マーケティングコラム
ネットリサーチ黎明期から現在まで ~“Web時代のリサーチャー”とは?~
公開日:
株式会社クロス・マーケティング
リサーチプランニング部 マネージャー/シニアリサーチャー
竹内 ゆかり
マーケティングリサーチに携わるようになってようやく10年目に突入します。私がこの仕事を始めたばかりのときは、まさにネットリサーチの発展期。
ネットリサーチの調査票を作ること(もちろん最初は紙の調査票をアンケートシステム用の調査票に直すこと)がスタートラインでした。当初は、設問をアンケートシステムに組み込める形にすることにばかり意識が向いていたように思います。クライアントがその調査で何を明らかにしたいのか、対象者から何を引き出そうとしているのかを考えられるようになるにはそれなりに時間を要しました。
あらためてインターネットリサーチを考える
マーケティングリサーチに携わるようになってようやく10年目に突入します。私がこの仕事を始めたばかりのときは、まさにネットリサーチの発展期。ネットリサーチの調査票を作ること(もちろん最初は紙の調査票をアンケートシステム用の調査票に直すこと)がスタートラインでした。当初は、設問をアンケートシステムに組み込める形にすることにばかり意識が向いていたように思います。クライアントがその調査で何を明らかにしたいのか、対象者から何を引き出そうとしているのかを考えられるようになるにはそれなりに時間を要しました。ネットリサーチは「画面の向こうにいる対象者との対話」
対象者が“目に見えない”ことこそが、ネットリサーチの難しさでもあると思います。自分自身を振り返っても、今若手と一緒に仕事をしていてもそうですが、経験が浅いうちは、仮説の置き方や設問文・選択肢の作り方において視野が狭くなりがちです。データの読み方や分析についても同様で、何年か前、20代半ばの女性リサーチャーと一緒に「50~60歳代のおしゃれ」に関した案件を一緒に担当していたとき、彼女にクラスターのネーミングを考えてもらったら、まさに彼女と同年代の友達しか意味を連想できないような案が出てきてしまったことがありました。そのとき彼女にアドバイスをしたのは、「自分のお母さんを思い浮かべて考えること」。私自身も、上司や先輩に、「まずは自分が対象者だったら、を考えること、対象者が自分と異なる設定の場合は身近な人に置き換えて考えること」と言われ続けてきました。最初から最後まで対象者を目にすることなく完結できるネットリサーチでは、特に対象者がどんな人なのかを常に想像することが重要です。人生経験が人より少ないのは致し方ないので、それをカバーする想像力や妄想力が必要になってきます。画面の向こうにいる対象者に問いかけ、データが上がってきたら今度は対象者がデータを通じてリサーチャーに語りかけてくる、そんな調査が理想です。
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一方で、デジタルネイティブともいえる若手リサーチャーは、こちらが考えもしない仮説や設問案を出してきてくれることもあります。なぜ思いついたのか、どのように考えたのかを本人に訊いてみると、「ネットで調べたらクチコミに書いてあったから」。\t
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検索して得られるものと得られないもの
特に若い世代は(いや若くなくても?)何かとすぐネットで検索します。調査対象の商品の情報収集にしろ、分析手法にしろ、業界動向にしろ・・・。確かに昨今、検索すれば大概の情報は手に入るようになりました。商品レビューやクチコミ、ソーシャルメディアへの書き込みを通じて、若手リサーチャーはある意味、他人の人生観や評価感を我々以上に疑似体験している、とも言えます。一般の消費者である調査の対象者も、買いたい商品の情報収集をネットでしていることが多くあると思いますので、「検索」という行為によって実態に近い設問設計ができる、ということもあるかもしれません。しかしながら、いくら技術が発達しても、バーチャルでは掴みきれないものも多くあります。2016年2月現在、一般的にネットで得られるのは五感でいうと、視覚、聴覚のみでしょうか。味覚、触覚、嗅覚に関しては自分で体感するほかはありません。
今、私よりもっと若い世代は当然のごとく、ネットリサーチが調査のベースであり、スタートラインとなることが多くあると思います。時代の産物である“検索力”や“疑似体験力”は大いに武器にしてもらいたいですし、自分もまた若手から吸収したい技術でもあります。ただ、それだけでは得られないものがある、ということも常に念頭におき、リアルな疑似体験、観察力、洞察力についてもともに磨いていきたいと感じる今日この頃です。
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