マーケティングコラム
海外調査で失敗しないための調査会社の選び方
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インターネットが普及して様々な情報が瞬時のうちに世界中を駆け巡る現代では、大企業のみならず中小企業や個人事業家もビジネスで海外進出をしようと考える時代になってきました。
日本で起業する場合もそうですが、特に海外で新たにビジネス展開をする場合は、参入前の入念な調査が必要不可欠です。ただ、日本とは言葉も文化も異なる国で調査を行うことは容易ではありません。現地の事情を深く理解していなければ、調査を成功させ有益な情報を得ることは難しいのです。
そこで、ここでは海外調査の進め方や重要なポイント、失敗しないための調査会社の選び方などについてご紹介します。
日本で起業する場合もそうですが、特に海外で新たにビジネス展開をする場合は、参入前の入念な調査が必要不可欠です。ただ、日本とは言葉も文化も異なる国で調査を行うことは容易ではありません。現地の事情を深く理解していなければ、調査を成功させ有益な情報を得ることは難しいのです。
そこで、ここでは海外調査の進め方や重要なポイント、失敗しないための調査会社の選び方などについてご紹介します。
海外調査とは
海外調査とは、ビジネスで海外進出を検討する際に現地で行う市場調査のことで、海外リサーチ、グローバルリサーチとも呼ばれます。調査手法はインターネットリサーチをはじめ、グループインタビューや会場調査、訪問調査などのオフラインの定量・定性調査もあり、国内調査と同様にテーマに応じて最適な方法を選びます。各調査会社は世界各国のパネル会社と提携しており、そのパネルネットワークを利用して様々な地域で国内と同様の調査を実施することができます。同時に複数国を対象としたマルチカントリー調査を行うことも可能です。海外調査を請け負う調査会社では、専門のグローバルチームが現地拠点やパートナーと連携してワンストップでのオペレーションを行ってくれるので、国内調査に比べて複雑でやることが多い海外調査でもスピーディな対応が期待できます。
海外調査の特徴とメリット・デメリット
海外調査を行う場合、自社で行う方法とリサーチ会社に依頼する方法とあります。海外調査を自分で行うことは不可能ではありませんが、海外という日本とは違う土壌でのビジネスとなると、やはり専門の調査会社に依頼した方がこれから始めるビジネス展開において有利と言えます。ここでは、海外調査を調査会社に依頼した場合のメリット・デメリットについて見てみましょう。
【海外調査のメリット】
自社で海外調査を行う場合、自分たちで現地のパートナーを選び、全てオペレーションをしなければいけません。相当なリソースを割く必要がありますし、リサーチスキルはもちろん、現地の言語や文化、慣習などに精通していなければ調査を成功させることは難しいでしょう。
これをリサーチ会社に依頼をすれば、海外調査を専門とするチームが現地と連携して調査設計から実査、結果検証まで一貫してサポートしてくれます。現地事情に精通したスタッフによる最適な調査プランの提案、スピード感のあるオペレーションは慣れない海外調査において非常に心強いでしょう。
調査会社では世界中に広がる大規模なパネルネットワークを持っているため、様々な国や地域、属性条件での調査に対応しています。また、調査票のローカライズやネイティブによる適切な翻訳など、海外調査における様々な懸念点を解決してくれるので安心です。
このように、実績のある調査会社に依頼することは多くのメリットがあります。初めての海外調査はもちろん、難易度の高い調査でも高品質な結果が期待できます。
【海外調査のデメリット】
国内調査とは異なる点が多いことから、海外調査ならではのデメリットもあります。
◆国内調査に比べ調査期間が長くなる
海外調査は調査期間が長くなる傾向がありますが、その理由としては以下のような点が挙げられます。
・翻訳作業などの国内調査にはない作業が発生するため
・時差により現地パートナーとの連絡に時間がかかるため
・現地のインターネット普及率によっては電話や訪問などのオフライン調査になるため
