リキッド消費とは?企業が得られるメリットやサービス例
消費に対する価値観が多様化するなかで、「リキッド消費」が注目されています。リキッド消費は比較的新しい概念で、モノを持たないことに価値を見出す消費行動です。
リキッド消費はなぜ広がっているのでしょうか。また、企業がモノを売るためにはリキッド消費をどのように活用すれば良いのでしょうか。
今回は、リキッド消費の概要やメリット、事例について紹介します。
リキッド消費とは
リキッド消費とは、2017年にイギリスのマーケティング学者によって提唱された消費の新たな形です。モノを持たない消費行動で、モノへの執着や特定のブランドへの愛着が薄くなっている現象を表しています。
リキッド消費は、流行によって次から次へと移り変わるので短命的なのが特徴です。また、モノの所有権の移動がなく、サービスの利用が消費となるケースも増えています。
さらに、現代の消費者は、モノ消費よりもコト消費を重視する層が増えています。リキッド消費は、モノの所有に囚われない新しい消費の形として、消費者の中に根付きつつある概念です。
対照となるソリッド消費との違い
リキッド消費とは対照的な特徴をもつのが「ソリッド(固体)消費」です。ソリッド消費は従来型のモノを所有する消費を指します。ソリッド消費は、モノを購入して所有するのが特徴です。また、一度手に入れたモノは、壊れるまで長期にわたって使用します。
かつてはモノをどれだけ所有しているかが豊かさの象徴であったため、ソリッド消費が一般的でした。しかし、時代の流れやITの普及とともに消費者の価値観が多様化し、リキッド消費が拡大傾向にあります。
リキッド消費とソリッド消費の特徴は下記の通りです。
リキッド消費 | ソリッド消費 |
儚さ:商品との関係が短く刹那的であること | 永続的:商品へ愛着や忠誠心を持つこと |
アクセスベース:取引において所有権の譲渡がないこと | 所有的:商品をより多く所有したいと思うこと |
脱物質的:商品の有形性に無頓着になること | 物質的:商品の有形性に執着すること |
リキッド消費が広がっている背景
リキッド消費はなぜ拡大しているのでしょうか。ここでは、ソリッド消費からリキッド消費に移り変わりつつある背景について解説します。
デジタル化が進んでいるから
デジタル化が進み、誰もがスマートフォンやPCを扱える環境になったことがリキッド消費拡大の要因です。情報デバイスを所持していれば、いつでも情報を得ることができ、新しい商品やサービスなどの情報への感度も高まります。
また、スマートフォンやPCの普及にともなってデジタル技術が発達し、音楽のストリーミング再生や電子書籍サービスがリリースされるようになりました。これにより、CDや書籍などのモノを所有せずとも楽しめるようになっています。
実店舗に足を運んでモノを購入する手間や、保管する場所の確保などが必要なくなり、誰でも手軽にコンテンツにアクセス可能です。
コト消費の傾向が強まっているから
従来型のモノ消費よりも、体験などを重視するコト消費の傾向が強くなっていることもリキッド消費拡大の要因です。特に若い世代の中で、車やブランドバッグなど高価格帯のモノを所有することに興味をもたない人が増えてきています。
維持費や管理の手間などを考慮して、購入し所有することよりも、レンタルしたり他人とシェアしたりするサービスのほうが受け入れられるようになりました。また、製品のライフサイクルも短くなっており、消費者は移り気になりがちで す。必要なモノがあればレンタルで済ませ、経験・体験のほうを重視するようになっているのです。
環境意識が高まっているから
最近は環境保全意識が高まっており、サステナブルを重視した消費をする方も増えてきました。モノを所有することはいつか廃棄することになり、廃棄物の処理が環境への悪影響につながるという考えも浸透しています。
本当に自分に必要なモノだけを所有し、長く大切に使おうとする意識が、リキッド消費の拡大を後押ししています。特に、他人とシェアしたり中古品を購入したりできるサービスは、環境意識が高い若い世代の利用が他の世代よりも多い傾向にあります。
リキッド消費で企業が得られるメリット
リキッド消費に対応することで、企業にはどのような効果が得られるのでしょうか。ここでは、リキッド消費が企業にもたらす3つのメリットを紹介します。
顧客を獲得しやすい
