マーケティングコラム

調査票作成で大切なポイントとは?オンライン調査と紙の調査での違い

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調査プロジェクトにおいて調査企画から調査票作成までが実は最も重要な段階となります。今回は、調査票作成における基本ポイント、オンライン調査ならではの作成時注意点、紙の調査票に適している調査シーン、紙の調査票作成における注意点を解説しながら、調査票作成の基本についてお話していきたいと思います。

プロジェクト進行において重要な調査票作成

マーケティング・リサーチのプロジェクト進行において、どんなに高度な統計解析や分析手法を活用しても、そもそものデータが適正なものでなければ、その解析・分析にはなんの価値もありません。調査課題に応じて調査票を適切に作成できるかどうかが最も重要な工程です。

しかし、ネットリサーチの台頭によって、誰でも気軽に調査票を作成できるようになったことで、昨今は「調査票作成の重要性」という視点が欠けがちになってきているように思います。まずは、基本の調査票の作り方について振り返ってみたいと思います。

調査票作成の基本となる3つのポイント

基本の調査票の作り方については、総務省統計局「なるほど統計学園」に記載があります。
その内容をおさらいしてみましょう。

1. 調査票全体の構成
 ・調査項目は重複なく、漏れなく作成する
 ・回答者にとって明確な言葉を使う
2. 質問の順番
 ・回答を誘導しないように気をつける
 ・関連する質問は可能な限り続けて行う
 ・回答しやすいものから順に問いていく
3. 質問項目
 ・あいまいな言語は避ける
 ・答えを誘導するような質問にしない
 ・固定概念を思い起こさせるような言葉は使わない
 ・同一の質問項目に2つの質問を入れない
 ・同じ言葉でも世代間や地域で意味が違ってくる言葉にも注意する
4. 回答方式
 ・選択式回答方式
 ・自由回答方式

引用:総務省統計局「なるほど統計学園」
https://www.stat.go.jp/naruhodo/12_ppdac/plan/plan2.html

ここに記載されていることを要約すると、以下の3つが、調査票作成の基本だといえます。

 1. 対象者にわかりやすい平易な言葉を使うこと
 2. 対象者の思考の流れに沿った、スムーズな質問の流れにすること
 3. 回答にバイアスをかけるような組み立てにしない/言葉を使わないこと

つまり、対象者の立場にたった調査票を組み立てる必要があるということです。


調査票作成のポイント


オンライン調査と従来型調査(郵送調査や留置調査)では、対象者が回答する環境も異なります。精度の高いデータを得るためには、対象者に負荷をかけない環境下・負荷がかからない質問にすることで自然に直感的に回答できるような調査票にすることが望ましいです。だからこそ、調査票作成時には「対象者から回答画面や回答用紙がどうみえているか」という視点を忘れないことが重要です。

オンライン調査における調査票作成の注意点

それでは、調査手法によって調査票の作り方にはどのような違いがあるのでしょうか。現在主流のオンライン調査と、郵送調査や留置調査といった紙の調査票ではどのように異なるのか、その点に注目してオンライン調査での調査票作成における注意点をみていきましょう。


オンライン調査における調査票作成の注意点


デバイスの画面特性を考慮したレイアウトにする

オンライン調査の場合は、パソコンやタブレット、スマホなど手持ちのデバイス画面を通じて回答を得ます。そのため、画面サイズや見え方、拡大・縮小など、画面の特性を理解しながら作成する必要があります。

例えば、リード文や質問文を作成する際には、質問文の長さや改行位置を考慮します。特に、デジタル時代の近年では長い文章は読まれにくくなっているので、ビジュアルとして感覚的に瞬時に内容や意図を把握できるような文字や配置・色使い、レイアウトデザインが重視されます。

選択肢の数は8~10程度が望ましい

また、選択肢の数についても画面を意識する必要があります。スマホ画面での回答が主流になるにつれて、選択肢は画面をスクロールして確認する必要がない数になるよう、一度に画面でみえる範囲(8~10程度)にとどめた方が望ましいでしょう。

回答制御(選択肢のランダマイズなど)をかけすぎない

それに、オンライン調査票の場合、選択肢「1」への回答率が高くなる傾向がみられます。そのための対策としてランダマイズという方法がありますが、どの設問においてもランダマイズをかけるのが良いわけではありません。同一選択肢を使った質問文が続くときは、学習効果によって回答速度が速まることを優先し、選択肢の並び順を固定する方が望ましい場合もあります。

オンライン調査では、上記の選択肢のランダマイズ以外にも回答をコントロールする設定ができます。

例えば、
・必須回答かどうか
・複数回答か単一回答かどうか
・あてはまらないと回答したらそれ以外の選択肢は選べないように設定する
・「その他」を回答した際は必ず自由回答に記載しないと前に進めない
・回答対象者の制限
・回答した選択肢によって呈示する質問を変える
・選択肢のランダマイズ表示
など、多くのことをシステム上で設定することが可能です。適宜必要な仕掛けを活用できるのはオンライン調査ならではの強みでしょう。

しかしこの回答制御のおかげで「抜け漏れ」や「誤回答」が発生することがないため、逆に調査票が「完璧」ではない点を洗い出す機会を失っています。そもそも人間はそこまでロジカルに回答できるものではないため、すべて回答制御をかけてしまうことはかえって、適正なデータを得る上で妨げになってしまう危険性が伴います。

よりよい調査票を作成するためには、オンライン調査においてもデータクリーニングという作業を通したPDCAという工程が重要です。回答制御しておくべき設問と、調査実施後にデータクリーニングで対応すべき設問とを事前に仕分けすることが必要といえます。

