マーケティング戦略は、ターゲットとする消費者の属性や特徴に応じて変える必要があります。もっともわかりやすい要素が年齢や年代です。年齢によって心に刺さるワードや商品が異なるため、年代を切り口にしたマーケティング戦略は有効性が高いといえるでしょう。今回はミドル世代をキーワードに、ミドル世代の特徴や背景、マーケティングのコツなどを紹介します。
ミドル世代とは
ミドル世代とは、どのような世代を指すのでしょうか。ここでは、ミドル世代の定義について解説します。
ミドル世代の定義
ミドル世代は、ミドルエイジとも呼ばれます。辞書などで「ミドルエイジ」を引くと、40代～60代を指すと書かれていますが、転職市場では、30代中盤～50代中盤をミドル世代としているところもあります。一般的な認識としては30代後半～50代の方、ということになるでしょう。
全世界共通の明確な定義などは存在せず、調査をする時代や機関、企業によって微妙にずれが生じるというのが実態です。
学術的な定義
辞書に書かれた定義や世間一般の定義のほかにも、学術的な定義があります。学術的な定義は、提唱する学者によって解釈が異なります。
| 学者名 | ミドル世代の定義 | 提唱内容 |
| カール・グスタフ・ユング （精神科医・心理学者） |
36歳ごろから | 中年期を「人生の午後」と呼び、人生において重要な転換期であると位置づけた。 |
| ダニエル・レビンソン （心理学者） |
40歳～60歳ごろ | 成人期の中でもミドルエイジを発達の時期と位置づけ、人生を四季に例える「人生の四季」理論を唱えた。中年期は秋とした。 |
| エリク・エリクソン （心理学者） |
40歳～65歳ごろ | 人間の生涯における発達を8段階に分け、それぞれの段階における課題を示した「ライフサイクル」理論を提唱した。その第7段階を「成人期／壮年期」とし、次世代育成が課題だとした 。 |
概ね40歳前後～60歳前後という考え方だと理解しておけば良いでしょう。
ミドル世代の特徴と時代背景
ミドル世代はどのようなライフスタイルで、どのような趣味嗜好を持っているのでしょうか。ここでは、ミドル世代の特徴と時代背景について紹介します。
ミドル世代の特徴
ミドル世代の男性は、多くが家庭を持っています。また、年齢的にも会社で責任のある立場を任されている方も多く、一家の大黒柱として仕事に重きを置いた生活をしている方も多くみられます。
仕事では多くの重要事項の決定権を持っていても、家庭では消費に対する決定権を持っている方は少ないのも特徴です。そのため、消費活動は他の世代に比べると控えめという傾向がありますが、部下や上司を多数持っている世代でもあるため、飲み会やゴルフなど、周囲の方との付き合いにお金をかける傾向もあるようです。
50代以上の場合は、子どもが自立し始めるため、40代までよりも消費活動が活発になります。自由に使えるお金が増え、経済的にゆとりが出てくるため、量よりも質を重視した消費行動が多く見られます。また、健康を気にし始める年代でもあるので、健康に関する商品やサービスが目に留まりやすいのも特徴です。
一方で、ミドル世代の女性は、男性と同様に家庭を持っている方が多く、妻や母として家庭や子どもに責任をもって生活しています。そのため、多くは家計を任されており、日用品の買い出しから大型家電などの高額なものまで、全般的な消費の決定権を持っています。
積極的に自己投資をする傾向もあるので、美容や服飾、健康など多様なジャンルに関心があるのも特徴です。特に子どもが自立し始める50代以上では、金銭的なゆとりがあるので高価格帯の商品やサービスの消費を惜しまない方も多くいます。
ミドル世代の時代
2024年現在のミドル世代は、バブル崩壊後の不況の影響を受けている団塊ジュニアと呼ばれる世代（50歳～53歳）と、就職氷河期世代（42歳～54歳）が多数を占めます。
このミドル世代は、バブル崩壊後から続く長い経済停滞と、目まぐるしく変化する社会のなかで育ちました。急速に進むデジタル化によって、アナログからデジタルへの切り替えをダイレクトに経験した世代です。
仕事でもプライベートでも、否応なしにデジタル化しなければならない状態であったため、新技術への適応力に長けています。また、長く続く不況による雇用への不安も大きく、節約志向が高いのも特徴です。
