マーケティングコラム
機縁リクルートの強みとは?100歳100人調査の事例も紹介
公開日:
マーケティング・リサーチにおける対象者探しには、ネットモニターに対するWebリクルートの他に、専門調査員の人的ネットワークを通じて行う機縁リクルートがあります。機縁法ともいわれるこのリクルートは、現在もその強みを発揮してたくさんの調査で活用されている手法です。今回は、機縁リクルートとは何か、その強みは何かということをご紹介すると同時に、その強みを最大限発揮した実例として、弊社の取り組みの中でも特に難易度が高かった「100歳100人調査」をご案内したいと思います。
機縁リクルートとは何か?
ネット調査が主流となった現在では、Webリクルートが中心となっており、機縁リクルートを知らない方も増えています。しかしながら、ネットというものが存在しない時代には、この手法が主流でしたし、特に定性調査や出現率の低い対象条件の定量調査など難易度が高いリクルーティングには、現在でも採用されています。それでは、機縁リクルートとは具体的にはどんな方法なのでしょうか?
機縁リクルートでは専門調査員を活用します。この手法で活躍する専門調査員とは、豊富な人脈を持っている、あるいは人脈を開発していける能力を持つ人材のことです。マーケティング・リサーチの基本ルールを理解しながら、調査の対象者としてふさわしい人を人づてでたどっていきます。
要は人と人のつながりから人探しをするのが機縁リクルートなのです。
モニター登録可否に関係ありませんので、ある意味全国民(日本人の人口:1億3千万人)が対象となりえるリクルート方法です。条件にあてはまっているだろう人を見つけたら、詳細条件を確認した上で調査に協力いただけるように正式に依頼をする、という段取りになります。全体数が不明な機縁リクルートを「出現率が読めない」等と敬遠する方もいらっしゃいますが、この手法だからこそ実現可能な調査もたくさんあります。
機縁リクルートの強みは何か?
調査への協力率が高い
機縁リクルートでは、調査への協力率が安定的に高いです。会場調査や定性調査での欠席率が低いことでそれは証明されています。専門調査員という人が介在して協力依頼を行うことが、協力率向上に一役かっていることは確実です。回答精度が高い
また、機縁リクルートによる対象者は協力意欲も積極的で回答精度も高い傾向にあります。それは、調査依頼時に丁寧に説明し、納得の上でご協力いただくようにしていることに加え、調査依頼時に「この人はこのテーマ/この手法の対象者としてふさわしいかどうか」というスクリーニングを人の耳や目を通じて行っていることもあるでしょう。出現率が低い難易度の高い対象者リクルートに強い
そして、機縁リクルートの最大の強みは、難易度の高いリクルーティングに強いという点です。例えば、Webモニターに登録していない層に効率的にアプローチすることが得意です。
それは、ネットやSNSの低関与者だけでなく、逆に、ネット強者ともいえるインフルエンサーやガジェット利用先行層等、ネットやSNSのトレンド先行層に対しても、実はWebリクルートよりも機縁リクルートの方がアクセスしやすいのです。また、高額所得者もネットモニターに登録している確率は低いため、機縁リクルートを採用します。
出現率が読めないくらい低いと想定される、特定のエリア居住者やニッチな商品・サービスユーザーも、Webリクルートよりも効率的にアプローチできます。特に、定性調査で求められる、スクリーニング質問の行間にニュアンスを求めるようなイメージ・意識条件が加わる調査のときには機縁リクルートが効果を発揮します。
そのような中で機縁リクルートの強みが最も発揮され活用度が高いのは、シニア市場です。
ネットモニターに存在するシニア層は、市場において一般的なシニア層とはまだまだいえません。一般的なシニアにリサーチしたい、という場合に最適です。
今回は、機縁リクルートの強みを最大限発揮することができた「100歳100人調査」を事例としてご紹介したいと思います。
機縁リクルートの事例紹介「100歳100人調査」とは…