・各国で異なる祝日や大型連休があるため
このように、言語や文化をはじめ日本と環境が大きく異なる海外調査では調査期間が長期化しやすいため、余裕を持ったスケジュールを立てることが大切です。
◆国内調査に比べ費用が高い
海外調査では国内調査にはない追加工程が多く発生するため、国内で行う場合に比べ費用相場は当然高くなります。例えば、ネットリサーチでは、調査票や回答結果の翻訳作業や多言語のアンケート画面作成が必要です。インタビュー調査であれば、現地に同行したりオンライン視聴する際の同時通訳の手配も必要になるでしょう。
また、海外調査で調査料金が高くなる理由の一つとして、提携する現地のパネル会社や調査会社を介することが挙げられます。国内で一つの調査会社が全ての業務を完結させるのと異なり、現地のリソースを使うためその分の費用やマージンが上乗せされるのです。そのため、海外調査を行うにはある程度の予算が必要になります。費用を抑えたい場合は、調査項目を絞る必要があるでしょう。予算を踏まえてどのような調査内容にすべきか、調査会社に相談することをおすすめします。
海外調査のやり方・進め方
海外調査では、調査内容や調査対象国などによって最適な調査手法が変わってきます。定量調査・定性調査どちらにしても、環境の違う海外では国内調査とは異なり調査の流れは少し複雑になります。ここでは、例として定量調査のネットリサーチと定性調査のグループインタビューの進め方、及び大まかなスケジュールについてご紹介します。【ネットリサーチの進め方・流れ】
ネットリサーチでは調査設計から分析・報告書作成まで下記のような流れで調査が進みます。
調査設計
調査票作成・翻訳
多言語Web画面作成
実査
データクリーニング・集計
自由回答翻訳
分析・報告書作成
ネットリサーチは一般的には早くて手軽な調査方法ですが、海外で行う場合は調査票の翻訳や多言語のアンケート画面作成などの追加作業が発生するため、国内調査に比べて時間がかかります。サンプルサイズや条件などにもよりますが、国内であれば実査は最短数日で可能なところ、海外では最低でも5営業日ほど必要になるのが一般的です。
調査設計では、調査課題に応じて対象者条件、サンプルサイズ、調査手法、調査項目などを決めていきます。特に、調査手法は現地の事情に合わせて選ぶことが大切であり、調査会社に相談すると良いでしょう。
調査票を作成する際は、ローカライズと言い現地の文化や慣習に合わせて質問文や選択肢を設定する必要があります。この部分が非常に重要で、調査票の内容が回答者の感覚に即していなければ、質問の意図は伝わらず期待する回答は得られません。
翻訳作業も調査の品質を左右する重要な要素であり、回答者に正しく伝わる訳文になっていなければなりません。日本語からの翻訳を現地語のネイティブスタッフが、対訳チェックは日本人スタッフが行うというように、翻訳業務の品質管理が行われていることが大切です。
海外調査を請け負う会社では、多言語対応のアンケートシステムを持っています。複数国を対象に調査する場合は、各言語のアンケート画面の作成が必要になります。データの回収後は、不適切回答を排除するデータチェックを行ってから集計となります。自由記述式の回答がある場合は日本語への翻訳作業も発生します。依頼に応じてローデータ、各種集計表、報告書が納品されて調査は終了です。
【グループインタビューの進め方・流れ】
グループインタビューでは対象者のスクリーナー作成から発言録・レポート作成まで下記のような流れで調査が進みます。
対象者のスクリーナー作成
対象者リクルーティング
インタビューガイド作成・翻訳
実査
発言録・レポート作成
グループインタビューを行う際は、まず対象者のリクルーティングが必要ですが、その対象者条件に合致する人を絞り込むためのスクリーニングを行います。そのための調査票がスクリーナーです。
翻訳したスクリーナーを基に、登録モニターに対してWEB上のアンケート画面を作成・配信し、回答者の中から対象者を抽出するモニターリクルーティングの他、人伝に対象者を探す機縁リクルーティングなど、リクルーティングにもいくつか手法があります。条件や手法にもよりますが、リクルーティングには1週間から10営業日前後かかります。
