マーケティングコラム

お客さまを知る!ショッパーマーケティングとは。

Facebook X
エンバイロセルジャパン株式会社
代表取締役

福田 弘二

ここ数年、「ショッパーマーケティング」、「ショッパーインサイト」といった言葉をよく耳にする。我々が日本で“エンバイロセルジャパン”という購買行動調査の専門会社を立ち上げた10数年前には、これほどまで「ショッパー」という言葉は広がっていなかった。それまでは、ショッピングに関わるマーケティング用語としては、「カスタマー」、「顧客」といった言葉に代表されるように、「購買」という行動の結果、すなわち、「商品」を所有されたお客さまにフォーカスした呼び方が付けられているのが中心であった。このように、これまでのマーケティングでは、「購買結果」という事実を捉えたものが多く、「購買以前=POS未満」の実態に目を向けた調査やマーケティングは少なかったといえる。

何故ショッパーマーケティングなのか?

 では、何故ここにきて、「ショッパー」という言葉が注目されてきたのだろうか?それは、ひとつには、お客さまの購買への意欲を掻き立てていく上での重要なマーケティングツールであった、マス広告の効果が弱まってきていることも影響しているといえる。同時に、いつでもどこでも同じ商品を手にすることができ、インターネットなどの情報の氾濫によって、商品の差異化も難しくなってきており、「購買結果」を基にした調査データ(従来の物差し)だけでは、お客さまの商品選択・決定プロセスを把握することが難しくなったためとか思われる。

 そのため、購買の結果から読み解くのではなく、お客さまの“店頭での購買に至る過程=POS未満”の行動や心理を把握する必要性が高まるようになり、購買時のお客さまを「ショッパー」として、フォーカスしはじめたのである。

お客さまの固定観念がさまざまな誤解を生んでいる

 さて、お客さまの購買行動を考える際、注意しなくていけないポイントは何であろうか?それは、お客さまに商品を選んでもらう土俵に上がっているかどうかということである。いかに店頭でお客さまに興味を感じてもらい、商品や売場を意識して見てもらえるかどうかということである。近頃の購買行動をみていると、商品を選び、吟味(検討)してもらうどころか、目も留めないといった行動の方が多いのである。

 長年、お客さまの購買行動を調べていると、ある事実に気付くことになる。それは、“店頭におけるお客さまの買物の時間が短くなってきていること”である。とりわけ、スーパーやドラッグストア、家電量販店など、日常的に利用される業態や店舗でよく見られる傾向である。この現象はあらかじめお目当ての商品を決めて来店しているお客様が増えているからという理由によるものではない。商品の差異化が難しくなっている現在、どれも同じに映り、目新しさを感じられない(すなわち、商品や売場を意識しない)お客さまが増えていることが強く影響しているといえる。

 さまざまな情報が氾濫し、商品情報に触れる機会が多い現代では、お客さまはある種の耳年増になっており、知ったつもりになっていることが多く、結果的に、新しい機能や特徴を持った商品であっても、それらの特徴に気付かず、いつもと同じ商品なんだろうという誤解が生じているのである。


20140922_02


 たとえば、Windows8の発売当時のお客さまの検討行動を調べたときの事例を紹介したい。Windows8の売りは何と言っても、タッチパネル操作を前提に作られているということであり、各社ともに、主力モデルにはタッチパネル対応の商品を送り出していた。欧州・アジア・日本といった店頭でお客さまの行動を観察していると、タッチパネル対応にもかかわらず、画面を触る人は少なく、その多くがキーボードを触って立ち去る人が多いということに気づかされた。このような行動がなぜ起きるのであろうか?ここに、お客さまが抱いているパソコンに対する固定観念が影響しているといえる。タッチパネルモデルへの認知が低い導入期では、キーボードを見た途端に、日頃の使い方が無意識に浮かび、タッチパネルという概念がまったく意識されないまま、ショッピングが行われていたのである。

 小さなPOPで“タッチパネル対応モデル”と告知する程度では、展示全体から感じる印象の方が強く、従来からのイメージは払しょくできない(新しい機能を想起させられない)ことがよく起きてしまうのである。

 このように、店頭での買物では、事前に認知されていない新たな商品や機能は意識されず、そのまま見過ごされてしまう確率が高まりやすいといえる。また、日頃と同じような展示を繰り返していると、具体的な説明や情報を読む前に、展示全体の印象を受けて、いつもと同じという感覚が強くなり、商品選択の土俵に乗っていないことがよく起きてしまうのである。この行動はお客さまが意識して行っている行動ではないため、アンケートで聞き出そうとしても、答えることが出来ない(言葉にならない)事象であり、従来の方法だけでは把握できないことなのである。

知らないことは聞けない!

