マーケティングコラム

“気づき”マーケティング(5) エスノグラフィーの成果って?

Facebook X
東京辻中経営研究所
同社代表取締役マーケティングプロデューサー 株式会社ユーティル研究顧問

辻中 俊樹

皆さんは<コストコ>には買い物に行かれたことはありますか。「よく行く」、「1回も行ったことがない」・・・、こんな定量的なことはさておいて、仮に自分自身には全く利用する動機がないとしても、<コストコ>を利用されているお客様の真意は知っておいた方がいいはずだ。

エスノグラフィーの極意

 まずは覗きに行ってみる価値はある。もちろん会員カードがないとダメとかハードルはあるにせよ、この覗きに行ってみるということから始まるのが、いわゆる観察調査、エスノグラフィーということになる。ところが、この覗きに行ってみるという程度で、ちゃんとエスノグラフィーが成立するのかが問題である。今回はあまり難しく考えすぎない、それでいてある程度の成果をあげるための、ちょっとした極意をお伝えしてみる。

 私自身にはあまり<コストコ>を利用する動機はない。夫婦二人暮らしにとって必要としている場所ではないからだ。あんなに大きなピザを買っても食べきれないし、恐らく50ヶくらいは入っているだろうコーンパンの袋詰めは単に圧倒されるだけだからだ。

 というように、「何をしにこの店に来ているのだろう」という視点が大切ということになる。

 自分と比較をしてみてどうなのか、どんな利用シーンが想像できるだろうかなどである。店の中ではバケモノのようなカートに買ったものを満載にした2~3人連れがたくさん。レジではこの満タンカートを2台くらいおして並んでいるお客様がウジャウジャいるではないか。1万円台の買い物なんてのは当たり前で、2~3万円の支払いもよくでてくる。「できるだけおさえたんだけど、やっぱりいっちゃったよねえ」なんて会話をしているお客様もよくみかけるのだ。


20140909_02


一つ一つみつけていく事が必要

 さて、ここで「やっぱりまとめ買いのお客様が多いのだ」というような整理をしてしまうと、エスノグラフィーとしては完全に失敗ということになる。まず「まとめ買い」なんていう、手あかまみれの、エセマーケターが使うようなキーワードや仮説ワードを一切捨てておくことが重要である。

 「どんな人たちの、どんな目的の、どんなモノのおまとめなのか?」ということを一つ一つみつけていく事が必要なのだ。今は道具立てが便利になったので、こんなレジ風景や、カートを押して通路を歩いている人達をスマホなどでパチパチ。後でアルバム状態にして並べてみる。たとえば4コマ漫画風に並べたシーンのスナップに、思いつくままに「吹き出し」を入れていくとよい。「今日はお姉ちゃんちの頼まれていた分も全部ゲット!!」 「カーターズのキッズ用品はここで手に入るから、みんなの分も買っておいたぞ」 こんな吹き出しを思いつくままつけていくとよいのだ。

 もちろん、売り場に並んでいる商品などもそうやっていく。言葉では伝えづらいので、どんどんスナップショットだ。色とりどりのカラーボールが100ヶ近く入った1袋1,500円くらいのおもちゃが山積みされていた。「うーん、商品としては分かるけど、意味不明、何するの?安いのはわかるけど・・・」

エスノグラフィーは成果

 このポイントがエスノグラフィーの妙味であり、極意ということになる。このカラーボールの袋詰めを買っていく人達がいるのだ。何か業務用に使うのか、イベント会社の人なの?いっぱい吹き出しをつけていく。実はこの大量のカラーボール、自分んちで使っているのだ。正確に言えば実家で使っている。ジィジ、バァバのいる実家に持っていって、ビニールプールの中に入れて子供を遊ばせているのだ。ここまで至りつければエスノグラフィーとしては、それなりの成果につながっている。

 そんな視点でみれば、いろんなところに増えているキッズルームやプレイルームには確かにカラーボールいっぱいのビニールプールや遊び場がある。でもママたちはちょっと不安、なんとなく不潔だよね、毎日ちゃんとカラーボール洗っているのかしら・・・。 <コストコ>でカラーボールという商品をみたことで、こんな暮らしのディテールに至りつければ十分なのである。

 単なるまとめ買いという向こうに、みんなでシェアをするという実態が見えてくる。そしてシェアをするという消費の向こう側に、世帯人員が少なくなっていっている生活者がいろいろな連鎖で暮らしをしているという社会構造の変化がみえてくればオーケーだ。ここに実家や三世代のつながりが予感できればこのエスノグラフィーは成果があったのである。まずはスナップショットに吹き出しをつけることからスタートだ。

