを引率。事業創造部では、新規事業を創出することをミッションとして、現場メンバーのリーダーとして従事。
プロジェクト概要
ゴールイメージ
・既存事業に捉われない新規ビジネスモデルの開発
課題
・新規事業アイデアの集約、自社コアコンピタンスと社会ニーズを捉えた事業構想化
・複数の部署・職務のメンバーから選抜された新規事業部のチームビルディング
ソリューション
・デザイン思考型ワークショップ(アイディエーション)実施による、根幹となる事業アイデアの整理、自社コアコンピタンスの共通認識形成
・精査したアイデアから新規事業コンセプトへ構想化(インサイトプロポーザル)
Interview
今までの社内ノウハウやアイデアを持ち寄り、時代に合わせた新規事業の立上げ
──新規事業はどのような流れで、事業内容や方針を具体的に決めていったのですか?
梅田実様(以下、梅田様) 昨今取り上げられているメタバースやZ世代などの様々なトレンドに着目して、今すぐではなく3〜5年後に伸びる市場で勝負できるような事業について、シナリオプランニングを行っていました。デジタル企画室メディアラボチームの立ち上げ当初はどのようなことを行うか具体的に決まっておらず、抽象的な内容を徐々に詰めていく作業からスタートしました。そして今後の社会変革や長寿化なども含めて、世の中のニーズに合った事業を作ろうという話が進み、まずは200個ほどの案を出し、そこから事業化を検討するために対象を数点に絞り込みました。しかし社内関係者だけでは知見やノウハウに限界もあったため、具体的な事業イメージを描くことに苦戦し、解決策を模索していました。
堀 新聞という情報媒体は時間の変化もあって、かつての勢いがなく、新規事業として新しいことに挑戦していくという意味もあったかと思います。
梅田様 今はWebで容易に情報を得られるので、新聞の勢いはかつてのようにはありません。朝日新聞も現在では朝日新聞デジタルなどのWEBコンテンツで多くの方に認知していただいているので、その周辺分野を伸ばして新規事業を考えようというところがありました。
-解決策を探していたなか、クロス・マーケティングに協力依頼をしたのはどのような経緯や決め手があったからですか?
梅田様 実績を拝見したところ、社会の変化に対して敏感かつ知見があるだろうという意見は以前から社内であがっていました。実際に相談をしてみたところ、浸透度調査の資料を提供いただいたことなども踏まえ、社会の潮流に対してのデータもお持ちなのでアンテナをしっかり張っている会社だと感じました。
安藤 翔一様(以下、安藤様) 記者出身のメンバーも多く、調査力に長けているのでそれをうまく活かせるアドバイスがほしいと考えていました。そして集まった情報をより深くリサーチしていくためには、一緒に考えを出し合い、「そこは違うのではないか」など忖度のない意見を言ってくれる貴社と、チームで取り組みたいと感じたのも決め手でした。
梅田様 調査会社は調査してデータを上げるという固定概念がありましたが、今回のようにデータを用いながら新しい事業のサポートまで一つのチームとなって一緒にしてくれるというのは、他社とは違うと思いました。
安藤様 ただ調査するだけではなく、意見を言ってくれる人がいる、一緒に洞察をして考えてくれる人がいるというのも新たな発見でした。
事業のイメージを整理・共有することで、企業の持ち味を活かした具体案を確立
-当初、新規事業の方向性が定まらない原因と感じていたことはどのようなことでしたか?
堀 アイデアや意見が整理されていなかったことと、朝日新聞らしさがなかったことが原因だと感じました。社会の変化について情報収集はできていても、そこからブランドコンセプトまで落とし込むことができていなかったと思います。そのため、まずは情報を精査し、事業の棚卸しができるようにワークショップを実施しました。事業イメージを整理して、そこから強みや歴史を活かしたコンセプトを確立し、構想化することを提案させていただきました。
安藤様 まさにご指摘の通りで、社内のメンバーだけで情報収集をしていたので視野が狭くなっていました。情報を整理していくノウハウもありませんでした。朝日新聞らしさや強みを第三者目線で伝えてもらうことは、とても参考になりました。
梅田様 しかし、おんぶに抱っこにならないよう、クロス・マーケティングはあくまでもサポートという立場であり、決めていくのは私たちであるという当事者意識は持ち続けました。
ワークショップで朝日新聞の強み・弱みを整理
-ワークショップはどのような内容でしたか?