次に、どのような質問をどのような順序でどのように聞くのか、インタビューの流れをまとめたインタビューガイドを作成し、翻訳します。この調査設計がインタビュー成功の鍵を握る重要な部分であり、有益な情報を引き出せるようなシナリオにしなければなりません。
これを基に当日モデレーターにインタビューを行ってもらいます。モデレーターは調査内容に応じて調査会社が最適な人材をアサインしてくれます。その他、会場や機材、同時通訳の手配などのコーディネートも一貫して任せられるので安心です。実査後は、各対象者の発言をまとめた発言録や調査結果をまとめたレポートの作成、納品となります。
上記のネットリサーチ、グループインタビューに限らず、各種調査方法において依頼業務の範囲は柔軟に選べる会社が多いです。調査設計から全て依頼するのか、調査票の翻訳から実査、集計までを依頼するのかなど、予算や必要に応じて検討すると良いでしょう。
海外調査を行う際のコツ・注意点
日本とは文化も風習も違う国で調査を行う際は、注意すべきことがたくさんあります。対応を誤ると調査が失敗に終わってしまうことも少なくありません。現地事情に精通した調査会社のアドバイスを受けて最適な調査を行うことが大切です。例えば、以下のような注意点が挙げられます。◆調査手法の選択
国や地域によって最適な調査方法は異なります。例えば定量調査の場合、日本ではネットリサーチが主流であるのに対し、インターネットの普及率が低い国では従来の電話調査や訪問調査が主に行われています。
また、オンライン調査の場合、特に新興国ではどうしてもパネル登録者に偏りが生じてきます。生活に余裕がある若年層が多くなるという傾向が強く、それらの人々がビジネスのターゲット層と一致していない場合は調査結果から正しい分析ができないため注意が必要です。
希望する対象者から欲しい情報を得るためにはどの調査手法を選択すべきか、現地事情も踏まえて調査会社に提案してもらうと良いでしょう。
◆対象者条件の設定
海外ではエリアによって居住者の属性が全く異なるということもあります。貧富の差が激しい国では、SEC(Socio-economic Class, 社会経済的階層)やSES(Socio-economic Status, 社会経済的地位)を考慮して調査対象者を設定することが必要です。
また、民族や宗教が多様な国も海外には多いため、対象者をどのように絞り込むべきか、慎重に検討しなければなりません。比較的対象者を区分しやすい国内調査とは異なり、その国の多様性を理解した上で対象者条件を設定することが大切です。
◆翻訳の品質
海外調査では、調査票やインタビューガイドの翻訳業務がありますが、これは日本語で作成したものを言葉通りに現地語に翻訳すれば良いというものではありません。異なる文化や習慣、価値観を持つ人々に対しては通用しない内容や表現を含むことがあるからです。
そのため、翻訳の際には回答者に設問の意図が伝わるよう、現地に適した内容や表現に調整するローカライズが求められます。ネイティブなどの現地事情に精通した人物による翻訳なのか、訳文のチェックは誰がするのかなど翻訳の品質管理についてはよく確認しましょう。
海外調査の活用事例
海外調査は、BtoC(一般消費者)やBtoB(特定職業従事者)を対象に様々なテーマと多種多様な手法で行われています。活用事例としては、以下のようなテーマが挙げられます。【事例1】海外進出を検討するにあたり、現地の市場規模を知りたい
海外でのビジネス展開を考えるときには、まず対象国・地域における該当カテゴリの市場規模を分析する必要があります。現地マーケットの規模を確認し、市場参入の余地があるのか?コストに見合う利益は見込めるのか?といった判断をしていきます。
【事例2】競合企業のシェアや製品ラインナップ、販売方法などを知りたい
海外での事業戦略を立てる上で競合調査は欠かせません。競合他社の動向や強み・弱みが把握できれば、自社がどのように他社と差別化を図り、どのポジションで戦っていくべきかを見出すことができます。
【事例3】対象国でどのような需要やニーズがあるのか知りたい
