マーケティングコラム

オンラインインタビューならではの特性と注意点 ~来場型インタビューとの違い~

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ここ数年のコロナ禍の影響で定性調査のスタイルが大きく変化しました。その代表的な手法としてあげられるのはオンラインインタビューです。対象者とマンツーマンで話を掘り下げていくアプローチ自体は、従来の来場型インタビューと同じですが、実施にあたってはオンラインならではの特性と注意点があります。今回は来場型インタビューとの違いという観点から、オンラインインタビューの特性と実施する際の注意点をお伝えしていきたいと思います。

オンラインインタビューとは…

オンラインインタビューとは、zoomなどのインターネットテレビ電話システムを利用した定性調査サービスです。オンラインにおいても来場型インタビューと同様に、複数名の座談会形式か1対1のインタビュー形式か、目的や意図によって手法を選択することができます。

来場型(オフライン)インタビューとの違いとして最も顕著なのは、「会話の間(タイミング)のとり方」や「ペーシング(場のリズム)のとり方」にあります。

画面越しではどうしても微妙なタイムラグが生じます。オフラインでの間(タイミング)よりも、もう一呼吸おく必要があるように思います。オンラインインタビューにおいて、「声を出すリアクション」というのは会話が重なった場合、不必要な雑音にしかなりません。

そのため、インタビュアーは無音でのうなづきや表情によってリアクションをとることとなります。話す速度、声の大きさ・高低、あいづちやうなづきの頻度・タイミングなどを用いて場のリズムをマネージメントする「ペーシング」というスキルがありますが、インタビュアーはオンライン用にそのスキルを変化・対応させる必要が生じました。

オンラインインタビューのメリット

それでは、オンラインインタビューのメリットとは何でしょう。来場型ではないオンラインだからこそのメリットがいくつかあります。

1. 首都圏にかぎらず全国どこでも対象に

ネット環境さえあれば、全国の対象者にインタビューすることができます。これまでは出張費用が必要だった地域限定のインタビューもオンラインで実施可能ですし、リクルート難易度の高い対象条件でも、首都圏だけでなく全国に拡大することで比較的容易となります。

2. これまでアプローチしにくかった対象者にも容易に

交通機関を利用して来場するという手間がなくなるので、妊娠中の方や乳幼児のいる方、介護中の方など、従来協力をとりつけにくかった方々へのインタビューが容易になりました。その他、専門家ヒアリングや企業担当者へのBtoBインタビューも、オンラインを活用することで許諾がとりやすくなったように思います。

3. 複数拠点から実査をモニタリングできるように

インタビューの対象者だけではなく、インタビューをモニタリングする環境にも変化がありました。場所に制限がなくなったことで、移動時間をとられることなく仕事の合間にモニタリングすることも可能ですし、海外や地方オフィスの方々も手軽にご視聴いただけます。

4. 早い段階でラポール形成がしやすい

専用会場といったいつもと違う環境で実施することによる緊張感を伴う来場型よりも、自宅で気軽に参加できるオンラインインタビューは、早い段階でラポール形成がしやすいように思います。初対面の人に打ち明けるにはハードルが高いと思われるプライベートな内容でも、画面というフィルターを通すことで匿名性を感じられ、打ち明けることへの抵抗感が軽減されているのかもしれません。
また、生活空間でお話しすることで、テーマに関わる普段使用品(例えば食器類やウエア等)を見せてもらえることも可能です。こちらも画面がフィルターとなり、気安く呈示していただけることが多いように思います。

このように、来場が難しかった方もネットがつながるデバイスさえあれば、どこからでも参加・モニタリングできるようになったメリットがある一方、インタビュアーの視点からみると、来場型インタビューとは明らかに異なるデメリットもあります。


20220826_02

オンラインインタビューのデメリット

来場型インタビューと異なり、対象者の全身状態(画面以外のボディランゲージ)を把握できないことが、オンライン上でのデメリットの1つといえると思います。

会話の中にみえる、本音を話しているかどうかを判断するための、躊躇やとまどい、困惑のサインといったボディランゲージなど、言葉以外の多くの定性情報がオンラインでは把握しにくくなっています。画面越しで「目を合わせる」という行為が難しいことも本音を探る点でネックとなっていることは否めません。その点、来場型インタビューの方がリアリティもあり顕著でわかりやすいです。

オンラインインタビューを実施する際の注意点

このような特性があるオンラインインタビューを実施するにあたって、注意しておくとよい点がいくつかあります。

注意点1:調査環境としての整備・コントロールの難しさ

最も注意すべき点は、オンラインインタビューでは対象者の参加環境を管理することができない、という点です。

専用会場で実施する来場型インタビューでは、インタビューに集中できる空間と時間を用意することができます。防音設備で他から干渉されない空間になっているため、インタビュー中も気が逸れないように整えた環境でお話を聞くことができます。室内環境も、温度や湿度を管理した快適な空間で、余計な情報が入らないようなシンプルなインテリア空間となっています。

