マーケティングコラム

対面で行う会場調査・インタビュー調査での感染予防対策の取り組み

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2020年からはじまった未曽有のコロナ禍という環境下でも、マーケティング・リサーチへのニーズは止むことはありませんでした。手法をオンラインに転換できず、来場型手法にて実施しなければならないケースも数多くあります。そのために、調査の現場ではどのような感染予防対策が必要なのか。今回のコラムでは弊社での取り組みを一例としてご紹介しながら、注意点をおさらいしていこうと思います。(2022年6月17日時点での取り組み)

緊急事態宣言下におけるオフライン調査の取り組みについて

突然降って湧いた新型コロナウイルスの登場は、マーケティング・リサーチ業界にも、もちろん大激震をもたらしました。

特に、会場調査やグループインタビュー調査等、対面で対象者に集合していただく必要があるオフライン調査はテーマや内容的に他手法への振り替えが難しいものがたくさんあります。「コロナ禍でも来場型の調査を実施したい」というご要望がある場合、対応する方法がないか考慮する必要があります。

マーケティング・リサーチ業界をとりまとめている「一般社団法人 日本マーケティング・リサーチ協会」では、緊急事態宣言が明けるとともに、『感染症予防対策ガイドライン』を会員社に公開し、業界全体として安心安全に調査を実行できるレギュレーションを定めました。

それに先んじて、弊社クロス・マーケテイングでは、行政から発信される情報をもとに感染予防対策のためのガイドラインを急遽作成し、緊急事態宣言下においてもオフライン調査の実施を決断。実際に、2020年4月~2021年12月までで、オフライン調査は合計2,871件、その内、来場型調査は971件実現させています。その結果、オフライン調査の対象者当日参加率はコロナ禍前と変動なく、さらに来場型調査における感染率もゼロでした。


オフライン調査件数


調査現場が感染の現場とならぬよう、私たちがどのような取り組みを行ってきたのか、その具体例をお知らせするとともに、その背景には、オフライン調査における豊富な経験とフィールドワーク現場での徹底した意識づけが必要だったということをお伝えしたいと思います。

対象者のリクルート時から、感染対策は始まっています

感染予防対策は、来場していただく当日だけの話ではありません。
対象者のリクルート時から対象者の方には以下のような確認を行い、対象者自身に感染予防への注意喚起を行います。

新型コロナウイルス感染予防のための確認

1. 海外渡航経験の有無

ご自身、同居ご家族の中に「直近1ヶ月以内に、海外へ渡航/海外から帰国された」方はいらっしゃいますか?また、アンケートご参加までに渡航予定はありますか?

2. 感染者との接触有無

ご自身、同居ご家族の中に「新型コロナウイルス」に感染が明らかな方との接触歴がある方はいらっしゃいますか?

3. 直近の体調

ご自身、同居ご家族の中に「直近2週間以内に、息苦しさや強いだるさ・高熱などの強い症状」のある(あった)方はいらっしゃいますか?

4. 現在の健康状態

現在、糖尿病・心不全・呼吸器疾患を患っている。あるいは透析・免疫抑制剤や抗がん剤等を用いた治療をしていらっしゃいますか?

上記4項目のうち、1つでもあてはまる方は調査対象外となります。

新型コロナウイルス感染予防のための確認

アンケートはコロナウイルス感染症の予防対策を施しながら実施させていただきます。

1. 受付時検温の実施に関して

アンケート当日の受付時に検温をさせていただきます。検温時に高熱(37.5℃以上)であると判断される場合、あるいは体調不良の症状が確認される場合は、アンケートのご参加をお断りさせていただく場合がございます(お帰りいただく際、謝礼のお支払いはございません)が、ご了承いただけますか。

2. 感染リスクに関して

下記予防対策を施しながらアンケートを実施させていただきますが、感染リスクを0にすることは困難であり、あくまでご参加はご自身の意思(任意)となりますが、ご了承いただけますか?
 ・スタッフの手洗い、手指消毒の徹底
 ・スタッフのマスク着用(加えてフェイスシールドを着用の場合あり)
 ・定期的な会場内の換気、備品などの消毒
 ・ソーシャルスペースの確保(スタッフを含めた会場内の人数制限)
 ・ご協力いただくみなさまへ入室時の手指消毒のお願い
 ・ご協力いただくみなさまへマスク着用のお願い

3. 感染者発生時の対応に関して

万が一、弊社事業所内で新型コロナウイルス感染者が発生した場合、緊急に一部またはすべての調査を中止する可能性がございます。また、後日感染が確認された場合、当施設への連絡、及び行政機関による調査にご協力いただきますがご了承いただけますか?