オンライン調査においても、一度紙にプリントアウトした調査票を回答してみるプリテストを行うと、問題点や修正するべき点がみえてくるのでおすすめです。

紙の調査票が適している調査とは・・・

それでは、紙の調査票が適しているのはどのような調査のときでしょう。紙の調査票は、今でも多くの調査手法で採用されています。

代表性が求められる調査(ネット関与度が低い層への調査)

代表的な調査テーマ・調査手法としては、社会調査や世論調査のような代表性が求められる訪問留置調査です。ネットモニターではなく、対象となったエリアごとに各戸訪問して調査依頼をかけます。ネット関与度が低い高齢層が対象となっている場合が多いので、画面で答えるオンライン調査よりも紙の調査票でお願いすることが多くなります。

調査ボリュームの多い調査

あるいは、調査ボリュームが多い調査の場合、オンライン調査よりも紙の調査票を使って調査員を介在させる調査手法を採用することが良いように思います。調査ボリュームがある程度多くても、「調査員」という人を介在させることで途中離脱される方が少なく最後まで回答いただけるからです。

企業対象の調査(メールアドレスが不明な対象者への調査)

また最近は、企業対象の郵送調査についてのお問い合わせが増えています。メールアドレスがわからない企業対象の場合には、公開されている住所や担当部署・担当者あてに、依頼状と紙の調査票を送ります。依頼状には、調査の狙いや目的をきちんと説明し調査への協力をお願いしています。同時に封入されている紙の調査票をみることでボリューム感や内容が即時に伝わりますし、そのままゴミ箱に捨てられない限りは「もの」として目の前に残ります。簡単な謝礼も同封することが多いので、オンライン調査のURLへ誘導するよりも確実に回答・返送率が高くなります。

このように、紙の調査票は今でも非常に有効なツールであることに変わりはありません。

紙の調査票作成の注意点

それでは、紙の調査票作成における注意点はどうでしょうか。オンライン調査票の作り方をそのまま紙の調査票に反映してもうまくいかない、と感じる方が多いように思います。オンライン調査にはオンライン調査ならではの傾向と対策があるように、紙には紙の調査票ならではの傾向と対策があるからです。主な注意点としては以下のものがあげられます。


紙の調査票作成の注意点


1ページの質問数を考慮し、調査票全体のレイアウトを調整する

前述の通り、郵送調査や留置調査といった従来型調査において対象者が回答する環境は、オンライン調査とは異なります。従来型調査では、ご自宅のテーブル、あるいは会社や自室の机の上に広げて回答することがほとんどでしょう。

そのため、紙の調査票の場合は、テーブルや机に広げられる状態をイメージして、調査票全体のレイアウトを検討する必要があります。例えば、両面見開きにした場合の大きさや見開きでのレイアウト、1ページにおさめる質問数、改ページの位置などです。

調査票全体のページ数を意識する

一方、レイアウトを優先してしまうと、膨大なページ数、厚みになってしまう場合もあります。そうなると今度は対象者が量に圧倒してしまい、調査への協力率が低下してしまいます。全体のページ数とレイアウトのバランスを調整しながら進めることが必要です。

フォントは大きいサイズで読みやすくする

手法の特性上、紙の調査票は年配層が対象となることが多いのですが、その際はできるだけ見やすいフォントで大きいサイズ(できれば明朝体12ポイント以上)であること、そしてわかりやすい質問、わかりやすい流れにすることが求められます。高齢層の方ほど調査票に時間をとって向き合っていただける傾向が強いので、わかりやすい内容・レイアウトであれば、ある程度のボリュームがあってもしっかり答えていただけることが多いです。

紙の調査票とオンライン調査票の違い

紙の調査票がオンライン調査票と最も異なるのは、回答をデジタルでコントロールできないということです。紙の調査票の場合は、対象者自身ができるだけ間違いなく回答できるように、わかりやすい指示を入れる必要があります。

例えば、
・回答方式を明記する。
  例:いくつでも〇印、1つだけ〇印、具体的に記入、など
・回答対象を記載する。
  例:全員の方におうかがいします。
    Q〇で〇〇とお答えの方におうかがいします。など
・分岐質問にはとび先の質問番号を指示記載する。
  例:Q〇で〇〇とお答えの方はQ〇にお進みください。など
といった指示を記載します。できるだけ一目でわかりやすく答えられるようにレイアウトや色使いの工夫も必要です。


紙の調査票 例


そのような工夫を行っても、抜け漏れや誤回答が発生したり、論理的に考えると違和感のある回答も見受けられたりすることもあります。そのため、郵送調査や留置調査の場合は、事前に社内で複数の目を通してプリテストを行い、回答がしにくくないかなどの確認を行っています。もちろん、調査票回収時にも抜け漏れや誤回答がないか、実査現場でも回答チェックとフォローを行いますし、データ入力後の集計段階でもさらにロジカルチェックなどデータクリーニング作業を行っています。こういった一連の作業も、紙の調査票に関する豊富な経験がないと対応できません。


紙の調査票 データ確認のタイミング


このように、調査票作成の基本は紙の調査票作成にあります。オンラインでの調査票作成においても、基本を忘れずに取り組んでいきましょう。

まとめ

調査票作成においては、対象者全員に共通した意図が伝わるように、わかりやすい言葉使いで、直感的に回答できるよう作ることが重要です。そのためには、人間の基本心理や行動特性を理解する必要もありますし、いろいろな調査手法を経験した上での知見も必要でしょう。オンライン調査が主流の昨今ですが、デジタルに頼り切らないことも大事なことといえます。

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