ミドルエイジクライシスとは
ミドルエイジクライシスとは、ミドル世代が経験するメンタルの不調です。「第二の思春期」や「思秋期」といった名称でも呼ばれます。友人と横並びのライフステージであった若いころと比べると、ミドル世代は周囲の同世代の方との差が明確になってくる時期でもあります。
人生を振り返るなかで、自分のこれまでの人生が不完全燃焼であると感じ、メンタルが安定しなくなり、なかにはうつ病や不安障害などに悩まされる方もいます。
ミドル世代に向けたマーケティングのコツ
商品やサービスのマーケティング戦略や企画を考えるときは、世代の特徴などを意識する必要があります。ここでは、ミドル世代向けのマーケティングの重要なポイントについて紹介します。
ペルソナを設定する
マーケティングにおいて重要な要素のひとつが、ペルソナの設定です。ペルソナとは、売りたい商品やサービスを使う人物像のことで、なるべく細かく実際にいる方を想像して設定します。
ミドル世代と一括りにするのではなく、そのなかでも年代や性別、居住地、職業など細分化して考えるのがベストです。興味関心や趣味嗜好、家族構成まで細かく設定することで、適したマーケティング戦略が見えてきます。
また、設定したペルソナが、普段から情報収集に使っている媒体を調べるのも大切です。媒体ごとにどのようなユーザーが多いのかを分析するのもおすすめです。各媒体を使うメリットやデメリットを踏まえて、どの媒体で発信するのかを選定しましょう。
表現やデザインに注意する
ミドル世代のなかには、小さな字が見づらかったり、暗い配色だと認識しづらかったりする方もいます。そうしたミドル世代に対する広告で視認性を高めるには、全体的に明るい色を使って文字を大きく配置することが大切です。
見えづらい、読みづらいと感じる広告は、読むのが億劫に感じて購買につながりにくいため、視認性の高いはっきりとしたデザインにすると良いでしょう。また、専門用語はなるべく排除し、誰にでも理解できる簡単な言葉を選ぶこともポイントです。
ほかにも、行間を広くして文字を認識しやすくする、はっきりとしたフォントを選んで読みやすい字体にするなどにも気を付けましょう。グレーや黄色などの色は認識しにくい場合もあるため、なるべく使わないことも大切です。
インターネットやSNSも活用する
ミドル世代のインターネットの利用状況は、若年層とほとんど変わらず、13歳～59歳までで95％を超えています。
ミドル世代も当たり前にインターネットを利用するため、SNSやネットショッピングなどへの抵抗感もほとんどありません。SNSを使いこなすミドル世代が大半なので、SNSを使ったマーケティングも効果が期待できます。
ミドル世代は、インターネットと紙媒体の両方から情報を得る世代でもあります。新聞を購読している方もほかの世代に比べると多いため、オンラインとオフラインの両方の媒体で広告を打つのがベストです。
出典：総務省「令和５年通信利用動向調査」
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/data/240607_1.pdf
ミドル世代の子どもにもアプローチする
商材によっては、ミドル世代の子ども世代にアプローチするのも効果的です。ミドル世代のための商品であっても、接点がない場合は認識されません。そうした情報との接点がないミドル世代に情報を届けるのは、子ども世代です。
また、子ども世代が親のために使う、親のために買うという商材もあるでしょう。そうした商材の場合は、ミドル世代だけではなく子ども世代にアプローチすると、効果が発揮できる可能性があります。
まとめ
ミドル世代は、諸説ありますがおよそ40代前後～50代までの年代を指します。ミドル世代へのマーケティングは、ペルソナ設定を具体的に行い、インターネットや紙媒体の2つのパターンでアプローチすることが大切です。
広告を打つ場合は、視認性が高くはっきりと見やすいものを作りましょう。ミドル世代の目に留まり、心に刺さる広告を打つためには、ミドル世代が認識しやすい広告を適切な媒体で打つのがベストです。商材や対象者の年齢によってはミドル世代の子ども世代も巻き込み、的確なマーケティング戦略で商品やサービスの認知度を高めましょう。
