マーケティングコラム

マーケティングにおける行動変容とは?ステージ別のアプローチ方法を紹介

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売り上げを伸ばすには、消費者の行動変容を意識したアプローチが有効です。健康関連や人材教育の研修でよく耳にする言葉ですが、消費者の行動変容を知ることは、マーケティング戦略を立てる際にも役立ちます。今回は、マーケティングにおける行動変容の考え方を解説しながら、消費者の行動変容を促すコツやアプローチの仕方を紹介します。

 

マーケティングにおける行動変容とは

行動変容とは、人の意識が変わり、行動が変化していく工程です。マーケティングにおいては、商品やサービスに無関心だった消費者が意識を変え、購買し、継続利用するまでのプロセスを指します。

行動変容はもともと、禁煙を促す研究に端を発するモデルです。人の意識を5つのステージに分け、段階的にアプローチして禁煙した状態を長く維持するのを促します。

行動変容のステージモデルは、下記の通りです。

1.無関心期:関心がなく、6か月以内に行動を起こす意思のない状態
2.関心期:興味を持ち始め、6か月以内に行動を起こす意思が芽生えた状態
3.準備期:1か月以内に行動を起こす意思があり、購買準備を始めた状態
4.実行期:実際に商品やサービスを購買してから6か月未満の状態
5.維持期:実際に購買し、6か月以上利用や実践を続けている状態

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行動変容を促す手法は健康関連の啓発や企業の人材教育に取り入れられているほか、マーケティングにも活用されています。

業績を伸ばすには、消費者の意識や行動の移り変わりを理解したマーケティング戦略が必要です。消費者の意識がどのステージにあるかを分析し、最適なアプローチで行動変容を促しましょう。成功すれば消費者が自発的に購買に向けて動き出し、売り上げにつなげられます。

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【5つのステージ別】行動変容を起こすためのアプローチ方法

ここからは、各ステージの特徴や、消費者の意識にあわせたアプローチの仕方を解説します。各ステージの特徴を理解することで、より効果的なアプローチができるでしょう。

なお、消費者の行動変容は無関心期・関心期・準備期・実行期・維持期の順に進むとは限りません。場合によってはステージを上がったり、戻ったりしながら変化していくことを理解しておきましょう。

1.無関心期|「気付き」を与える

無関心期は自社が販売する商品やサービスを知らないか、知っていても関心を持っていない時期です。企業からのアプローチがなければ、購買に向けて動き出しません。そのため、無関心期に必要なのは気付きを与えるアプローチです。

商品やサービスに関する情報を与えて、メリットを伝えましょう。商品を購入して得られる効果に納得すれば、消費者のステージが上がります。現状のままでいる問題点やリスクを投げかけるのも、消費者の関心を引くのに有効です。

2.関心期|「動機付け」をする

関心期は商品やサービスの良さを理解し、心が揺れ動いている時期です。興味があっても購買意欲が固まっていない状態で、6か月以内に購買に向けて動きだす可能性がある一方で、興味を失ってしまう可能性もあります。

そのため、関心期に必要なのは購入動機を抱かせるアプローチです。行動変容を促すために、より具体的なメリットやさらなる情報を与えて購入を迷わせる不安を取り除きましょう。商品を利用している姿をイメージさせるのが、ステージを上げるポイントです。

3.準備期|「決定」を促す

準備期では購買意思が固まり、すぐにでも発注や申し込みをしようとしている時期です。この時期は自分でも商品のパンフレットを取り寄せたり、ネットで自発的に調べたりして購入意欲が高まっていますが、油断はできません。

準備期の消費者には、自発的な決定を後押しするアプローチが必要です。商品やサービスの購入で抱えている悩みや問題が解決できると具体的に伝えて、購入を促しましょう。他のユーザーの成功事例を情報として与えると、消費者も自分の意思決定に自信をもち、行動を起こしやすくなります。

4.実行期|「継続」を支援する

実行期は実際に商品やサービスを購入したばかりで、これから継続して利用していく時期です。ここでアプローチが途絶えると、消費者は利用を挫折する可能性があります。

実行期は、商品やサービスをどのように実行するか、継続するかに焦点を当てたアプローチが必要です。実行期の消費者は、行動を起こしても持続できるか不安やストレスを抱えています。商品やサービスの人気の高さ、実際のユーザーの成功例を伝えて、モチベーションアップをはかりましょう。

