マーケティングコラム

“気づき”マーケティング(11) サブウェイとマクドナルド

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東京辻中経営研究所
同社代表取締役マーケティングプロデューサー 株式会社ユーティル研究顧問

辻中 俊樹

世界で最も店舗数の多いファストフードチェーンは、サブウェイである。マクドナルドでもバーガーキングでもない。ご存じでしたか。全世界で4万店をはるかに超える巨大なファストフードなのである。
 
 

世界で最も店舗数の多いファストフードチェーン

 
 
 日本の日常感覚からすれば勘の狂うことかもしれないが、欧米先進国のヘルシー志向はこんなところにもハッキリと表れているということができそうだ。ハンバーガーとフレンチフライがメインのハンバーガーチェーンと比較すれば、サブウェイの野菜たっぷりのサラダサンドイッチはヘルシーなのかも知れない。しかし、日本人の私たちの感覚からみれば50歩100歩ということになりそうだ。

 なぜサブウェイは日本ではどうも伸び悩んでしまうのだろうか。いろいろなことを考えてみるのがいいだろう。これも一つの“気づき”を生みだしていくきっかけというものである。

 日本では接点はないが、メキシカンタコスのチポトレやファイブガイズなどの中堅ファストフードもこんな志向に乗った成長組なのである。確かにタコスもヘルシーなものといえそうな面もある。グローバルスタンダードと日本とは異なったものだと、とりわけ食についてはいえるのだ。
 
 

シニア層はジャンクフードの申し子

 
 
 つい最近、法政大学の小川孔輔さんが『マクドナルド 失敗の本質』を出版された。その中で“賞味期限切れのビジネスモデル”という点でそのことを述べている。是非お読みなっていただきたい。

 小川さんも私も実はマクドナルドと共に成長してきたといえる。シニア層はみんなそうなのだ。1971年7月にマクドナルドは銀座三越に1号店を出店した。その時のハンバーガー一個の値段は80円、高かったのだ。私たちはマクドナルドにファミリーで行ったのだ。ややプレミアム感のあるアメリカンフードだった。もちろん、ファミリーレストランが提供したハンバーグセットというディナーもそうだったのだ。

 私たちが属しているシニア層は、実は洋風化、アメリカン(ジャンク)フードの申し子だったといえる。コカ・コーラももちろんその一つである。ティーンズから20代になっていく時に登場したマクドナルドのハンバーグを受け入れる素養が私たちの世代にはあったのだ。

 現在のシニア層が食べ盛りの少年少女期、敗戦後の食糧難は深刻だった。そこに大量にアメリカから援助物資として登場したのが、小麦や脱脂粉乳だった。小学校の給食としてコッペパン、脱脂粉乳、ポテト、シチューといったメニューが私たちの口に入っていった。個人的な思い出は様々であり、おいしかったという印象を残している人もいる。私も小川さんも、この脱脂粉乳の牛乳とカスカスカチカチのコッペパンは最悪の食の思い出であることは共通している。


 給食以外ではキッチンカーが全国をかけ回りパン食を普及させていった。バター、マーガリン、マヨネーズにハムの入ったサンドイッチなどは、一種のおいしい味覚の象徴だったといえる。

 給食では苦心したパンではあったが、これが格段においしくなって、ハンバーガーとして登場した訳だから、私たちはパンを食べたいものとしてファストフード店に足を運んだのである。

 これが米国の占領地に対する露骨な経済政策であったのは当然だが、私たちシニア層はその罠にまんまとはまった訳である。家族を持って家庭で料理を作って食べるようになった時、私たちのごちそうはハンバーグやコロッケといった洋食メニューということになったのである。

 外食というシーンではマクドナルドや洋風のファミレスを選ぶことになったのである。
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日本人にとってのサブウェイとマクドナルド

 
 
 そして私たちは子育てという義務を終え、食に対する態度を変えていくことになった。もちろん、マクドナルドが嫌いになった訳ではないし、ハンバーグは今でも好きなメニューの一つである。ところが、選択する頻度は極端に落ちていく。そのようなシーンがないといってもいいのかも知れない。

 加えて、ファストフードというメニューの割には案外高いのである。簡単な手作りの方が割安に食事できるということもある。

 その時に食べようとするメニューの大半が野菜の和えものや煮物などになっていっている。決して健康志向でそうなった訳ではない。心と身体がそれを選んでいるだけで、ある意味マクドナルドなどのアメリカン(ジャンク)フードを食べ慣れてきた結果なのかも知れない。そうすると日本人にとっては、サブウェイってちょっと微妙ということになるのかも知れない。

 小川さんが私の執筆した『マーケティングの嘘』について素敵な書評を書いてくれました。その中にもこの話の一部がふれられている。あわせてご覧いただければと思う。

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