マーケティングコラム

STP分析で得られるメリットとは。やり方と実施時の注意点を解説

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株式会社みらいマーケティング本舗 代表取締役

堀野 正樹

「経営者の右腕」として企業のECビジネス支援、ブランディングやWebマーケティング代行業務を行う。「マーケティング設計図」「ブランドストーリー」「発注力強化」から構成される独自メソッドを実践。上場企業から中小企業まで十数社に対するマーケティング支援実績あり。
マーケターとして約20年の経験があり、メーカー勤務時代にはマーケティング責任者として7年間で売上を3.5倍の70億円に成長させた実績を持つ。
企業が新商品やサービスを展開するうえで、自社の特長やその製品の市場における立ち位置を明確にしておくことは、マーケティング戦略において非常に重要となります。その際に活用できるのが「STP分析」です。今回はSTP分析をビジネスで活用する際のメリットや注意点について解説していきます。

STP分析とは

「STP分析」とは、市場におけるマーケティング活動を効率的に行うための分析フレームワークです。

STP分析はマーケティング論で有名なフィリップ・コトラーが提唱したもので、「S」はSegmentation(セグメンテーション)=「市場の細分化」、「T」はTargeting(ターゲティング)=「狙うべき市場の決定」、「P」はPositioning(ポジショニング)=「自社の立ち位置の明確化」をそれぞれ指します。この3つの観点から、自社の新商品やサービスの市場価値を把握し、マーケティング戦略につなげていくのです。

ここでは「S」「T」「P」それぞれについて解説します。

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セグメンテーションとは

「セグメンテーション」では、膨大な市場顧客をいくつかの切り口でグループに細分化します。それにより各セグメントのニーズを明確にできるのと同時に、市場の全体像を把握することができます。主要な指標として、年齢、性別、世代構成、家族人数など、人が持つ基本情報を基本にした「人口統計的変数」、居住地域など地理的な要因に絡む情報が基礎になる「地理的変数」、人の志向やライフスタイル、性格的特性など個々の心理状態に根差した情報を使う「心理的変数」、買い物をする動機や頻度、購買パターンなど個人的意識や行動に関する情報を分析する「行動変数」の4つがあります。

ターゲティングとは

「ターゲティング」では、自社が狙うべき顧客層を絞り込んでいきます。このとき、「市場規模は十分か」「自社の強みが発揮できるか」「将来性はありそうか」など多角的に分析することが重要です。

また、セグメンテーションの結果と組み合わせることで、以下3つのマーケティング手法のうち、どれに適しているのか把握することができます。

・無差別型
セグメントされた市場の違いにかかわらずすべての市場に供給する手法でユーザー数が多い消費財や食品などに適している

・差別型
セグメントされたそれぞれの市場に対し、料金設定や機能性を変えて商品販売を行う手法

・集中型
1つもしくは限定的な市場に集中してマーケティングを行う手法で、特に規模やリソースが小さな企業やニッチな商品を持っている企業が得意分野に集中して展開する際に使われる

ポジショニングとは

「ポジショニング」では、競合他社との位置関係のなかで独自性のある立ち位置を見つけます。自社の商品やサービスが競合他社と比べてどう違うのかをわかりやすく差別化し、顧客にとって魅力的な商品だと認知してもらうために欠かせないプロセスです。

具体的には、「ポジショニングマップ」と呼ばれる2軸のマトリクス図を使い、自社の立ち位置を分析します。マトリクス図の縦軸と横軸に値段・品質・店舗数・販売チャネルなどの軸を設定し、自社と競合他社を当てはめることで、自社が優位になるポジションを見つけ出すことができます。このとき、大切なのが感覚で判断せずにデータにもとづいて分析することと、軸となるデータを増やしすぎずシンプルに分析することです。

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STP分析を実施する目的

STP分析を行う目的は「市場と競合を理解して自社の差別化ポイントを明確にする」ことです。
ビジネスにおいて、自社が勝てるポジションや強みを発見することは非常に大切です。自社目線だけでサービスや商品を作り出した場合、市場ニーズとはかけ離れたひとりよがりな訴求になってしまいがちです。

そこでSTP分析を行い、市場を正しく理解して競合他社と比較したうえで自社の独自性を明確にします。そうすることで、市場の中で有利なポジションに立ち、事業の拡大につながる可能性が高まるのです。

STP分析を活用するメリット

STP分析を行うメリットの代表例を3つ紹介します。

顧客ニーズや市場への理解を深められる

STP分析を実施する過程では、市場顧客をいくつもの切り口から細分化して分析し、全体像を把握することが必要です。その結果、「どのような属性の顧客がどれくらい存在し、どういったニーズを持って消費行動を行っているのか」などを具体的に理解できるようになります。