5.維持期|「逆戻り」を防ぐ

実行期は購入から6か月以上経過し、安定して商品やサービスを利用している時期です。しかし、些細なきっかけでステージが逆戻りする可能性があります。実行期と同じアプローチを継続して、モチベーション維持を目指しましょう。

継続に必要な援助やご褒美(インセンティブ)を与えるのも、維持期のモチベーション維持に役立ちます。逆戻りしたら、戻ったステージから再度アプローチをやり直してください。

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行動変容を促すのが難しい理由

適切なアプローチをすれば、消費者の行動変容を促せます。しかし、人の意識を変えるのは容易ではなく、ステージが逆戻りすることもあるのです。行動変容を促すのが難しいのは、人間が持つ下記の心理傾向が影響を与えています。

・現状維持バイアス
・同調性バイアス

それぞれを詳しくみていきましょう。

現状維持バイアス

現状維持バイアスとは、変化を避けて現在の状況を維持しようとする心理的な傾向です。

このバイアスが働くと環境の変化や新しい行動を受け入れにくくなり、行動変容が妨げられます。その背景には、「今の状態が安全である」という認識があり、無意識のうちに現状を維持しようとする心理が働くためです。

また、現状維持バイアスは、「選択的注意」と呼ばれる現象を引き起こします。これは、自分にとって都合の良い情報だけを取り入れ、変化を促す新しい情報を受け入れにくくする働きのことです。その結果、行動変容がますます困難になります。

同調性バイアス

同調性バイアスとは、周りの人にあわせて自分の意識や行動を調整しようとする心理的な傾向です。自分で意識を変えようとしても、自分が属する集団の施策や意思決定が優先されて行動変容が起こりにくくなります。

同調性バイアスは自分が属する集団と同じように考え、行動しようとするために起こります。「みんなと一緒」であるという安心感から、まわりと違う行動を促す情報を無視する傾向があり、行動変容が妨げられます。

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消費者の行動変容を促すコツ

マーケティングでスムーズな消費者の行動変容を促すポイントは、下記の通りです。

・ステージにあわせたアプローチをする
・購買を押し付けない
・良好なコミュニケーションを維持する

それぞれを詳しく解説します。

コツ1|ステージにあわせたアプローチをする

行動変容で消費者の意識をひとつ上に進めるには、ステージにあわせた適切なアプローチが必要です。購入させようと焦り、一足飛びにアプローチしても行動変容は促せません。

そのためにも重要なのが、消費者のステージの把握です。ステージは順番通りにステップを踏むわけではなく、逆戻りする場合もあります。消費者の意識をしっかり調査・分析して、マーケティング戦略を立てましょう。しかし、消費者の意識を正しく把握するにはノウハウが必要で、手間やコストがかかります。

コツ2|購買を押し付けない

行動変容を促すのに、購買を押し付けるアプローチは禁物です。やらされている感や強制は、消費者の反発心をあおります。押し売りのようなやり方でアプローチすると、逆効果になりやすいため気を付けてください。消費者を尊重するアプローチで、消費者の自発的な行動を促しましょう。

コツ3|良好なコミュニケーションを維持する

どのステージにいるか把握して適切にアプローチするには、消費者と継続してコミュニケーションを取る必要があります。信頼関係の程度によってアプローチの効果や効率が左右されるため、良好な関係を維持しましょう。

消費者と密に連絡を取っていればステージの逆戻りを早い段階で把握でき、アプローチし直して再度行動変容を促せます。

 

まとめ

行動変容とは、人の意識によって行動が移り変わる工程です。消費者の意識は、無関心期・関心期・準備期・実行期・維持期の5つのステージに分かれています。

マーケティングでは消費者の意識にあわせてアプローチしていく必要があり、消費者の行動変容を正しく把握しておくことは大切です。消費者との良好なコミュニケーションを維持しながら、適切なアプローチで自発的な購買を促しましょう。

なお、行動科学を応用したマーケティングには、消費者インサイトで深層心理を把握して購買を促す手法もあります。消費者インサイトを活用したマーケティングについては下記のコンテンツで詳しく解説しているので、あわせて参考にしてください。

消費者インサイトをマーケティングに活用するには?分析方法や活用事例を紹介

 

 

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