マーケティングリサーチ用語

ディシジョンツリー分析とは

ディシジョンツリー分析とは

ディシジョンツリー分析はデータマイニング手法の代表的手法です。
複雑で多岐に渡る生活者行動・意識から商品やサービスの購入・利用に影響の強い要因を分類して影響の強いものから「樹形図」と呼ばれるツリー構造の枝として分析結果が表現されます。

 ゲーム理論の「ゲーム木(game tree)」が原形と言われているディシジョンツリーは、1950年代に統計学者のエイブラハム・ワルドが統計学自体を「統計家」と「不確実性」のゲームとして捉え、統計的決定理論の体系化に取り組んだ際にゲーム理論とベイズ統計学の統合的アプローチを試みたところから導入され、意思決定の「決定」や命題判定の「選択」、事象の「分類」などを多段階で繰り返し行う際、その分岐の判定ごとに階層化して樹形図(tree diagram)として描き表すグラフ表現、構造モデルとして広く用いられています。

 決定理論におけるディシジョンツリーは、意思決定者が取り得る選択行動と相手(不確実性)の発生確率(主観確率)の分岐が多段にわたる際、これら分岐点を階層化して描き起こり得るすべての結論とそれぞれの期待値を算出し、期待効用が最大となる選択の経路(戦略)を求めるもので、データマイニングにおけるディシジョンツリーと表現のモデル構造は同じですが、分析の目的や意味は異なります。

 ここでは、生活者の購買行動に強い影響力をもつ要因を探索するデータマイニング手法としてのディシジョンツリー分析についてご紹介します。データマイニング手法としてのディシジョンツリー分析の活用範囲は広く、さまざまな業種、業態で利用されています。例えば、顧客別の購買履歴から自社の製品を購入している顧客の特徴を分析したり、金融機関の取引履歴から顧客属性別の貸し倒れリスクを測ったり、機械の動作ログから故障につながる指標を見つけ出したりといったことに有効的に活用されています。具体的には「樹形図」と呼ばれる樹木状のモデルを使って何らかの結果が記録されたデータセットを分類することで、目的となる結果に影響を与えた説明要因(原因)を分析し、そのモデル結果を利用して将来予測や今後取るべき戦略施策の検討を行います。

 ディシジョンツリー分析の分析対象は、ビジネス上の結果や購買履歴、ユーザー評価などの何らかの結果が記録されたデータとなります。そのようなデータセットには、分析の対象となる結果(ex.ある商品の購入有無等)とその原因となっていると予測される属性(ex.性別、年代、職業等)や行動・意識(ex.来店頻度、満足度評価等)が対になって記録されている必要があります。

 ディシジョンツリー分析では、このようなデータセットを結果とその属性、行動・意識に着目して逐次分割することで分析モデルを作成していきます。このデータセットの分割は、分割後のそれぞれのデータセットにおける結果の適合度が高くなるようなアルゴリズムで行われます。この分割時の結果の適合度の判定については、分析のアルゴリズムによって異なった基準が定められていますが、基本的な考え方は同じ結果のデータはできるだけ同じノード(枝分かれ)に行くように分割することです。

 例えば、ある商品の購買有無が分析対象の結果であれば、分割後のデータセットの一方には購入者のデータがより多く集まり、もう一方には非購入者のデータが多く集まるような属性と値を見つけ、その値でデータセットの分割を行います。

ディシジョンツリー分析アウトプット事例

 ディシジョンツリー分析によって導出された分析モデルを具体的に見てみましょう。下図は、ある商品の分析結果を示した樹形図です。「商品の購入有無」をメーカーや商品評価など多岐に渡る質問項目から影響の強さを分析しています。

 この結果から判断すると、この商品の購入決定には「安心感」を持ち「品質の良さ」へ満足することが強い影響力を持つようです。また、「安心感」が持てなくても「立地条件」が良ければ購入率を高める要素となり得ることも分かりました。今後のターゲット設定や訴求ポイントにこの2つの要素をどう絡めていくが重要と思われます。