 このような購買行動の特徴は商品選択だけの問題ではない。お客さまへの接客対応にも大きく影響してくるのである。研修を通じて、お客さまへの商品説明力を高めようと努力している企業は多い。個々のスタッフの説明能力を高めることは販売力アップには重要なポイントといえる。これからのリアル店舗では、間違いなく、人間らしさを感じさせる環境が生き残りへの魅力要因になると思われる。

 しかし、説明能力以前に、ニーズを聞き出す力を強化している企業はどの程度存在しているだろうか。「説明=お客さまの質問にしっかりと答えること」と誤解をしている人は少なくないのではないだろうか。実は、お客さまが質問していることは、お客さまが知っていることの範囲の中で行われているということに気づかなくてはならない。お客さまは知らないことは聞けないのである。しかし、この知らないことの中に、新たな発見があるのも事実なのである。お客さまの質問に正確に答えることばかりに満足していると、接客でお客さまの新たな感動を喚起する機会をロスすることにつながりかねないのである。

 「こんな機能があるのをご存知ですか?」、「自分も知らなかったんですが、こういった使い方をしている人がいるんですよ!」といったように、お客さまに刺激を与える言葉が、新たなニーズの聞き出しのきっかけになっていくことも多いのである。

関連コラム

マーケティングコラム
あの世代の呼び方は何?各世代へのマーケティング方法もご紹介
「団塊の世代」や「Z世代」など、生まれた世代によってさまざまな名称が付けられています。マーケティング担当者であれば、それぞれの世代の名称と特徴を把握し、世代ごとにあわせたマーケティングを実施しましょう。 本記事では、それぞれの世代の呼び方について説明し、各世代に合ったマーケティング方法を解説します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム
独身の人が増えすぎている?未婚の割合や増加の理由を解説
結婚して家庭をもつことが当たり前だった時代からは一変し、生涯を独身で過ごす人が増えています。なぜ未婚率が高くなっているのでしょうか。今回は、未婚の割合や未婚の人が増えている理由について解説します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム
中学生のスマホ使用時間の理想はどれくらい?スマホが及ぼす影響も紹介
近年、中学生からスマホを持たせる家庭が多いなか、使用時間の長さが問題視されているケースが多く見受けられます。スマホの使用時間が長いと学力に影響するといわれることもあり、子どもを持つ親からすると、「適切な使用時間の範囲で使わせたい」と考える方もいるようです。 今回は、中学生がスマホを使う時間の理想をはじめ、使用時間が長いとどのような影響を及ぼすのかを解説します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム
犬派か猫派か?どちらが人気?性格や相性を徹底解剖!
ペットを飼っている人や、これから飼いたいと考えている人にとって気になるのが「犬と猫はどちらが人気なのか?」という点ではないでしょうか。また、犬派と猫派それぞれの性格や相性などについて気になる人も多いかと思います。本記事では、犬派と猫派どちらが多いのか、また性格や相性はどうかを徹底解剖します。弊社で行ったアンケート結果もふまえて解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム
α世代の次の世代とは?β世代の特徴や取り巻く環境を予測しよう
今注目されているZ世代の次がα世代と呼ばれており、さらにその次がβ世代にあたります。Z世代以降は、デジタルネイティブであることが特徴ですが、マーケティング担当者や商品の開発担当者であれば、β世代とはどのような世代なのか、今と取り巻く環境がどのように変化しているのか気になるのではないでしょうか。今回は、β世代の特徴やβ世代を取り巻く環境について解説します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム
推し活の経済効果はどれくらい?市場規模と推し活マーケティングのメリットとは
若年層に適確なアプローチができないなど、従来のマーケティング手法に限界を感じてはいませんか。商品やサービスのターゲットとして、「推し活に力を入れる消費者」に絞る方法もあります。 推し活とは、推し(お気に入りのキャラやアイドルなど)を応援する活動のことです。今回は、推し活の経済効果や企業が推し活マーケティングに力を入れるメリットについて紹介します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム
団塊の世代はいついなくなる?高齢化で生じる問題と対策を紹介
団塊の世代は、全人口に占める割合の大きさから、社会に多大なる影響を与えてきました。高齢化の話題に接して、団塊の世代の存在感に驚いた方もいるのではないでしょうか。今回は、団塊の世代の高齢化問題と企業の対策について紹介します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
デジタルマーケティングコラム
【TikTok】バズる時間帯はいつ?曜日ごとのバズりやすさとあわせて解説
TikTokは短期間で多くのユーザーにリーチできるプラットフォームです。しかし、効果的な運用には、適切な投稿時間を見極めなければなりません。社内でTikTokの運用を開始する際に、まず押さえておくべきなのが「バズりやすい時間帯と曜日」です。今回は、TikTokでバズるために最適な投稿時間や曜日について詳しく解説し、投稿時に押さえておくべきポイントについても紹介します。
# デジタルマーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
デジタルマーケティングコラム
SNSのエンゲージメントとは?SNS別の確認方法や向上施策も紹介
最近では中小企業でも、流入チャネルを増やすためにSNS活用を始めるところが増えてきました。SNSの運用を成功させるためには、できるだけ多くのエンゲージメント(リアクション)を得ることが重要です。今回は、SNSにおけるエンゲージメントについて、確認方法や向上させるための施策を解説します。
# デジタルマーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
ご相談・お見積もり依頼
【法人・個人様】
フリーダイヤルでのお問い合わせ
0120-198-022
※ モニター様からのお電話でのお問い合わせは受け付けておりません。
資料ダウンロード