マーケティングコラム

有意差とは?確認する具体的な方法・マーケティングへの活用例を紹介

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ビジネスシーンでは、有意差という用語が用いられることが多くあります。有意差とは、データを統計的に解釈した場合に、意味のある差であることを示します。有意差を調べることで、データ上の差が偶然に発生したものなのか、何らかの意味があるものなのかを判断できます。今回は、有意差を検証できる事柄や確認方法を解説します。マーケティングへの活用例も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

有意差とは

     有意差とは、簡単にいうと「意味のある差」のことです。データ間の差が偶然やランダムに生じた差ではなく、統計的に意味のあるものと考えられる場合に「有意差がある」といいます。具体的には、収集したデータが偶然に発生する確率が、事前に設定した有意水準よりも小さい場合に、有意差があると判断されます。

有意差は、データ分析や研究において、データや仮説の信頼性を確保するために活用されています。ただし、データから有意差が認められないからといって、有意差がないとされるわけではありません。「有意差があるとはいえない」という範囲にとどまる点に注意が必要です。

有意差でどのようなことが確認できる?

有意差を用いることで、発生した差が偶然であるか、意味のあるものなのかということを検証することができます。

例えば、10%の確率で当たりが出るお菓子を100個買い、4個しか当たらなかったとします。有意差を確認することで、それが、確率的に許容範囲内で発生するものなのか、それとも当たりが規定数入っていない可能性があるのかを明らかにできます。

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有意差の確認方法

有意差を確認するためには、統計的手法によってデータを分析する必要があります。ここからは、有意差検定の流れを解説します。

仮説を設定する

最初に、帰無仮説と対立仮説を設定します。帰無仮説は、「有意差がない」ことを前提とする仮説で、対立仮説は、帰無仮説が成り立たないと証明した上で実証したい仮説です。

例えば、AとBの差を確認したい場合、まず「AとBに差はない」という帰無仮説が成り立たないことを確認し、「AとBには差がある」という対立仮説を検証します。

次に、有意水準を設定します。有意水準とは帰無仮説を却下するための基準です。有意水準は一般的に5%を用いますが、厳密に実施する場合には1%とすることもあります。

その後、適切な検定手法をもとに検定統計量を算出し、p値と比較します。

検定統計量とは、サンプルデータから算出される数値で、p値の計算に用います。p値とは帰無仮説が正しい場合に、データと同等もしくはそれ以上に極端な結果が出る確率のことです。p値が有意水準を下回った場合に、帰無仮説は却下され、有意差があると判定されます。

検定手法を選択する

有意差検定で用いられる検定手法には、大きくt検定とカイ二乗検定があります。

t検定は、母分散(母集団(統計対象となるすべての集合)における分散)がわからないときに、2つのグループの平均値を比較する検定手法です。母集団から抽出したサンプルデータ(標本)の平均値と標準偏差、サンプル数を用いて計算するt値を用います。比較的サンプル数が少ない場合に適する手法です。

カイ二乗検定は、カイ二乗値を用いて期待度数と実測度数を比較し、カテゴリカルデータにおける変数の関連性を判断する検定手法です。クロス集計において変数が独立しているかを判断する独立性検定と、観測データが理論的な分布と適合するかを判断する適合度検定があります。

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有意差を確認する具体例

簡単な有意差検定の例としてヨーグルト製造会社の内容量検査での活用例を紹介します。

内容量150mLのヨーグルトについて、正しい内容量が設定され、製造されているかを確認するための検査を行うとしましょう。

無作為に選んだ10個のヨーグルト(標本)に対し、「ヨーグルトの内容量は150mLに設定されている」を帰無仮説に、「ヨーグルトの内容量は150mLに設定されていない」を対立仮説として有意差検定を行います。

無作為に選んだ10個の容量が、143、145、152、150、146、151、147、151、146、149(mL)であったとしましょう。10個の平均(標本平均)は148mL、標本標準偏差は3.018mLになります。

平均値を扱うため、確率分布は正規分布を用います。母平均が150であることを前提(帰無仮説)とした上で、148という平均が得られる確率をもとに、有意差があるのかを判定します。

今回の例では、t値は約-2.096、p値が約0.0656と有意水準0.05を上回るため、「ヨーグルトの内容量は150mLに設定されている」という帰無仮説を否定できません。つまり、有意差が認められず「ヨーグルトの内容量は150mLに設定されている」と判定できます。

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有意差をマーケティングに活用できる例

有意差は、ビジネスにおいてマーケティングにも活用されています。具体的な活用例を2つ紹介します。

売り上げが悪いのは偶然か調べる

新商品を開発したものの売り上げが悪い場合、その事実だけで売れない商品と結論をだすことはできません。売れると仮定した条件が誤っているのではなく、その他の要因が影響して、たまたま売れなかったという可能性も考えられるからです。

売り上げが悪いのは偶然であるかを判断するためには、他の商品や他店の売り上げを調査して、結果に有意差があるかどうかを検証する方法が有効です。有意性があり偶然ではないことが確認できれば、適切な対策を講じる必要があることがわかります。

アンケート結果に偶然性があるかどうか調べる

有意差を使えば、アンケートの結果が偶然のものなのか、そうではないかを確認できます。

例えば、自社ブランドはコスパが良いと思うかどうかのアンケートを複数回実施し、1回目の調査では「コスパが良い」と回答した人が65%、2回目の調査では「コスパが悪い」と回答した人が57%であったとしましょう。

この場合、1回目でコスパが良いと回答した割合が高かったので、コスパが良いと考える人が多いと結論するのは適切ではありません。アンケートでは、回答データが偏る可能性があることを考慮する必要があるためです。

例えば、1回目の調査は、たまたまブランドに対して好意的な意見を持つ人が多く回答しているため、良い結果となったのかもしれません。

そこで、有意差検定を用いて、2つの調査結果の違いが偶然発生した偏りによるものなのか、それとも統計的に意味のあるものなのかを検証します。結果に偶然の偏りはないと判断されれば、そのアンケート結果は、統計的に意味があるものと判断できます。

立てた仮説の正誤を確かめる

有意差は、立てた仮説の正誤を確かめるためにも利用できます。

例えば、「商品Aは男性のほうが多く購入するだろう」と仮説を立てたとします。しかし、想定よりも男性の購入が少なかった場合、仮説が間違っていたのかを調べる必要があります。仮説の正誤を判断するには、男性の購入と女性の購入に有意差があるのかを検定することが有効です。

また、有意差を確認する際に調査対象をさらに細かくカテゴリ化すれば、さらに詳しい仮説検証が可能です。例えば、男性を年齢層別に分類して有意差検定を行えば、年代別の購入率に有意差があり、「20代男性の購入率が有意に高い」といった、仮説に含まれなかった要素が判明することがあります。

このように、有意差検定を行うことで、仮説は間違っていないものの不十分であることを確認できる事例もあります。

 

まとめ

有意差とは、統計的に意味のある差のことです。有意差を確認するには帰無仮説と対立仮説を設定し、データをもとに検定を行います。有意差を確認することは、データの信頼性を確保するために有効な手段で、マーケティングなどビジネスシーンでも多く活用されています。偶然に起こる影響を排除し、効果的な施策を行うために、有意差の検定方法をマスターしましょう。

 

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