上記3項目のうち、1つでも了承いただけない方は調査対象外となります。

このように、事前に対象者への注意喚起を行うとともに、このような呼びかけを社員自らが行うことで、社員自身の感染予防対策への意識づけにも結びついていたと思います。

実査当日、受付やスタッフは…

実査当日の会場の配置やスタッフの動きに関しても、いろいろな面からの対策が必要です。弊社では以下のことを基本対応としています。

実査前の受付体制

・対象者の待ち椅子(席)を置く場合、距離感を広めに確保
・注意喚起ポスター/受付張り紙を掲示
・受付前~受付時に、問診票、検温(37.5℃以上ないか)、手指消毒の実施
・受付はアクリル板で仕切り飛沫感染を防ぐ(本人確認、条件確認もアクリル板越し)


感染症注意喚起ポスターと実査会場受付イメージ


弊社スタッフについて

・担当社員によるスタッフの健康確認(息苦しさや強いだるさ・高熱などの強い症状のある者がいないか)
・業務前日の夜、業務前のスタッフへの検温の実施
・手指アルコール消毒の徹底 (手洗い、うがいは1時間に1回以上を目安として行う)
・会場内においてゴム手袋、マスク、一部フェイスシールドの着用

その他

・会場内の換気を実施(30分に1回程度を目安として)
・物品のアルコール消毒を実施(対象者の使用したペン、画板など)
※来場いただくお客様(クライアント)に対しても、同様の対応(検温、消毒、マスク着用)にご協力頂きます。

調査から感染者を発生させないためには、スタッフ自身の体調管理も重要です。スタッフ自身にも「海外渡航経験、感染者との接触有無、直近の体調、自身の健康状態」チェックを行い、いずれか1つでもあてはまるものは当日参加させないというルールを徹底しています。
特に、来場型調査は密になりやすい環境です。換気をいかに効果的に行うか、対象者間あるいは対象者とスタッフの接触をいかに減らすかという点で、企画分析とフィールドワーク現場とで綿密な打ち合わせを何度も行い、レギュレーションを決定していきました。

調査手法別:会場調査における感染予防対策

感染予防対策は、調査手法別にも細かく取り決めていく必要があります。
弊社の会場調査では、以下のことを基本対応としています。

調査実施計画時の対策

・実査時の「密」を防ぐため会場内の人数を制限
・1人あたりのソーシャルルスペースを5㎡(2.24m×2.24m=5.0176㎡)を目安とする
・会場内の最大人数を設定します。 ※上限人数はスタッフ込みで30名

調査実施時の対策

●さみだれ開催時 イメージ
・距離感の担保の難しいコーナーやシェルフでの人数を制御(原則2名)
\t●一斉開催時 イメージ
・対象者の座席間を2m確保


さみだれ開催時(イメージ)と一斉開催時(イメージ)


その他

・タブレット端末による自記入式を推奨(調査員による質問のフォローを無くし、接触を減らすため)
・人数制限によって全体の実査期間が従来より長期化(従来1日100s前後の調査であれば実施可能)

感染予防対策においてのデメリットとしては、密を避けるために1日の調査可能人数を絞ることとなり、従来より実査期間が長期化することとなりました。一方で、タブレット端末入力への転換を積極的に促進させたので、データ入力期間が短縮され納期を早めることができるようになりました。

調査手法別:グループインタビューなど定性調査における感染予防対策

デザイン評価等、テスト品を呈示して評価を得たい等のリサーチニーズがある場合、どうしても来場型にならざるを得ません。来場型定性調査においては、以下のことを基本対応としています。

調査実施計画時の対策

・呈示物を伴う場合等、オフラインでの実査が必要な場合は対象者数及び実査時間を制限することを推奨
※グループインタビューは基本、対象者3名以下+モデレーターの 計4名以下、実査時間1.5時間(換気タイム10分別途要)
\t

調査実施時の対策

・インタビュー会場内では密にならず接触させない対応を実施
 ※書記は別室またはリモート対応
 ※ルーム内はマスク着用+アクリルパーテーションで各人を囲む、会議室利用の際は席を離して利用
 ※呈示物は直接手渡しせず、各人トレーでの配布
 ※印刷可能な紙ベースの呈示物は開催毎に印刷、それ以外の呈示物はファイルに入れ、開催毎に消毒
・パーテーション内には各自自由に使用できるよう消毒スプレーと除菌シートを設置
\t・ルーム内はサーキュレーターを常時運転
・60分に1回2-3分程度の換気タイム

その他

・バックルームは弊社スタッフを含め5名まで。リモート見学を基本推奨

現在は来場型インタビューも行うようになっておりますが、コロナ禍のピーク時では定性調査は基本オンラインでの調査を推奨しておりました。画面越しのインタビューとなったことで来場型とは違うインタビュー技術が必要にはなりましたが、一方では自宅での状況を画面越しに見せていただきながらインタビューできる等、オンラインならではのメリットも生まれています。

まとめ

現時点では、少しずつ日常を取り戻しつつありますので、上記レギュレーションを緩和しながら状況や要望に応じた調査運営を行えるようになってきています。新しいシステムやツールを取り入れて進化していくことはもちろんですが、どんな環境下でも、目的や課題に応じた適切なリサーチデータを取得できることが調査としては最も重要なポイントです。弊社でも、これまでのフィールドワークの知見を活かした現場提案を今後も行っていきたいと思います。


【参考URL】
http://www.jmra-net.or.jp/notice/tabid140.html?itemid=842&dispmid=497&TabModule495=0

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