サービス受容性確認からプログラム評価、ローンチまでプロジェクトをご支援 親子1,000組のリクルートや、0-2歳児親子へのインタビューなども柔軟に対応
国内約2,300会場で音楽教室を運営する一般財団法人ヤマハ音楽振興会(以下、ヤマハ音楽振興会)は、お客様とオンラインでつながり、リモートでサービスを提供する新たなビジネスモデル「オンライン専科開発プロジェクト」を推進しています。今回は、そのプロジェクトの一環で2つのオンラインレッスン開発に尽力された4人のキーマンに、クロス・マーケティングとの取り組み内容をうかがいました。
ご相談企業様のご紹介
- ヤマハ音楽振興会
「すべての人がもっている音楽性を育み、自ら音楽をつくり、演奏し、楽しむことの出来る能力を育て、その音楽の歓びを広くわかちあう」を理念として、国内約2,300会場で音楽教室を展開。そのスケールは生徒数約30万1,000人、講師約9,500人、累計卒業生は550万人以上にも及ぶ。また、海外においても40以上の国と地域で活動を行うなど、国境や言語を超えて音楽という芸術・文化の振興と向上に努めている。(2023年10月現在)
事業企画開発部 第1開発グループ
事業企画開発部 第2開発グループ
事業企画開発部 第2開発グループ/管理設計グループ
プロジェクト概要
マーケティング課題
「オンライン専科開発プロジェクト」における受容性の確認、仮説の検証、及びプログラム評価
ソリューション
定量及び定性調査の企画、実施及び分析レポートの提供∟低年齢児向け音楽レッスンについて
∟シニア向け音楽レッスン「リズムdeリフレッシュ」について
プロジェクトにおける成果
- 低年齢児向け、シニア向けと受容性を確認でき、プロジェクトを進めることができた
- 低年齢児向け、シニア向けともに仮説を検証し、プログラム開発に活かすことができた
- 2つのプログラムのローンチに結びつき、その後のプログラム改良もスムースに進めることができた
Interview
このプロジェクトには仮説を正しく検証できる質の高い調査分析が不可欠だった
――「オンライン専科開発プロジェクト」についてお聞かせください。
森田様 ヤマハ音楽振興会は、豊かな人間性を養う音楽に関する教育活動や音楽文化の普及を推進して広く社会教育に役立てることを目指しています。中でも音楽文化の普及という観点では、これまでは音楽教室というリアルの場でのサービスが主体だったところ、今後を見越してオンラインでサービスを提供するべく、新たなビジネスモデルの開発を進めています。それがオンライン専科開発プロジェクト発足の目的です。その手始めに取り組んだのが、「低年齢児向け音楽レッスン」」と「シニア向け音楽レッスン」という2つのオンラインレッスンの開発でした。
――まず、低年齢児向け音楽レッスンについてご紹介ください。
桐生様 本サービスは、0~2歳児のお子さまと保護者の方を対象にした、ヤマハ音楽教室の講師による音楽を五感で楽しめる、約30分のオンラインレッスンです。音楽を使った親子の遊びを提案し、おうち時間を音楽で楽しく過ごしていただけるオンラインレッスンの配信と、サイト上の動画提供の2本立てになっており、2022年12月から2023年6月まで多くのお客さまにご利用いただきました。現在はリニューアル準備のため一旦サービスを休止しています。
――開発の目的は何だったのでしょうか。
森様 開発当時は、コロナ禍により外出もままならない状況でした。お子さまのためにおうち時間を充実させたい、何かしてあげたいと願う保護者の方へ、音楽で何かできることはないか、とチームで検討した結果、0~2歳を対象とした音楽レッスンの開発をスタートしました。
――もうひとつの「シニア向け音楽レッスン」である「リズムdeリフレッシュ」についてもご紹介ください。
田山様 本サービスもオンラインレッスンと配信動画を組み合わせた新しいサービスです。対象は50歳以上のシニア世代とし、楽器経験がない方でも無理なく楽しんでいただけるプログラムです。全身、手指、声を使ったエクササイズは脳トレ効果も期待できると好評です。ご自宅でいつでも視聴できる動画に加え、一流のインストラクターによる多彩なライブレッスンを月4回行います。他に類を見ないユニークな内容をご提供し多くのお客さまにご利用いただいています。
――開発目的もお聞かせください。
田山様 人生100年時代になり、健康寿命に関心が集まる中で、日常に音楽を取り込んで明るく健康な毎日を過ごしていただく方を増やしたい、音楽を使って心身共にリフレッシュしていただきたいと考え、アクティブシニア向けに最もフィットするようプログラムを組み立てました。