関連コラム

マーケティングコラム
あの世代の呼び方は何?各世代へのマーケティング方法もご紹介
「団塊の世代」や「Z世代」など、生まれた世代によってさまざまな名称が付けられています。マーケティング担当者であれば、それぞれの世代の名称と特徴を把握し、世代ごとにあわせたマーケティングを実施しましょう。 本記事では、それぞれの世代の呼び方について説明し、各世代に合ったマーケティング方法を解説します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム
独身の人が増えすぎている?未婚の割合や増加の理由を解説
結婚して家庭をもつことが当たり前だった時代からは一変し、生涯を独身で過ごす人が増えています。なぜ未婚率が高くなっているのでしょうか。今回は、未婚の割合や未婚の人が増えている理由について解説します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム
中学生のスマホ使用時間の理想はどれくらい?スマホが及ぼす影響も紹介
近年、中学生からスマホを持たせる家庭が多いなか、使用時間の長さが問題視されているケースが多く見受けられます。スマホの使用時間が長いと学力に影響するといわれることもあり、子どもを持つ親からすると、「適切な使用時間の範囲で使わせたい」と考える方もいるようです。 今回は、中学生がスマホを使う時間の理想をはじめ、使用時間が長いとどのような影響を及ぼすのかを解説します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム
α世代の次の世代とは?β世代の特徴や取り巻く環境を予測しよう
今注目されているZ世代の次がα世代と呼ばれており、さらにその次がβ世代にあたります。Z世代以降は、デジタルネイティブであることが特徴ですが、マーケティング担当者や商品の開発担当者であれば、β世代とはどのような世代なのか、今と取り巻く環境がどのように変化しているのか気になるのではないでしょうか。今回は、β世代の特徴やβ世代を取り巻く環境について解説します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム
推し活の経済効果はどれくらい?市場規模と推し活マーケティングのメリットとは
若年層に適確なアプローチができないなど、従来のマーケティング手法に限界を感じてはいませんか。商品やサービスのターゲットとして、「推し活に力を入れる消費者」に絞る方法もあります。 推し活とは、推し(お気に入りのキャラやアイドルなど)を応援する活動のことです。今回は、推し活の経済効果や企業が推し活マーケティングに力を入れるメリットについて紹介します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム
犬派か猫派か?どちらが人気?性格や相性を徹底解剖!
ペットを飼っている人や、これから飼いたいと考えている人にとって気になるのが「犬と猫はどちらが人気なのか?」という点ではないでしょうか。また、犬派と猫派それぞれの性格や相性などについて気になる人も多いかと思います。本記事では、犬派と猫派どちらが多いのか、また性格や相性はどうかを徹底解剖します。弊社で行ったアンケート結果もふまえて解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム
団塊の世代はいついなくなる?高齢化で生じる問題と対策を紹介
団塊の世代は、全人口に占める割合の大きさから、社会に多大なる影響を与えてきました。高齢化の話題に接して、団塊の世代の存在感に驚いた方もいるのではないでしょうか。今回は、団塊の世代の高齢化問題と企業の対策について紹介します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
デジタルマーケティングコラム
話題のBeRealはなぜ人気があるのか?特徴や注意点、ビジネス利用も解説
「BeReal」は、通知から2分以内に投稿しないと友人の投稿を見られない、写真の編集機能がないなどの特性があり、若者の間で人気のSNSです。 今回は、BeRealがなぜ人気なのか、主な特徴と支持される理由を紹介します。ビジネス展開のメリットもあわせて解説しているので、マーケティングをお考えの方は参考にしてください。
# デジタルマーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
デジタルマーケティングコラム
デジタルデトックスは効果なし?得られる効果と実践方法を解説
デジタルデトックスとは、一定期間スマートフォンやPCなどのデジタルツールから離れることで、ストレスを軽減する取り組みのことです。デジタルツールに囲まれて生活する方が多い現代社会のなかでは、ストレスや心身の疲れを緩和する効果が期待できるといわれています。 しかし、「デジタルデトックスには効果がない」といった意見も見受けられます。今回は、デジタルデトックスには効果がないといわれてしまう理由や、より効果的にデジタルツールと距離を置く方法について解説します。
# デジタルマーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
ご相談・お見積もり依頼
【法人・個人様】
フリーダイヤルでのお問い合わせ
0120-198-022
※ モニター様からのお電話でのお問い合わせは受け付けておりません。
資料ダウンロード