ディシジョンツリー分析応用事例

 ディシジョンツリー分析が活用される代表的なビジネスシーンは、以下のようなものが挙げられます。

1.流通業、外食産業、金融サービス、EC・デジタルコンテンツ産業等リテール向け
 ①優良顧客の判別(顧客セグメンテーション)
 ②商品/サービス購入要因の把握(ロイヤリティの向上策)
 ③商品/サービス離脱要因の把握(離脱防止策)
 ④顧客の嗜好/選択基準の把握(ターゲティング)
 ⑤来店客予測/供給量調整(人員計画・在庫管理)

2.通信サービス業、工業製品製造業
 ①通信障害/機器故障原因の把握(サービス・生産効率の向上)
 ②不良品発生要因の把握(不良品コストの低減)
 ③不良品発生率の予測(生産計画の精度向上)

関連コラム

マーケティングコラム
ディシジョンツリー分析の手順とビジネスへの適用処理
ビジネスでは、顧客の動向や商品の購買データなどを分析して、今後のビジネス活動に有効な情報を採掘するデータマイニングが頻繁に使われます。データマイニングをするための分析方法にも種類がありますが、分析方法が明確で、結果に至るまでの過程も理解しやすいという点で優れているのがディシジョンツリー分析です。意思決定に必要となる情報を分析していく過程を樹形図として書き記していくという方法で、決定木分析と呼ばれることもあります。手順を正しく理解しデータ結果を活用することで、商品開発やサービスの改善などに役立てることができます。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
データマーケティングコラム
データマイニングの目的とおすすめな分析手法
年々ITが発展し、文字や映像、音声など膨大なデータが企業に集まっています。その膨大なデータから有益な情報を発掘する技術がデータマイニングです。まだ知られていないパターンや法則性など役立つ情報を得るため、様々な分析手法によるデータマイニングが行われています。
# データマーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
デジタルマーケティングコラム
世界スマホシェア率を日本と比較|人気のOSやメーカーは?
アプリ開発企業のマーケティング担当者の中には、世界のスマートフォンシェア率が気になっている方もいるでしょう。人気のOSやメーカーなどに関して、世界全体と日本との傾向の違いを把握しておくことで、マーケティングに活かせる面もあるかもしれません。今回は、世界のスマートフォンシェア率に関して、日本と比較しながら解説します。 世界と日本のスマホOSシェア率 スマートフォンのOSはiOSとAndroidが、世界全体で大きなシェアを占めており、ツートップの状態です。日本においても、iOSとAndroidの2つのOSがシェアのほとんどを占めています。 ただ、iPhoneとAndroidのシェア率の割合に関しては、世界全体と日本で大きく異なるのが現状です。では、どのように異なるのか、世界と日本に分けてスマートフォンOSのシェア率を紹介します。 世界のスマホOSシェア率 世界のスマートフォンOSのシェア率は、Androidの方が高いのが特徴で、約7割程度のシェアを占めています。では、世界のスマートフォンOSのシェア率について詳細を解説します。 2024年のシェア率 2024年の世界全体でのスマートフォンOSのシェア率は、iOS(iPhone)が3割程度で、AndroidとiOSの割合は約7:3の比率です。(Android:71.6%、iOS:27.8%)また、iOSとAndroid以外に、一部のメーカーが独自に開発しているその他のOSもありますが、その他のOSのシェア率は非常に低く、0.6%にとどまっています。 2015年~2024年のシェア率 2015年から2024までのスマートフォンOSのシェア率の推移に関しては次のグラフの通りです。 世界全体でのスマホOSは、2019年まではAndroid、iOSともに増加傾向にあったもの、2015年からAndroidよりもiOSのシェア率が低い傾向に変わりはありません。2020年以降ここ5年間はAndroidとiOSの割合は約7:3の比率になっています。 出典:Statcounter Global Stats「Mobile Operating System Market Share Worldwide」 ...
# デジタルマーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム
これからの時代はZ世代マーケティングが重要!理由と手法を解説