「100歳100人調査」とは、その名の通り、100歳以上のおじいちゃん・おばあちゃんを100人以上集めてアンケートを行う、というものです。他の調査会社数社からは「実現不可能」とお断りされる程、難易度の高い案件で、シニア調査を得意としている弊社でもさすがに100歳以上が対象となる調査実績はありませんし、さらに100人以上を集めなくてはならない定量調査。さらに、プロモーション用に調査結果を利用したかったため、写真・コメントの使用や広告宣伝の登場への許諾が必要となり、さらに難易度があがる条件付きでした。気軽に「できます」と即答できる案件ではありませんでしたが、この案件を無事完了できたのは「機縁リクルート」があったからに他なりません。
最終的に確定した調査設計は以下の通りでした。
【100歳100人調査 調査設計】
調査地域:全国
調査対象:100歳以上の男女個人(寝たきり生活者や病院入院者は対象外)
有効回収数:100サンプル
リクルート方法:専門調査員による機縁リクルート
調査方法:ご本人へのヒアリングあるいはご家族を通じての質問用紙による自記入式調査
機縁リクルートの活用で調査実現
Webモニターに100歳以上の登録者はいませんので、機縁リクルートを採用するのは必然でした。難題と思われた条件に対し、ベテランの専門調査員は「100歳以上の家族がいるという話はおめでたく自慢できる話題のため、人の話にあがりやすく比較的探しやすいだろう」と心強くなる反応をしてくれました。
実際にリクルートをはじめてみると、「近所に100歳になるおばあちゃんがいると思ったら、あと数年で100歳という話でまだ90代だった」とか「先日までは元気だったけど今は病院に入院していてとてもアンケートに答えられる状態ではない」という状況が多く報告され、一時期はどうなることかと思いましたが、リクルート期限の3週間のうちに、全国各地から予備サンプルも含めて100歳以上の方々を100人以上集めることができました。
意外な副産物、対象者のご家族からも好評
この調査を行うにあたっては、ご家族の協力が大前提でした。調査実施前は、「ご家族の反対に会うのではないだろうか?」「介護をしているご家族の負担を増してしまうのではないだろうか?」など、いろいろなリスクが考えられました。
しかし実際は、ほとんどのご家族は調査に協力的で、むしろ積極的に「参加・協力したい」というご家族も少なくはなかったのです。
その理由は「100歳以上のおばあちゃん・おじいちゃんの良い記念・思い出になる」ということ。プロモーションや広報宣伝に登場するかもしれない、という点がむしろ効果的だったのです。実際に、新聞発表された広告を調査ご協力者の方にお送りしたところ、お礼のお手紙をいただくこともありました。その中には、おばあちゃんやおじいちゃんの気持ちや過去の経験を初めて聞けて良かったというコメントもありました。
こういったご家族の好意的な反応には、仲介に入っている専門調査員の存在が効果を大いに発揮したともいえます。あたりをつけて条件に合う100歳以上のおじいちゃん・おばあちゃんを見つけるだけでなく、ご家族の方ともじっくりお話をさせていただき、対象者本人やご家族の不安を取り除くように腐心しているのです。
100歳以上のシニアに元気の秘訣を調査するという目的の調査はなんとか無事達成しました。調査結果とともに発表されたプロモーションは大きく広報され、好評だったこともあり、毎年1回定期的に継続的なプロジェクトとして実施しています。
まとめ
今回ご紹介した100歳調査で採用した機縁リクルートは、上記のような難易度が高い対象条件に効果を発揮するだけでなく、イメージ・意識条件が必要な対象者を見つけたいとき、目的や意図にフィットする質の高い対象者を見つけ出すときに効果を発揮する手法です。特に、人を介在させるため、調査の協力率が高く、回答精度も良質です。機縁リクルートの強みを改めてお伝えすることで、上手に活用していただけたらと思います。【参考URL】
https://www.stat.go.jp/data/jinsui/new.html