しかし、オンラインインタビューでは、対象者自身が好きな都合の良い場所でインタビューを受けることができるため、調査環境としては適していない場合もあります。自分の書斎や居室・寝室といった個室であれば問題はないのですが、リビングダイニングなど家族共有の空間で参加される方も少なくありません。特に、主婦層の場合は、ほとんどの方がリビングダイニングから参加されます。

その場合、インタビュー時間内に家族が室内に入ってきたり、途中でインターフォンや電話が鳴ったりすると、集中がとぎれてしまい、せっかく盛り上がっていた話も続きません。画面の裏側に家族がいたり、隣の部屋に家族がいて聞こえるのではないかと不安だった、ということも珍しくありません。

また、デザイン評価がテーマの場合、周辺にいろいろな対照物があるかもしれないという点は念頭に置いておくべきでしょう。対象者自身が現使用品やテーマに関連する商品類を持ち込むことはよくあるので、対照されたくないときは、あらかじめ「見えない場所に隠しておいてください」等と注意しておく必要があります。

めったにないケースですが、従来のインタビュー環境としては考えられない場所からの参加もありえる、という点は要注意です。事前に「自宅から参加する」旨は確認していても、カフェやシェアハウスの共有スペースでインタビューに参加された対象者がいました。通信環境が発達したことで色々な場所ともつながれるという点は、発想を変えればメリットにもなりえる点だとも感じます。

このように、オンラインでは聴取環境をこちら側から完全にコントロールすることができないことを前提にしつつ、ある程度望ましい環境は担保すべく事前に環境や状況を十分に確認しておくことが必要となります。

注意点2:通信環境・設備の事前確認

当然のことながら、オンラインインタビューでは、対象者の通信環境・設備の確認は基本です。

通信環境に関しては事前に必ず確認を行います。現在はWifi環境を整えているご家庭も多いのですが、部屋の場所によって通信環境が不安定になる場合もあるので、事前に当日インタビューを行う部屋から接続確認を行っておくことが必要です。

保有機器に関しても同様です。スマホしか持っていない方も少なくはありません。呈示物の関係でできるだけ大きな画面を用意してほしい場合は、こちらから画面サイズの大きいデバイス機材をお送りする場合もあります。

このような通信環境・設備に関しては、事前に確認しておけば特に問題になることはありません。


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注意点3:対象者自身のネットやツールに対する経験レベル

加えて注意しておいた方がいい点として、対象者自身のネットやツールに対する経験レベルです。
機材やツールの操作に関しては、年代が高くなるにつれて苦手意識を持つ方が多くなります。こういった方々に負担感を持たれないように、事前にわかりやすく端的に説明し安心しておいてもらうことも大切です。

また、照明や位置によって表情が写りにくくなってしまうこともよくあります。その場合はインタビュアーがその場で指示を出し調整することが必要です。

オンラインインタビューに必須の実査サポートチームという存在

最後に、オンラインインタビューの環境を維持・管理しているのはインタビュアーではないことをお伝えしたいと思います。

来場型インタビューと同様に、オンラインインタビューにおいても、オンライン環境を維持コントロールする実査サポートチームが画面外・オンライン上に存在しています。そのチームは、当日の実査進行において、対象者のオンライン接続を誘導したり、インタビュー中に何かあった場合に備えて待機しています。対象者の通信状態や画面状態を常時モニタリングしているので、必要な際にはインタビュアーに裏側から指示を出しています。

あってはいけないトラブルですが、接続環境の問題でインタビュアーの回線がいきなり落ちたことが過去にありました。その際、控えていたスタッフが即座に登場して、再接続までの数分間、場をつないだこともあります。

このように、インタビュアーはあくまで表側で当日のインタビューの進行管理のみを行い、その裏側で実査サポートチームがオンライン環境を事前に確認・準備し、録画・録音管理を行っています。実査サポートチームと役割分担をし、当日のインタビューがスムーズに実施できるよう維持・コントロールすることで、オンラインインタビューが成り立っているということを知っておいていただけたらと思います。

まとめ

オンラインインタビューはオンライン環境ならではの特性と注意点があります。来場型インタビューとは環境面で異なる情報取得方法となることは念頭に置いておいた方がよいでしょう。しかしながら一方で、オンラインが一般的になったことで気軽にインタビューを実施できるようになったのも事実。今回指摘した注意点は事前にある程度対処しておけます。オンラインとオフラインの特性の違いを理解しておくと、目的・意図に合ったインタビュー手法を選択しやすいでしょう。


【参考URL】
http://www.jmra-net.or.jp/activities/conference/20200728r_001.htm
https://www.nlpjapan.org/nlpword13.html#:~:text=ペーシングとは、相手の,を合わせていきます。

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