マーケティングコラム
フォーカスグループ(定性調査)の意義と価値(2) モデレーションの難しさ?!
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株式会社ユーティル取締役会長
“気づき”マーケティング研究所所長
宇田川 信雄
先月の続きですが、今回は“フォーカスグループのモデレーションの難しさ”について書いてみます。
モデレーターがやってはいけないミス
この事故は同時通訳を使ってフォーカスグループセッションの会話を理解しなくてはいけない、日本語を外国語とするオブザーバーが経験する典型的な問題例でした。優れた同時通訳者でも込み入った会話を全て訳すことが難しいと共に、「今のはモデレーターの発言、そして、今度のが参加者Aさんです」と解説してくれませんしね。もし、あの場に私、或いは誰かヘルプできる人間がいなければ、そして状況を明確に説明できなければ彼の誤解を指摘できなかったわけで、マーケティング戦略上の決定を間違える可能性もありました。

その結果、調査依頼クライアントさんが知りたかった、参加者(生活者、ターゲット消費者)の素直な理解を探り損ねたわけです。限られた時間の中でディスカッションフローに記されている課題領域を、それも、クライアントさんがマジックミラーの向こう側で観察している状況で全てカバーしなくてはいけない、といったプレッシャーを感じたモデレーターさんが無意識の中でついやってしまったミスでした。
多数決の挙手を促してしまう

でもベースがたった6人の場合、3人が「Yes」で2人が「No」、そして、残りの一人が分からないといったところで何の意味があるんでしょうか?参加者はこの結果からバイアスを受けその先の会話が難しいと感じるでしょうし、関係者はこの結果を見て“対象者の50%がこのコンセプト商品が良い/買いたいと云っていた”と喜んで報告するのですかね?
この様なケースに出会った時に問題を指摘したところ、“でも、トータルで6グループ行うのでサンプル数が36人になるからいいんですよ”と云われたことがあります。これは恐ろしい勘違いですね。定性調査の中で対象者の反応を数値化すること自体に課題がある事は調査を学んできたものであれば誰もが理解している事だと思います?!その昔、こんなことをしていたら先輩や上司から相当怒られましたね!
定性調査の在り方
■定性調査とは、“結果としてのYes/No”や“まとまった回答を求める”ものではなく、どうなると、或いは、どういうプロセスを経るとYesなのか、またNoになってしまうのか、どのような要因や思考経路で参加者がそのような態度になるのかを構造的に明らかにする為に行われるべきだと考えます。定性調査の結果分析には必ず、参加者の言動を全体から理解した結果で可能となる「解釈」が入るはずで、発言の行間を読んだりタテマエと本音の識別をしたりすることが必要です。
■そのためには、参加者にテーマに関して自由に話しあってもらうことが必要だと思いますが、定量調査(アンケート)のOA質問の補完レベルのようなグルインでは、秩序だって構成的(structured)な一問一答型のインタビューが多いため、ディスカッションフローにおとされた設問のはざまや言葉のやり取りから読み取ろうと調査企画者が考えた参加者の真意や態度が見えないということが多々起こっているように思います。