マーケティングコラム
団塊の世代はいついなくなる?高齢化で生じる問題と対策を紹介
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団塊の世代は、全人口に占める割合の大きさから、社会に多大なる影響を与えてきました。高齢化の話題に接して、団塊の世代の存在感に驚いた方もいるのではないでしょうか。今回は、団塊の世代の高齢化問題と企業の対策について紹介します。
そもそも団塊の世代とは
団塊の世代とは、堺屋太一さんの小説『団塊の世代』が由来となった言葉です。1947年から1949年に生まれた世代のことを表します。団塊の世代といわれるようになったのは、他の世代と比べて人口が多く、一部の塊のように人口ピラミッドを形成したためです。戦後の復興と経済の成長が重なった時期に、多くの子どもが誕生しました。
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&lid=000001283420
出典:国立社会保障・人口問題研究所「人口ピラミッド」
https://www.ipss.go.jp/site-ad/TopPageData/PopPyramid2023_J.html
団塊の世代は他の世代と比べて人口が多いことから、労働市場や消費行動など、社会において大きな影響を与えています。過去には、団塊の世代が60歳を迎える2007年に労働力が減少するのではないかと注目を浴びたりもしました。
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団塊の世代がいなくなることで2025年問題が懸念されている
団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になることなどで起こるさまざまな問題を2025年問題といいます。2025年問題では何が懸念されているのか解説します。2025年問題とは
2025年問題とは、団塊の世代が後期高齢者である75歳以上を迎える2025年に注目したものです。他の世代と比べて人口の多い団塊の世代が後期高齢者になることで、さまざまな問題が生じると懸念されているのです。2025年に生じる課題
2025年問題で取り上げられる主な課題を紹介します。社会保障費の増大
2025年問題で取り上げられる課題のひとつが社会保障費の増大です。社会保障費とは、医療保険や介護保険、公的年金制度などの社会保障制度を維持するために必要な国の支出のことをいいます。特に懸念されているのが医療保険や介護保険などの増大です。団塊の世代が後期高齢者になることによって、高齢者に対する社会保障費はさらに増えるものと予測されます。
社会保障を支える医療サービスや介護サービスへの影響も避けられません。後期高齢者が増えることによって、医療や介護のニーズも増大するためです。一方で、必要な医療や介護を提供するだけの十分な人材を確保できないことも指摘されています。
2025年問題で指摘される社会保障費増大に向けて、国もさまざまな対策を取っています。介護保険法改正により、1割だった後期高齢者の医療費負担が、一定の所得がある場合に限り2割にする改正も行われました。
高齢者一人当たりの保険料と現役世代一人当たりの負担が拡大しないよう、負担割合の見直しも実施されています。
労働力人口の減少
2025年問題では労働力人口の減少も指摘されています。少子高齢化により働く人が減少することで、既存のサービスにも影響が生じるのではないかという問題です。例えば、保険業界では高齢者が増えることにより、新規契約者が減少することが予測されます。運送業界では、時間外労働の上限規制への対応で一人当たりの労働時間を短縮する必要がある一方で、人材を確保できず、物流に影響が生じることも予測されます。
既存事業の後継者不足も重要な課題のひとつです。団塊の世代が後期高齢者になることにともない、小規模事業者や中小企業の経営者の一部も高齢化することが予測されます。既存の事業をどのように次世代に引き継いでいくか、どのように後継者を育成あるいは探すかも重大な課題です。
国は、今後訪れる深刻な労働力不足に対して、特に需要拡大が見込まれる介護、看護、建設、保育分野について取り組みを強化しています。具体的な支援策として、雇用管理の改善を図る事業者への助成金の支給、職業訓練などによる能力開発支援、正社員化の支援などが行われています。
経済規模の縮小