――こうしたサービスの開発時に行うマーケティングリサーチについて、これまで何か課題があったのでしょうか。
森田様 新しいサービスを開発する際には、プロジェクトごとに調査会社に依頼して、受容性を調査するようにしています。しかしその方法では相互にデータを共有することができず、調査・分析のやり方を見直す必要があると感じていました。また、お客さまのお悩みを解決できるサービスを開発する上では質の高い調査分析、特に仮説の検証が必要でした。それが正しくできなければサービス提供の軸がブレてしまうからです。
田山様 「リズムdeリフレッシュ」の対象となるシニアは一人ひとり経験や価値観も異なるので、音楽という趣味の世界でターゲットをどこに絞るかが非常に難しいテーマでした。多くの方々に納得いただけるようなプログラムを作るには、ターゲットに対しヒアリングを行うことでニーズを正しく引き出せるマーケティング会社が必要でした。
ニーズを素早く汲んで、自分達と同じ目線で的を射た提案が受けられそうだったのが決め手に
――クロス・マーケティングを選ばれた理由についてお聞かせください。
森田様 優れたリサーチ力を有している会社だと感じたからです。弊会のニーズや意見に対する、営業担当者やリサーチャーの“聞く力”が高く、対応も早かったのが印象的でした。何度か打ち合わせを重ねる中で、弊会のニーズを素早く汲んで、自分達と同じ目線で的を射た提案をいただけそうだと次第に思えるようになりました。
0-2歳を含む親子1,000組をリクルートしてのオンラインアンケートなど、前例のない調査を実施
――低年齢児向け音楽レッスンについてどのような調査を行ったのでしょうか。
森田様 合計4回の調査を実施しました。1回目は、乳幼児向けオンラインレッスンの受容性確認です。2020年末頃にクロス・マーケティングがリクルートした約1,000組の親子を対象として、アンケートによる定量調査を行い、家庭での過ごし方や、音楽に対する保護者の考えなどをうかがいました。
森様 まず保護者の方の想いを知るために、普段の子育てで大切にしていること、満足していること、課題と感じていることなどをお聞きし、並行して音楽プログラムを受講する場合どういったお子さまの反応・成長を期待するのかお聞きしました。
こんなことを感じている親子にはこのような音楽プログラムが提供できるかもしれないという仮説を立ててサービスを開発していきました。
以前はアンケート結果全体を見て判断していたのですが、今回は各設問の相互関係が数値で「見える化」が可能になったのでとても分かりやすく感じました。
クロス・マーケティング(以下、CM) 棚谷 設問の素案はヤマハ音楽振興会で作成いただき、それを要件定義とヒアリングした内容を基に弊社で整理・統合の上、ブラッシュアップしてアンケートを作成しました。その結果をクロス集計することで、興味の方向性や満足度などを一気通貫で確認していきました。
森田様 2回目は、2021年3月に実施したパイロット版レッスンの受容性確認と評価です。
30分のプログラムを作る前に、試験的に3つほど体験版のコンテンツを用意しました。クロス・マーケティングがリクルートした0~2歳児の親子、合計6組にオンラインでご参加いただき、体験後にご意見やご感想をうかがいました。結果は、当初想定していたよりもポジティブな内容だったので非常に安心しました。
CM 澁谷 1回目の調査からわずか1ヵ月後に、オンラインで親子向けの体験イベントを開催したいというアイデアを貴会からいただいた時は、スピード感と積極性に驚き、パイロット版の完成度も高かったためその実行力にも舌を巻きました。
森田様 3回目は、サービス開始前のレッスン評価です。
クロス・マーケティングにはこのサービスの最大定員と同じ20組の親子を集めていただき、30分のレッスン終了後にアンケートにお答えいただきました。ポジティブな意見と同時にいくつかの課題も確認できたため、サービスの完成度を高める意味でも大きな収穫となりました。
4回目は、改良プログラム評価です。
クロス・マーケティングが抽出した一般のお客様に、数ヶ月間継続してご利用いただく体験調査を2023年1月~3月に実施しました。開発当初の仮説とずれがないか、現状の運営にご満足いただけているか、将来的なヤマハ音楽教室への継続利用につながるのかなどを検証することが目的でした。
――「リズムdeリフレッシュ」のマーケティングリサーチでも引き続きクロス・マーケティングにご依頼をいただきました。継続された理由をお聞かせください。