堀 今回は集めた情報を社内でどう整理していくかということが、重要だと考えました。私たちや外部のリサーチャー、クリエイターが加わり、まずはアイデアの棚卸しをしました。
梅田様 例えば、社内のメンバーで「会社に歴史があるため、世の中でも信頼性がある」という意見が出ても、果たして本当にそうなのか?と立ち止まってしまうことが多いため、裏付けやその他の強みが出てこない。しかし、外部から我々にはない知見やアイデアを出してもらったおかげで、強みを分解して組み立て直すことができました。 事業を立ち上げるためクロス・マーケティングとチームになって、お互い本音で指摘しあったり、なぜ?なぜ?と深掘りして聞いてもらったりすることにより、いろいろ気づかされました。
堀 ワークショップでいろいろな事柄の棚卸しをしたことで「皆さんが改めて自分の仕事や会社に自信を持ってくれたな」とも思いました。
-ワークショップなどを行った結果、どのような効果がありましたか?
梅田様 新規事業を行うにあたり、メンバー育成も行いたいという狙いがあり、リーダーには現場の人を立てました。しかし、記者や営業などさまざまな部署から集まったメンバーだったため、同じ方向を向いて考える必要がありました。今回の依頼でチーム方針を具体的に定められただけでなく、チームビルディングに対する意識も高めてもらえたことには、とても感謝しています。
安藤様 メンバー間で「あの人はこんな考えの持ち主だったんだ」という気づきがあったことも収穫でした。プロジェクトを通じてお互いの理解が深まったし、チームになってきたなと感じました。
堀 棚卸しをしたことで、やりたいことが明確になったと感じました。当初は「方向性は理解していても、メンバーが少しずつ違うことを言っているな」という雰囲気がありました。しかし、必要なのは意外性のあるアイデアではなく、朝日新聞の強みや新規性です。そこを全員に意識してもらったことで、私たちがお手伝いしたことが価値あるものになったと思います。 また当初は、どこと協賛するかなど広告事業に寄った考え方でしたが、最終的には顧客といかに接点をもつかという視点に変化もみられました。
梅田様 確かにワークショップで議論をすることで顧客に対する知識が高まり、顧客が潜在的に考えているものを言語化できたのかもしれません。私たちも勉強になることがたくさんあったので、もう1度やりたいです。
安藤様 当初はどの段階で他社へお願いしていいのかわからなかったのですが、次はもっと初期の段階からお願いしたいです。
今後も自分たちの強みを最大限に活かした事業で社会貢献を行う
-結果としてどのようなアクションにつながりましたか?
梅田様 最終的にサービス化したものは今回のプロジェクトから創出したアイデア案を参考にしてローンチしました。このプロジェクトの結果としては、自社だけでは想定できなかった、社外から見た新しい視点・知見も踏まえた事業アイデアを複数案策定することができました。また今回は複数の部署から選抜したメンバーでチームを構成したため、アイデア出しからビジネスとして構想化するまでを経験することができ、メンバーのスキルアップにも大きく貢献できたと感じています。
今回のプロジェクトによって構想化された
新規事業のグランドデザインとサービス案
-最後に今後について、お聞かせください。
梅田様 組織改編もあり当時のメンバーは様々な部署で働いていますが、今でも定期的に集まって振り返りを行っています。「私たちには何ができるのか?」をそれぞれが追求していく際に、今回のプロジェクトで学んだ考え方や手法を生かせればと考えています。