Z世代は、多様な価値観を受け入れ、新しいトレンドに敏感な消費者層です。これからの消費市場を担う中心的な存在であるため、経営者やマーケティング担当者にとって、Z世代向けの効果的なマーケティング戦略を構築することは、ビジネス成長の鍵となるでしょう。今回は、Z世代マーケティングの基本戦略をはじめ、具体的な手法について紹介します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム
価値観が多様化する時代に企業は何を発信すべきか 大橋久美子氏が語るブランドづくりの新しいアプローチ(後編)
デジタル時代だからこそ、人間らしい価値がこれからのブランドを輝かせる 企業のブランディングにおいて、体験価値の設計や価値観の変化への対応が重要性を増している。しかし、企業の意図とユーザーの実態との間にギャップが生じるケースも少なくない。そうした課題に対し、アーキタイプの活用や段階的なユーザー理解などの、効果的なアプローチが注目されている。デジタル化が進展する中でも、人間的なコミュニケーションの価値はむしろ高まりつつあり、企業には社会課題の解決への積極的な貢献も期待されているという。これからの時代に求められるブランディングの在り方について、引き続き株式会社Stories of Japanの代表、ブランドストラテジスト・大橋久美子氏に話を聞いた。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム
価値観が多様化する時代に企業は何を発信すべきか 大橋久美子氏が語るブランドづくりの新しいアプローチ(前編)
機能から感情へ、日本企業に求められるブランド価値の再定義 商品やサービスの認知度を高めることが最優先だった時代から、企業の姿勢や社会的意義が問われる時代へ。ブランドとユーザーの関係性は大きく変化している。特に、SDGsを始めとした社会課題への向き合い方など、企業の本質が問われるようになってきた。一方で、日本企業は優れた製品やサービスを持ちながら、その価値を効果的に伝えきれていないという課題も浮き彫りになっている。こうしたブランディングにおける現状と課題について、博報堂、J. Walter Thompson Japan、LIFULLでの経験を経て、現在は株式会社Stories of Japanの代表を務め、日本企業のブランディングを数多くリードしてきたブランドストラテジスト・大橋久美子氏に話を聞いた。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム
リキッド消費とは?企業が得られるメリットやサービス例
消費に対する価値観が多様化するなかで、「リキッド消費」が注目されています。リキッド消費は比較的新しい概念で、モノを持たないことに価値を見出す消費行動です。 リキッド消費はなぜ広がっているのでしょうか。また、企業がモノを売るためにはリキッド消費をどのように活用すれば良いのでしょうか。 今回は、リキッド消費の概要やメリット、事例について紹介します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
デジタルマーケティングコラム
話題のBeRealはなぜ人気があるのか?特徴や注意点、ビジネス利用も解説
「BeReal」は、通知から2分以内に投稿しないと友人の投稿を見られない、写真の編集機能がないなどの特性があり、若者の間で人気のSNSです。 今回は、BeRealがなぜ人気なのか、主な特徴と支持される理由を紹介します。ビジネス展開のメリットもあわせて解説しているので、マーケティングをお考えの方は参考にしてください。
# デジタルマーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム
パン派・ごはん派の割合|身体に良い方はどっち?
日本の主食といえば、ごはんですが、パンを好んで食べる方が増えているのも事実です。実際は、パン派とごはん派のどちらが多いのでしょうか。また、体にとって良いのはどちらなのでしょうか。 今回は、パン派とごはん派の調査結果と身体に良い主食について紹介します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
ご相談・お見積もり依頼
【法人・個人様】
フリーダイヤルでのお問い合わせ
0120-198-022
※ モニター様からのお電話でのお問い合わせは受け付けておりません。
資料ダウンロード