マーケティングリサーチ用語

PSM分析とは

 

PSM分析とは

PSM分析は、生活者の感覚から商品・サービスに対する受容価格帯を解析する分析手法です。
価格に対するアンケート調査結果から下限価格と上限価格、及びその間に存在する最適価格、妥協価格を導き出します。
新商品の市場導入価格の設定や既存商品の価格見直しの際、価格の受容性を探るのに適した手法と言えます。

 マーケティングミックス(戦略)において価格戦略は重要かつ難しい課題です。商品やサービスの価格については「価格弾力性」という言葉をよく耳にしますが、この価格の弾力性とは何を意味するのでしょうか。「価格弾力性=需要の変化率÷価格の変化率」と捉えられます。

下図のように商品Aと商品Bでは、商品価格の上昇に伴う販売数量の減少傾向は異なっています。この場合、商品の値上げによる販売数量への影響がより少ない商品Bの価格弾力性は低いと言います。逆に、商品価格の値上げが販売数量に大きく影響する商品Aは価格弾力性が高いと言います。

下図では商品価格と販売数量の関係を直線的な相関で描いていますが、実際は必ずしも直線的な相関をもつとは限りません。右図のように価格帯によって価格弾力性が変化する場合があります。

商品Aに着目すると、商品価格が50円~60円台では価格弾力性は低く販売数量に与える影響は極めて小さいようですが、70円台を超えると価格弾力性は高まり急激に販売数量が落ちていきます。どうやら価格帯によって購入者の心理的な抵抗感に違いがあるようです。


 このように、生活者の価格に対する複雑な受容構造を明らかにする解析手法が「PSM分析」です。新商品・サービスの市場導入価格の設定や既存商品・サービス価格の見直しの際に最適価格を見出すことができます。

PSM分析事例

 PSM分析は「PriceSensitivity Measurement」の頭文字で、生活者の価格に対する反応を測定し分析する手法です。生活者(当該商品購入者)へのアンケート調査により商品・サービスに対する以下のような4つの価格について質問し得られた回答データを分析します。

1.高すぎてとても手が出ないと思う(思い始める)価格
2.ちょっと高い(高いと感じ始める)と思う価格
3.ちょっと安い(安いと感じ始める)と思う価格
4.安すぎて品質を不安に思う(思い始める)価格

 回答は、商品特長やパッケージ、スペックなどの情報をより詳細に伝え、具体的な価格を数値データとして回答してもらうことが望ましいですが、これまでにない新しいコンセプトやカテゴリーの新商品であるような場合は、市場導入時の想定価格を含む選択肢をあらかじめ用意しておいた方が回答に外れ値が少なくなります。

 調査による回答データより下図のような累積度数のグラフ(「安すぎる」「安いと思う」は反転する)を作成し、グラフの交わる4つの交点から以下のような価格が導き出されます。

P:上限価格(「1.高すぎる」と「3.安いと思う」の交点)
→*どんなに品質や性能をあげても、これより高いと購入されない価格の上限を意味します。付加価値や限定性のある商品やこれまでにないカテゴリーの商品はこの価格での設定が可能となります。

Q:妥協価格(「2.高いと思う」と「3.安いと思う」の交点)
→*「これくらいはしょうがない」と生活者が妥協する価格を意味します。生活者がこのカテゴリーの商品ならいくらぐらい…と心理的な基準としている価格に相当します。トップシェアを占める商品価格に近くなります。

R:最適価格(「1.高すぎる」と「4.安すぎる」の交点)
→*生活者がこうあってほしいと思う理想の価格を意味します。生活者の「高すぎる」「安すぎる」といった心理的抵抗感が最小になる価格を指すからです。Qの妥協価格より少し安い価格に落ち着くケースが多く、商品の販売数量と利益のバランスが最適な価格設定です。

S:下限価格(「2.高いと思う」と「4.安すぎる」の交点)
→*これ以上価格を下げると品質に不安を感じ生活者が手を伸ばさなくなる価格の下限を意味します。普及品や量販店の特売価格はこの下限価格に設定すると販売量を最大化できます。ただし、販売数量は増えますが利益はさほど増えないので、売れれば売れるほど固定費が膨らむ商品には向きません。

