マーケティングリサーチ用語

ポートフォリオ分析とは

 

 

ポートフォリオ分析とは

商品・サービス、店舗などの総合満足度に与える個別の評価要素(店員の対応、品揃え、~等々)の影響度の強さは均等ではありません。
自社の顧客の満足度を形成する要素を構造的に把握・分析してこそ施策が打てます。
ポートフォリオ分析は、要素ごとの総合満足度に寄与する影響度を相関の強さから分析することで、効率的な顧客満足度の向上施策を可能にします。

 多くの企業様が顧客満足度の向上に取り組んでおられると思いますが、商品の仕様・デザイン、価格、接遇対応、アフターサービス等々、対応すべき要素は多岐に渡ります。商品やサービスを全般的に捉えて、すべての要素を向上させることに努力することが商品・サービスを供給する企業の使命であるとお考えではありませんか。当然のことながら企業の戦略として、商品やサービスのすべての要素において顧客満足度ナンバーワンを目指すという方向性はありますが、限りある経営資源を効率的に活用するという視点からマーケティングミックス(戦略)を捉えれば、自社の商品・サービスに対する顧客満足度を構造的、数量的に把握し、顧客満足度(CS)分析を行うことが重要となります。

 顧客満足を構成する要素(商品・サービスの機能やデザイン、価格、等々の個別の評価項目)が総合的な顧客満足度に与える影響は均一ではありません。商品やサービス、店舗のカテゴリーや販売形態などによって異なりますし、ターゲットの性別や世代などのデモグラフィック属性の違いによっても異なる可能性もあります。故に、顧客満足度(CS)の分析においては、自社の商品・サービスに対する顧客の満足度を形成する重要な要因とその個々の要因がもつ総合満足度への影響度を構造的に把握できなければなりません。ただ単に総合満足度がどの程度「高い(低い)」、個別の評価項目(要素)の満足度がどの程度「高い(低い)」という結果のアウトプットだけでは、施策に活かせる情報は限られたものと言わざるを得ません。

 顧客の商品・ブランドや店舗、サービスに対する満足度(CS)を分析する手法は様々ありますが、ここでは評価項目の相関度(顧客満足度の向上に対する影響度の強さ)と総合満足度の関係についてポートフォリオ分析を行うことによって、商品や店舗、サービスのどのような要素(総合満足度=目的変数に対する個別評価=説明変数)に注力すれば効率的に総合満足度を向上させることができるのかを明らかにします。

 このことにより、闇雲に商品や店舗、サービスのすべての要素の改善に努めるのではなく、現状の評価を踏まえた上で、改善すべき要素を絞り込み効率的に経営資源を投下できるような施策が可能になります。

ポートフォリオ分析事例

 以下は、あるスーパーマーケットに対する顧客満足度(CS)分析を行った結果のアウトプットイメージを示しています。9項目の個別項目と総合的な満足度について、それぞれ5段階評価(「1.満足」「2.やや満足」「3.どちらとも言えない」「4.やや不満」「5.不満」)で回答してもらった結果を集約しました。満足度率は、「満足」または「やや満足」と答えた対象者の割合で、相関係数は総合満足度に対する単相関を算出しています。 【アウトプットイメージ:ポートフォリオ分析】

【アウトプットイメージ:ポートフォリオ分析】


 結果をみると、このスーパーに対して総合的には45%の顧客が満足していますが、積極的な評価が5割を超えていないところは改善の余地が大いにあるように思われます。では、どのような点を改善していけばよいのか。個別の評価をみていきましょう。満足度率が5割を超えているのは「惣菜が美味しい」(55%)、「品揃えが豊富」(50%)で、これらについては評価されているようです。逆に評価が低いのは「従業員の対応のよさ」(10%)、「品切れが少ない」(15%)、「陳列が見やすい」(25%)で、改善の必要性の高い項目となっています。

 また、総合満足度との相関の強さをみると、「価格が手頃」(0.721)、「品切れが少ない」(0.685)、「惣菜が美味しい」(0.624)、「生鮮品が新鮮」(0.608)といった項目の相関係数が0.6を超えており、関係性が強いように見受けられます。逆に「従業員の対応がよい」(0.238)、「店舗が明るい」(0.286)といった項目の相関係数は0.3に満たず、総合満足度を向上させるには、さほど影響力を持たない項目であることがわかります。

 ここで、満足度率と相関係数の関係をよりわかりやすくするために、縦軸を満足度率、横軸を相関係数にとり、個別の9つの評価項目をプロットしてみました。ポートフォリオ分析では、以下のようにそれぞれの象限を位置づけ施策の優先順位を決めていきます。 (※4つの象限は、満足度率と相関係数の平均値を交点とする2つの直線によって区分されます。)

①重点改善項目(右下の象限)
・総合満足度を高めるための影響度が強い(相関係数が高い)のに満足度が低い。優先的に改善対応することで、総合的な満足度を効果的に高められる。

②重点維持項目(右上の象限)
・総合満足度を高めるための影響度が強く、現状の満足度も高い。現状の満足度をある程度獲得しているため、一見このままでよいように思えるが、サービス水準の維持を怠ると大きく総合満足度を下げる可能性があるため積極的に維持していくべき項目。

③改善項目(左下の象限)
・総合満足度を高めるための影響度が弱く、現状の満足度も低い。ここの満足度を向上させても総合満足度への影響力が低いため効率はよくない。

④維持項目(左上の象限)
・総合満足度を高めるための影響度は弱いが、現状ある程度の満足度は得られている。極端なサービス水準の低下を招かない程度の維持を心がける項目。

ポートフォリオ分析

ポートフォリオ分析


 以上の結果から、このスーパーでは右下の象限に位置する「品切れ」への改善対応が喫緊の課題であり、そのための施策が求められていると言えます。

 また、重点維持項目に位置している「生鮮品の新鮮さ」、「レジの処理速度」などの満足度水準についても、まだまだ高められる余地が大きいと思われるので、積極的な維持向上策が有効でしょう。さらには、総合満足度に対する影響度が強くはない「従業員の対応」ですが、極端に低い満足度水準は問題ありとみて、現状の平均程度の満足度率を獲得することを目標に施策を打つ必要もあります。

ポートフォリオ分析の応用事例

 ここでは、顧客満足度(CS)分析におけるポートフォリオ分析の事例をご紹介いたしておりますが、以下のような課題に対しても有効な分析が行えます。

・商品やサービスの購入意向・利用意向を高めるための要素を抽出し、効率的な販売・利用促進施策立案に向けた課題/優先順位を明らかにする。
・企業好感度やブランドイメージを高めるための要素を抽出し、効率的な企業・ブランドキャンペーン施策立案に向けた課題/優先順位を明らかにする。

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