日本で広く普及している製品やサービスでも、生活習慣や環境が違う海外諸国で同様に需要があるとは限りません。ターゲットとする国ではそもそも需要があるのか?消費者はどのようなものを求めているのか?現地ならではの潜在ニーズを明らかにすることが、製品・サービスのローカライズ、訴求方法などの検討につながります。
海外調査の調査費用
海外調査の費用は、調査対象国や対象者条件、調査手法などによって変動します。特に、海外では国や地域ごとに物価が大きく異なるため、モニターへの謝礼や現地調査会に支払う費用・マージンなど現地でかかる費用相場は一律化できません。そのため依頼ごと個別に見積もりを取る形となります。調査料金は主に以下の項目を基に概算金額が出されます。調査対象国:具体的な地域、複数国などの希望も含め
調査対象者:どのような条件の人を対象とするか
調査人数:何名に調査するのか
調査手法:定量調査か定性調査か
調査内容:設問数やインタビュー時間
依頼業務の範囲:調査企画~実査~分析、翻訳・通訳のどこまでを依頼するのか
納期:急ぎなのか余裕があるのか
なお、為替の影響も受けるため、時期によっては同じ調査条件であっても価格が変わる可能性があります。上記の項目をわかる範囲でまとめて調査会社に問い合わせてみましょう。調査内容によっては、調査自体が難しい可能性もあります。そもそも希望の調査が行えるのかどうか、実施可否も含めて相見積もりを取って比較することをおすすめします。
海外調査を依頼・委託する調査会社の選び方
国内調査よりも難易度の上がる海外調査では、調査を依頼する会社選びが特に重要です。ここでは、海外リサーチを依頼する会社を選ぶ際のポイントをまとめました。◆外国における調査実績
海外調査の場合は特に、どれだけの経験があるかが会社選びの大きなポイントになります。豊富な経験と実績がある調査会社であれば、現地事情を熟知したスタッフによる対象国・地域に適した調査設計、オペレーションが期待できます。
なお、調査会社によって対応している国や強い地域が異なります。単に実績数だけでなく、調査希望地域での十分な調査経験があるのかを確認することも大切です。
◆調査可能地域
調査の段階でビジネス展開をする国を特定していない場合は、より多くの国で調査をすることができる能力のある会社を選ぶと調査の可能性が広がるでしょう。
◆充実したパネルネットワーク
オンライン調査で「富裕層のみ」「若年層のみ」などのパネル登録者に偏りがないことを事前にチェックすることが大切です。あらゆる世代、異なった職種で、できるだけ多い数のパネルを持っている会社が望ましいです。パネル数が豊富な会社であれば、出現率が低い調査にも対応できる可能性があります。
◆品質管理が徹底されている
海外調査では現地の調査会社や人材を動かして行うため、現地との連携がしっかり取れており、品質管理が徹底されているかが非常に重要です。現地の担当者が調査の内容をきちんと把握していなかったり、いい加減な聴取をしたりすることのないよう確実なオペレーション体制が整っている必要があります。
また、調査の品質を左右する「パネル」「翻訳」「回答データ」の品質管理の取り組みは欠かせません。重複登録者や不正回答者などの削除を定期的に行い、良質なパネルの確保に努めているか、現地に適した内容や表現に翻訳できる人材・チェック体制があるか、回答データから不適切回答を排除するデータクリーニングがきめ細かく行われているかを確認しましょう。
まとめ
日本国内においての常識は海外では通用しないことも多く、ビジネスの海外進出の成功はひとえに事前の調査にかかっているといっても過言ではありません。また海外調査はそれなりの対価を払って実施するものですから、適切な調査会社選びが何より重要です。選び方のポイントとしては、外国での調査実績と経験があるという点が一番です。事前の調査でその国の地域特色や文化や人気のあるものなどを理解することによって、最初から適正なデザインや売りやすいカラーなどで対応していくことができます。
海外ビジネスで失敗しないためにもテーマに合った調査と正しい分析ができる会社を選び、充分な準備をした上で挑むことが成功への第一歩となるでしょう。