PSM分析応用事例

ターゲットの性・年代別などのデモグラフィック特性別やメイン購入ブランド別にPSM分析を行ってみると、より細かな価格政策が可能になります。

関連コラム

デジタルマーケティングコラム
世界スマホシェア率を日本と比較|人気のOSやメーカーは?
アプリ開発企業のマーケティング担当者の中には、世界のスマートフォンシェア率が気になっている方もいるでしょう。人気のOSやメーカーなどに関して、世界全体と日本との傾向の違いを把握しておくことで、マーケティングに活かせる面もあるかもしれません。今回は、世界のスマートフォンシェア率に関して、日本と比較しながら解説します。 世界と日本のスマホOSシェア率 スマートフォンのOSはiOSとAndroidが、世界全体で大きなシェアを占めており、ツートップの状態です。日本においても、iOSとAndroidの2つのOSがシェアのほとんどを占めています。 ただ、iPhoneとAndroidのシェア率の割合に関しては、世界全体と日本で大きく異なるのが現状です。では、どのように異なるのか、世界と日本に分けてスマートフォンOSのシェア率を紹介します。 世界のスマホOSシェア率 世界のスマートフォンOSのシェア率は、Androidの方が高いのが特徴で、約7割程度のシェアを占めています。では、世界のスマートフォンOSのシェア率について詳細を解説します。 2024年のシェア率 2024年の世界全体でのスマートフォンOSのシェア率は、iOS(iPhone)が3割程度で、AndroidとiOSの割合は約7:3の比率です。(Android:71.6%、iOS:27.8%)また、iOSとAndroid以外に、一部のメーカーが独自に開発しているその他のOSもありますが、その他のOSのシェア率は非常に低く、0.6%にとどまっています。 2015年~2024年のシェア率 2015年から2024までのスマートフォンOSのシェア率の推移に関しては次のグラフの通りです。 世界全体でのスマホOSは、2019年まではAndroid、iOSともに増加傾向にあったもの、2015年からAndroidよりもiOSのシェア率が低い傾向に変わりはありません。2020年以降ここ5年間はAndroidとiOSの割合は約7:3の比率になっています。 出典:Statcounter Global Stats「Mobile Operating System Market Share Worldwide」 ...
# デジタルマーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム
これからの時代はZ世代マーケティングが重要!理由と手法を解説
Z世代は、多様な価値観を受け入れ、新しいトレンドに敏感な消費者層です。これからの消費市場を担う中心的な存在であるため、経営者やマーケティング担当者にとって、Z世代向けの効果的なマーケティング戦略を構築することは、ビジネス成長の鍵となるでしょう。今回は、Z世代マーケティングの基本戦略をはじめ、具体的な手法について紹介します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム
価値観が多様化する時代に企業は何を発信すべきか 大橋久美子氏が語るブランドづくりの新しいアプローチ(後編)
デジタル時代だからこそ、人間らしい価値がこれからのブランドを輝かせる 企業のブランディングにおいて、体験価値の設計や価値観の変化への対応が重要性を増している。しかし、企業の意図とユーザーの実態との間にギャップが生じるケースも少なくない。そうした課題に対し、アーキタイプの活用や段階的なユーザー理解などの、効果的なアプローチが注目されている。デジタル化が進展する中でも、人間的なコミュニケーションの価値はむしろ高まりつつあり、企業には社会課題の解決への積極的な貢献も期待されているという。これからの時代に求められるブランディングの在り方について、引き続き株式会社Stories of Japanの代表、ブランドストラテジスト・大橋久美子氏に話を聞いた。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム
価値観が多様化する時代に企業は何を発信すべきか 大橋久美子氏が語るブランドづくりの新しいアプローチ(前編)
機能から感情へ、日本企業に求められるブランド価値の再定義 商品やサービスの認知度を高めることが最優先だった時代から、企業の姿勢や社会的意義が問われる時代へ。ブランドとユーザーの関係性は大きく変化している。特に、SDGsを始めとした社会課題への向き合い方など、企業の本質が問われるようになってきた。一方で、日本企業は優れた製品やサービスを持ちながら、その価値を効果的に伝えきれていないという課題も浮き彫りになっている。こうしたブランディングにおける現状と課題について、博報堂、J. Walter Thompson Japan、LIFULLでの経験を経て、現在は株式会社Stories of Japanの代表を務め、日本企業のブランディングを数多くリードしてきたブランドストラテジスト・大橋久美子氏に話を聞いた。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム
リキッド消費とは?企業が得られるメリットやサービス例
消費に対する価値観が多様化するなかで、「リキッド消費」が注目されています。リキッド消費は比較的新しい概念で、モノを持たないことに価値を見出す消費行動です。 リキッド消費はなぜ広がっているのでしょうか。また、企業がモノを売るためにはリキッド消費をどのように活用すれば良いのでしょうか。 今回は、リキッド消費の概要やメリット、事例について紹介します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
デジタルマーケティングコラム
話題のBeRealはなぜ人気があるのか?特徴や注意点、ビジネス利用も解説
「BeReal」は、通知から2分以内に投稿しないと友人の投稿を見られない、写真の編集機能がないなどの特性があり、若者の間で人気のSNSです。 今回は、BeRealがなぜ人気なのか、主な特徴と支持される理由を紹介します。ビジネス展開のメリットもあわせて解説しているので、マーケティングをお考えの方は参考にしてください。
# デジタルマーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム
パン派・ごはん派の割合|身体に良い方はどっち?
日本の主食といえば、ごはんですが、パンを好んで食べる方が増えているのも事実です。実際は、パン派とごはん派のどちらが多いのでしょうか。また、体にとって良いのはどちらなのでしょうか。 今回は、パン派とごはん派の調査結果と身体に良い主食について紹介します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
デジタルマーケティングコラム
SNSのエンゲージメントとは?SNS別の確認方法や向上施策も紹介
最近では中小企業でも、流入チャネルを増やすためにSNS活用を始めるところが増えてきました。SNSの運用を成功させるためには、できるだけ多くのエンゲージメント(リアクション)を得ることが重要です。今回は、SNSにおけるエンゲージメントについて、確認方法や向上させるための施策を解説します。
# デジタルマーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム
マズローの欲求5段階説とは?ビジネスシーンにおける活用例も紹介
日常生活はもちろん、ビジネスシーンでも私たちはさまざまな欲求に突き動かされています。その欲求がどのように構造化され、どの段階で優先されるのかを理解するために、アブラハム・マズローが提唱した「欲求5段階説」は非常に役立つでしょう。今回は、マズローの欲求5段階説の概要を紹介しつつ、ビジネスシーンでの活用方法を詳しく解説します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
ご相談・お見積もり依頼
【法人・個人様】
フリーダイヤルでのお問い合わせ
0120-198-022
※ モニター様からのお電話でのお問い合わせは受け付けておりません。
資料ダウンロード