田山様 低年齢児向け音楽レッスンでの調査内容は概ね知っていたので、その調査・分析能力を高く評価していました。調査目的も共通していたので「リズムdeリフレッシュ」にも大いに活用できると考えました。
――調査内容についてお聞かせください。
田山様 2023年4月~8月に改良プログラム評価を行いました。
50歳~75歳のモニターを10名集めていただき、受講の申し込みから、料金のお支払い、自発的なプログラムの視聴と実践、コース終了後の退会の手続きまで、モニターご自身で行っていただきました。それにより、よりリアルな感想やご評価を聞き出せると考えたからです。皆さん嗜好が様々に異なるためプログラム選びに苦労したり、毎日受講いただけない方もいらっしゃったりするなど課題も浮き彫りになりましたが、予想外に「歌うプログラム」がご好評をいただくなど、今後のコンテンツ作りやターゲット設定に役立つ貴重な情報をたくさん得ることができました。
CM 棚谷 この調査では、シニアの方に音楽と接点を持っていただく入口として「リズムdeリフレッシュ」がしっかりと機能していることや、シニアの方がプログラムに挑戦されることで達成感を得られていること、生活習慣や健康状態にポジティブな変化が確認できたことなどなどを確認しました。予想以上に収穫の多い調査になったと感じています。
モニターごとに満足度と継続意向を「見える化」することでレッスンの内容を見直し
――クロス・マーケティングの支援後、得られた効果についてお聞かせください。
桐生様 集計や分析に非常に丁寧に取り組み、分析結果を分かりやすくまとめてくださったので、今後改善すべき部分が明確になり、大変参考になりました。また、低年齢児向け音楽レッスンのプログラムに参加された保護者の方からは「わが子が歌を歌えるようになった」とか、「リズム感が発達していくのがわかった」、「良い生活リズムを作ることができた」などのリアルな声をうかがうことができ、お子さまの成長や保護者ご自身のお悩み解消に役立てられたことを何よりうれしく思いました。
田山様 提出いただいた報告書は、モニターごとに満足度と継続意向の推移をグラフで「見える化」してあり、その動きの背景にある受講状況や理由などを把握できるものになっていたので、満足度と達成感は必ずしも一致しないことが分かり非常に新鮮に感じました。それによりサービス内容の見直しが必要となりましたが、講師が行うプログラムの構成や重点の置き方などを再検討するヒントを得られたと思っています。
生活者視点の専門家ならではの客観的なものの見方に今後も期待
――今後、「オンライン専科開発プロジェクト」はどのように発展させるご予定でしょうか。
森田様 ヤマハ音楽振興会では、2024年にヤマハ音楽教室が開設70周年を迎えるのに併せて、ヤマハ音楽教室やオンラインプログラムなど従来のサービス品目を統合し、新しい領域でブランド再生をしていく計画です。「リズムdeリフレッシュ」は今後も提供してまいりますが、「低年齢児向け音楽サービス」のリニューアルも視野に入れているところです。
――クロス・マーケティングのご評価と、今後への期待についてお聞かせください。
森様 難解な専門用語を使わず、弊会と同じ視点に立ち、分かりやすい言葉で弊会の取り組みに沿ったご提案をいただけるので、長くお付き合いできる信頼できる会社だと思っています。
また、現在弊会では構造改革を進めていることもあって多くの施策が同時並行に進んで過密状態にあります。そんな中、例えば10のうち全て説明しなくても1か2を説明するだけで全体を把握され、11の提案をいただけるほど洞察力にも優れていると感じています。
今後もそうしたご対応をお願いしたいと思っています。
森田様 クロス・マーケティングとは既に数年のお付き合いになり、弊会をより深くご理解いただけるようになりました。今後も生活者視点の専門家ならではの客観的なものの見方や総合的な判断をいただけるよう強く期待しています。
CM 溝口 今回のプロジェクトをご支援させていただく中で、貴会が「音楽文化や音楽の楽しさを社会に浸透させていく」という理念や決意に全くブレがないことに感銘を受けました。私自身も「音楽とは、やらされるものではなく楽しむもの」として付き合ってきたこともあり、こうしたプログラムが生まれる現場に立ち会えたことを非常に幸せに感じています。今後も長くお付き合いいただく中で、貴会の音楽を通じた豊かな社会づくりに貢献できるよう、チーム総力を挙げて伴走させていただきます。