マーケティングコラム

“気づき”マーケティング(10) 〈鳥の眼〉と〈虫の眼〉

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東京辻中経営研究所
同社代表取締役マーケティングプロデューサー 株式会社ユーティル研究顧問

辻中 俊樹

『マーケティングの嘘』という新刊を新潮新書から出して3週間以上が経過した。2月の第1週には、Amazonのベストセラーランキングで、マーケティング一般、新潮新書の両カテゴリーで3日間第1位になりました。現在は少し下がっていますが、好評を得ております。いろいろなブログなどに読後感がアップされており、感謝しています。

新刊『マーケティングの嘘』発売

 このコラムでもずっと取り上げてきたように、三世代の関わりに関する具体的な”気づき”のエピソードが満載されている。サブタイトルが「団塊シニアと子育てママの真実」となっている様に、現在の60代シニアと30代の子育て層とその子供、つまり孫たちの三世代の関わりの中における、具体的な生活の中にある”気づき”に焦点をあてている。

 この三世代の関わり方にこそ、現在から未来に向けての生活行動、消費、価値観を解いていく為の鍵がある。という訳だが、ここで少しだけ前提を整理しておくことにする。三世代が関係づけられて社会が成り立っているのは、何も今に始まったことではない。元々そのようにできあがっているものだ。なのにことさら何故にそこに注目する必要があるかということにすべての鍵がある。


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なぜ三世代の関わり方に注目するのか?

 三世代、具体的には親と子の世代が、近接地に別居し、ほぼ日常的な接点を持っているという関係性が重要なのである。ほぼ日常的な接点というのは、具体的には「おおむね週に1回程度の接点がある」ということになる。もちろん、個別には「週2回以上」ということもあるし、それぞれの事情により2週間に1回ということになることもある。

 世の中の人の大好きな定量的データとして整理するとこんなイメージになる。この「おおむね週1回程度の接点がある」、つまり年間でいえば50回以上の三世代の関わりがあるということが最も重要な生活像なのである。

 たとえば三世代が完全に同居している古い意味での大家族ならば、この接点は圧倒的に日常化してしまっており、特別な要素は極小化してしまい、逆にわだかまりやもめ事も潜在、顕在が当然のこととなる。

 また逆に、親と子、つまり実家との距離が遠く離れていた場合には、この関係性、接点は年に2~3回というように、完全に非日常化してしまう。盆と暮れに実家に帰省してくる孫たちという像ということになる。

 日本の戦後社会は三世代、つまり実家との接点が圧倒的に非日常化してしまった関係性が多数派を占めていたのだ。これが1990年代に入って完全に構造的転換をしてしまう。つまり、実家を遠く離れて子育てをした世代たちが、今度は実家になり子供世代が近接地に別居独立する社会に転換したのだ。

 このことで、それまでの社会には少数派でしかなかった「年間に50回以上の日常的接点がある」という三世代の関係性が社会の多数派を占める様になったということがポイントなのである。

「虫の眼」と「鳥の眼」

 このような「年間50回以上」という微妙な日常的な関係性を持つという生活の仕方はこれまでになかったことだから、ここに生活や価値観の変化が出現することになるのだ。

 もちろん、三世代同居も二世帯居住も、遠隔地別居も現在でもある。大切なのは、これらを一枚の見取り図、俯瞰図にしておくことなのである。このように“気づき”を見つけだしていく生活という対象を、いったんは鳥の眼になって大きくみておくことが重要なのである。そうすると、この地図の中で「日常的接点を持つ三世代」という対象が大きな面積を占めていることがわかる。加えて、昔の地図にはこのような対象がほとんど姿を現していなかったことがわかる。

 だから、ここを見ておく必要があるのだし、今度は「虫の眼」になってその生活の中にある断片的事象を観察することになるのだ。以前にも述べたように「シニアがよく買うシャインマスカットや巨峰」ということの具体的な行動から”気づき”をつくりだしていくことになる。

 この「虫の眼」と「鳥の眼」を複合させてみると、地図の中に一つの亀裂が走っていることがわかる。それはこの三世代の日常的関係性が、母系と父系で大きく異なっているという傾向があることである。このことは「妻方近接別居」というものこそが、この三世代の日常的連鎖の核になっていることである。夫方の実家も、現在の地理的環境でみれば近接である確率も高い。「鳥の眼」では同様に見えることだが、「虫の眼」でみれば大きな違いをみせてしまうのである。

 また、地図上は分離してしまったようにみえてしまう未婚の兄弟姉妹との関係も、「虫の眼」でみればまた新たなつながりをみせているのだ。

 「鳥と虫」、両方の眼が“気づき”をつくりだしていくポイントということになる。

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