顧客ニーズや市場への理解を深められると、より具体的な顧客像をイメージしてビジネス展開できるので、利益アップにつなげやすくなります。これからビジネスモデルを構築していく場合にも有用です。

自社商品・サービスの強みを明確にできる

STP分析を活用すると、自社商品・サービスの強みを明確にできます。市場分析で把握できた具体的な顧客像や市場のニーズを踏まえて、自社の商品・サービスの特長やアピールすべきポイントなどを整理できるからです。

自社商品・サービスの強みを理解できていると、商品を投入すべき市場や積極的にプロモーションすべき対象などを判断しやすくなります。できる限り他社との競合を避けて、ニーズの高い市場に商品やサービスを展開したい場合は、特にSTP分析が役立ちます。

有効なマーケティング戦略を立てられる

有効なマーケティング戦略を立てられるようになる点も、STP分析を行う大きなメリットです。マーケティングの効果を高めるには、「どの対象に対し、どのような方法でアプローチするか」が重要です。STP分析を行えば、購買意欲の高い顧客像や有効なアプローチ方法を具体的に把握できます。

また、STP分析によって自社の商品・サービスの特長や他社と比較した優位性なども分析できるので、購買・利用を後押しできるマーケティングを実現できます。

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STP分析のやり方

STP分析は、下記の4ステップで進めます。

STEP1.実施目的を明確にする
STEP2.分析に必要な情報を集める
STEP3.STP分析を実施する
STEP4.分析に基づいてマーケティング戦略を検討する

各ステップについて、詳しく説明します。

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STEP1.実施目的を明確にする

手始めに、STP分析を実施する目的を明確にしておきましょう。あらかじめ実施目的を明確にしておくことで、目的達成に沿うように効率的に分析を進められるためです。

実施目的が明確になっていない場合、どこに重点を置くべきかわからなくなったり、社内で意見が割れたりする可能性があります。

実施目的には、目標とする販売数・利益・顧客数など、具体的に数値化できる指標を採用するようにしましょう。

STEP2.分析に必要な情報を集める

実施目的が定まったら、STP分析に必要となる情報をできる限り準備しておきます。分析できる情報が豊富であるほど、精度の高い分析結果を得られるためです。ただし、情報収集に時間をかけ過ぎては、なかなか実施目的を達成できず本末転倒になりかねません。ある程度の期間を区切って、情報収集しましょう。

分析で主に必要なのは、「顧客」「競争環境」「自社の強み・弱み」に関する情報です。

まず「顧客」に関しては、アンケートやヒアリングを通して、ニーズや自社の商品・サービスの評価などを把握します。

次に「競争環境」については、競合他社の市場シェア率・特長や戦略・選ばれる理由やブランドイメージなどの情報が有用です。また、今後の新規参入の有無についても調べておきましょう。

最後に「自社の強み・弱み」としては、自社商品の特長や売上・市場シェア・資本力・投資能力といった保有リソースに加え、「企業理念」や「ビジョン」を把握します。

STEP3.STP分析を実施する

情報を収集できたら、分析を進めていきましょう。分析にあたっては、「市場の細分化」「狙う市場の決定」「自社の立ち位置の決定」の3つの工程を実施します。

3つの工程は必ずしも順番に進める必要はないため、スムーズに分析が進まなくなったら、途中でも次の工程に取りかかってみるなど、柔軟に対応しましょう。ここでは各工程のポイントを解説します。

市場の細分化

市場の細分化とは、セグメンテーションの工程のことです。細分化する一般的な手法として、4つの変数を使う方法があげられます。

4つの変数とは、人工統計的変数・地理的変数・心理的変数・行動変数です。実施目的に合わせてこれらの指標を適宜組み合わせ、市場の構成や顧客の属性・ニーズなどを細分化して分析します。

なお、細分化をするときは4Rの原則を満たすように意識すると、スムーズに分析を進められます。ここでの4Rとは、Rank(優先順位)・Realistic(有効性)・Reach(到達可能性)・Response(測定可能性)です。

狙う市場の決定

狙う市場の決定(ターゲティング)では、市場の細分化によって把握できた情報を踏まえて、マーケティングの対象とする市場を絞り込みます。絞り込みに当たっては、ニーズの有無・市場の成長度合い・競合の有無などに着目し、できるだけ自社が有利に立ち回れる市場を選ぶことがポイントです。