リキッド消費は、ソリッド消費に比べると消費のハードルが低いのが一般的です。サービスや商品のお試しなどの一時的な利用を促すプロモーションには、消費者が手を出しやすいという利点があります。
そのため、新規顧客を確保しやすく、ライト層を幅広く獲得することが可能です。リキッド消費は、モノを購入するよりも安価で利用できるケースがほとんどですが、高価格帯の商材でも新規顧客獲得の手法として適しています。まずは安価で体験してもらい、その後購入につなげるというビジネスモデルも実現可能です。
体験というコト消費を重視する層は、体験することでその商材への興味や愛着が生まれます。その後のアプローチで購入につながれば、中長期的に顧客を育てることも可能です。
不良在庫を抱えない
モノを売るビジネスでは、在庫を置くスペースの確保や品質保持など、在庫管理にコストがかかります。
一方、リキッド消費に対応する商材の場合、モノを売るわけではないので在庫を抱える必要がありません。服やバッグ、おもちゃ、家具や家電などのサブスクリプションサービスであれば、レンタル分の在庫だけで運営できるため、不良在庫のリスクが低くなります。
現在、不良在庫を抱えている場合は、それを活用してリキッド消費のサービスを展開することで、新たなビジネスにつなげられるかもしれません。
事業として成立しやすい
リキッド消費は、手数料が売上になるビジネスです。莫大な初期投資が不要で、参入障壁が低く、事業として成立しやすいという特徴があります。
事業開始後、システムのメンテナンスやレンタル業におけるモノのクリーニングなどの維持費を賄えれば、事業の継続は比較的容易です。事業が軌道にのれば、初期投資のみで中長期的な利益を得られる可能性があります。
さらに、定期的なメンテナンスや効果的な広告宣伝により、安定した収益が見込めます。需要があるものなら何でもビジネスにつなげることが可能です。
リキッド消費の主なサービス例
リキッド消費には、具体的にどのようなサービスがあるのでしょうか。ここでは、リキッド消費の主なサービス例を3つ紹介します。
サブスクリプションサービス
サブスクリプションサービスは、リキッド消費の代表的なサービスです。消費者は月額や年額で料金を支払い、サービスや製品を利用します。商材としては、動画や音楽配信など無形のものから、家電やバッグ、洋服、花など有形のものまで多岐にわたります。
一式揃えると高額になってしまうものや、定期的な買い替えが必要なものなどは、サブスクリプションサービスのニーズが高くなります。
経営を安定化させるためには、消費者の継続性が重要です。ユーザーの満足度が下がらないよう、提供するサービスやモノを充実させるとともに、割引や特典を効果的に打ち出すなどの施策も必要となります。
シェアリングサービス
シェアリングサービスは、個人や企業が所有しているモノや場所を共有するサービスです。このような仕組みで成り立っている経済は、シェアリングエコノミーと呼ばれています。
車やキックボード、自転車など乗り物から場所、アイテム、能力までさまざまなシェアリングサービスがあります。購入するとそれなりの投資が必要になるモノは、シェアリングサービスを使いたいというニーズが高く、リキッド消費時代ならではの商機を生んでいるといえるでしょう。
リユース・リサイクルサービス
リユース・リサイクルサービスは、ユーザー同士が不要なものを販売したり購入したりできるサービスです。アプリ上で仮想のフリーマーケットができるアプリが登場してから、多くのユーザーが不用品の売買を行っています。
スマートフォンひとつで手軽に利用できるフリーマーケットのアプリができたことで、不用品を売るという行為の裾野が広がりました。これにより、人々のモノの買い方に変化が生まれています。将来的に売ることも視野に入れて新品を購入する、という人が増えているのです。
脱物質的なリキッド消費の意識が、リサイクル・リユースサービスの活況を支えています。
まとめ
リキッド消費は、モノを所有しない新しい消費の形です。デジタル技術の発展を背景に、環境意識の高まりや体験型消費の人気などが原動力となり、従来型のソリッド消費よりもリキッド消費に意識を向ける消費者が増えています。
リキッド消費は、今後ますます拡大が予想されます。有望なビジネスシードを発見できれば、新規のビジネス展開が可能でしょう。