団塊の世代が後期高齢者になると、すでに超高齢社会にある日本の経済活動への影響は必至とされています。まず、少子高齢化により労働者が不足することで、経済の成長率が下がることが予測されます。また、人口が減少することは企業の資本の減少にも影響を与えかねません。さらに、高齢化が進むと貯蓄を取り崩しながら生活する人の割合も増える関係で、社会全体の投資の縮小も予想されます。高齢化と人口減少が進むと、個人の消費活動も縮小し、さらに消費に関わる企業の生産活動も縮小するため、経済規模も小さくなってしまうのです。
国は人口減少や高齢化による経済活動縮小に対応するために、企業にDXを推進するデジタルガバナンス・コード2.0の策定などを行っています。国だけでなく、地方自治体でもDX推進の動きが見られるようになってきました。
団塊の世代の引退に備えて企業が行うべき対策
団塊の世代が後期高齢者となり、現役を次々と引退することが予測されるなか、企業は不足する人材をどのように確保するべきか、十分に検討する必要があります。企業が取り組むべき対策として、人材確保につながる主な対策を紹介します。働きやすい環境を整える
労働人口が減少するなかで激化するのが人材獲得競争です。多くの業界や業種で人手が不足すると予想されることから、自社に必要な人材を確保するためには、競争相手よりも魅力的な職場にしていく必要があります。そのためにも、労働者にとって働きやすい環境の整備は重要です。労働環境整備の取り組みとして、長時間労働の解消、給与の見直し、休暇制度の充実などがあげられます。従業員に向けた研修制度やスキルアップ制度の充実など、サポートの充実も考えられます。
多様な雇用形態の受け入れも重要になってくるでしょう。団塊の世代が後期高齢者となることで、今後、介護をしながら仕事をする人の増加も予測されるためです。
介護や育児と両立できるように、フレックスタイム制の導入、短時間正社員制度の導入、テレワークの導入なども検討していく必要があります。
DX化で業務効率化を図る
DXとは、デジタルトランスフォーメーションのことです。デジタル技術を活用して、ビジネスモデルなどを変革させることをいいます。若年層人口が足りず、人材不足が加速するなかで、労働者の数に頼るのではなく、デジタルをうまく活用していくことは今後重要度が増していきます。DXの推進は、業務効率化による社員の負担軽減や付加価値の高い業務への人材投入に役立つ取り組みです。
具体的な取り組みとしては、経済産業省の公表しているDXセレクション(中堅・中小企業等のDX優良事例選定)などが参考になります。
例えば、ロボット導入による省人化、クラウドサービスの導入による業務効率化、AI活用によるデータ経営などが考えられます。DX推進のために具体的に何をしていくべきか迷う場合は、DXの優良事例などを参考にしてみるのも良いかもしれません。
参考:経済産業省「DXセレクション(中堅・中小企業等のDX優良事例選定)」
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dx-selection/dx-selection.html
外部リソースを活用する
労働人口が減少するなか、企業の人材確保は困難を極めることが予想されます。必要な人材を確保するための取り組みだけでなく、人材不足を補って安定的に経営するための取り組みも必要です。人材不足により業務を停滞させないためには、外部リソースの積極的な活用も方法のひとつに考えられます。バックオフィス業務などのノンコア業務、あるいは業務の一部をアウトソーシングする方法です。
アウトソーシングを適度に活用することで、重要なコア業務に人材を十分に投入できる体制を整えられます。人手不足を解消できるだけでなく、企業の成長戦略としても有効です。
2040年問題も視野に入れておくことが大切
2025年問題だけでなく、2040年問題も指摘されています。2040年問題とは、第二次ベビーブームの1971年〜1974年に誕生した団塊ジュニア世代が、65歳以上の高齢者になることで生じるあらゆる問題のことです。2040年に高齢者の人口がピークに達することで、労働力不足が加速化するだけでなく、社会保障費の増大、医療・介護人材の不足、経済の縮小がさらに深刻になるとされています。
2040年問題も視野に、今後訪れる人口減少や人手不足に向けた対策を、早めに講じていく必要があります。
まとめ
団塊の世代が後期高齢者を迎えることで生じる、あらゆる課題が、「2025年問題」として指摘されています。国をあげた取り組みも行われていますが、団塊の世代の引退による人手不足に対処するには個々の企業の取り組みも重要です。2040年問題も指摘されているため、将来の高齢化や人口減を視野に入れた対策に力を入れていきましょう。関連ページ