なお、市場は1つに絞り込まずに複数目星をつけ、事業の成長や競争力強化の度合いに応じて、段階的にターゲットを変えていく方法も効果的です。

自社の立ち位置の決定

自社の立ち位置を決定するポジショニングでは、ポジショニングマップなどを用いて、自社の商品やサービスを他社とどのように差別化していくかを考えます。立ち位置を検討するにあたり、他社商品の価格・特長・優位性といった動向や、自社商品の特長や目指すべき方向性を踏まえることが大切です。

また、立ち位置を決定した後も、市場や競合の変化に応じて随時ポジショニングの見直しを行うことで、利益アップにつながる場合があります。

STEP4.分析に基づいてマーケティング戦略を検討する

分析結果がまとまったら、STEP1で決めた実施目的に沿うように、マーケティング戦略を検討していきましょう。具体的には、「どのような商品やサービスを、どれくらいの価格で、どのような流通経路で販売するのか」「プロモーションはどうするのか」を決める必要があります。

マーケティング戦略を策定するときは、「実際に実現可能かどうか」を念頭に置いておくことが欠かせません。分析結果を踏まえた最適な戦略を立てることのみにこだわり、費用や人的リソースなどの面で対応が難しい戦略になってしまっては意味がないためです。

STP分析を実施するときの注意点

STP分析を目的の達成につなげるためには、分析実施時に注意すべき点が3つあります。

STP分析に固執しすぎない

STP分析だけでなく、そのほかの手法も合わせて取り入れると、より精度の高い効果的なマーケティングができます。STP分析と併用できるフレームワークの代表例は下記の通りです。

6R分析 【併用する効果】
分析の偏りをなくし、ターゲット選定の精度を高められる
【概要】
6Rとは、下記6つの指標の頭文字から取ったもの
・Realistic scale(有効な規模)
・Rank(優先順位)
・Rate of growth(成長率)
・Rival(競合)
・Reach(到達可能性)
・Response(測定可能性)
ペルソナシート 【併用する効果】
顧客像を具体化するのに役立つ
【概要】
ペルソナの年齢・職業・思考・ライフスタイルなどをまとめられるシート
ビジネスモデルキャンバス 【併用する効果】
ビジネスモデルをわかりやすく整理できる
【概要】
ビジネスモデルを下記9つの項目から整理する
・提供価値
・顧客
・顧客との関係構築方法
・チャネル
・コスト
・収益
・リソース
・タスク
・協業パートナー

順番にこだわらない

STP分析では、各分析内容が連動するため、必ずしも「S→T→P」の順に分析しないといけないわけではありません。スムーズにいかないときは、ほかの工程を優先させ、効率的に分析を進めましょう。

市場が適切か考慮する

STP分析では最適だと結論づけられた市場も、規模感などによってはそもそも自社が狙うのに適していないことがあります。分析を鵜呑みにせず、自社が本当に狙うべき市場かどうかを必ず検証しましょう。

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STP分析を活用した企業成功事例

STP分析をうまく活用すると、競合他社との差別化ポイントを見極めることができ、自社の優位性を打ち出すことができます。ここではSTP分析を活用した成功事例を紹介します。

マクドナルド

ハンバーガーチェーン「マクドナルド」の強みは、特定の年齢や層ではなく老若男女をターゲットにできる規模感と知名度、オペレーションの圧倒的な効率化、利便性の高い立地条件です。それにより価格をリーズナブルに設定することができ、気軽に何度も来店してもらうことができています。「あらゆる顧客層に対し、低価格かつ早く提供できる」という独自のポジションを実現できている好事例だといえるでしょう。

トヨタ「レクサス」

トヨタ自動車が販売する高級ブランドの「レクサス」が米国市場に進出した際、選んだセグメンテーションは「所得」「エリア」「世代」でした。かつて高所得者が選ぶ車の代表格といえば伝統的な価値観を持つドイツの高級車でしたが、レクサスは自由なライフスタイルを好む西海岸の30〜40代の高所得者をターゲットに「クールで高い機能性」「カジュアルに乗れる高級車」というイメージを強く打ち出すことで一気に大成功を収めました。

まとめ

STP分析は、自社製品のセールスを行う際に市場の全体像や狙うべき市場、競合他社との差別化を明確にするフレームワークです。顧客のニーズや自社製品の強みを把握することもでき、プロモーション施策を考える土台づくりにも役立ちます。実施する際にはユーザー目線を持つこと、データ収集やリサーチなどの事前準備をしっかりと行うこと、STP分析だけで完結させず他のフレームワークも併用することを忘れないようにしましょう。

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