マーケティングコラム
3C分析とは?分析時の注意点や実際の活用例を紹介
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中小企業診断士/MBA/魅力発信ブランディングコーチ
株式会社アイリスプランナー代表取締役
外資系ブランドで27年のマーケティングの経験からマーケティング専門の経営コンサルタントとして、
クリニックや起業家250社以上の経営戦略・マーケティング支援・オンラインビジネス化をサポート。
奥野 美代子
3C分析とは
3C分析とは、マーケティングにおいて顧客・市場環境と競合を分析し、自社の現状と強み・弱みを踏まえて、経営戦略に生かす分析手法のひとつです。「3C」とは「Customer(顧客・市場)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」という3つの要素を表す英単語の頭文字を意味しています。企業が営利活動を行う際には、政治や経済、社会の変化に大きな影響を受けます。さらにビジネスには顧客と競合の他に、株主や供給業者、メディアなどさまざまな組織や団体が関係しています。3C分析を行う際には、こうした外部要因の影響を測るため、マクロとミクロの視点を併せ持つことが大切です。
マクロの視点とは、景気変動や規制緩和などの法規制を考慮し、市場動向を俯瞰的に見ることです。ミクロの視点とは顧客の交渉力、新規参入や代替品の登場など、分析を行う対象を絞って微視的に市場の動きを見ることです。
3C分析ではこのような視点を持った上で、潜在的な顧客数や地域構成や市場の成長性を調べることが必要です。そのためにまずは市場規模を把握し、顧客のニーズや購買パターン、購買動機などの観点を加えて顧客・市場分析を行います。
続いて必要となる競合分析は、競争相手の売上、営業人数などの経営資源、戦略などを調査することです。競争相手のシェアを奪うという視点から競合の数、競合他社のパフォーマンスなどを分析します。自社よりも顧客に支持されている企業を分析することで、顧客ニーズを満たす商品やサービスの種類の理解につながります。
さらに自社分析を行い、自社のシェアや売上高、収益性といった定量的な要素と、ブランドイメージや技術力といった定性的な要素を偏ることなく精査することで、自社の強みや弱みを把握します。
これら3つのセクションから分析を行うことで、商品やサービスを差別化し競合優位を保つ成功要因を見つけることができます。
【3C分析】
3C分析の歴史
3C分析は、元マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長で経営コンサルタントであり、ビジネス・ブレークスルー大学学長の大前研一氏が提唱した戦略思考です。1982年に米国マグロウヒル社から刊行された「The Mind of the Strategist」で発表され、経営戦略上の課題を導く分析ツールのひとつとして世界で広く知られるようになりました。同書は、日本に翻訳書として逆輸入され、1983年にプレジデント社から「ストラテジックマインド」として発行されています。
4C分析・5C分析との違い
3C分析に似たフレームワークに、4C分析・5C分析がありますが、それぞれ分析する要素が異なります。4C分析は、顧客視点で商品・サービスを分析するフレームワークで、「Customer Value(顧客価値)」「Cost(コスト)」「Convenience(利便性)」「Communication(コミュニケーション)」の4項目を分析します。
5C分析は、3C分析に自社の商品が最終消費者に届くまでの中間顧客である販売代理店/卸業者など、顧客理解に役立つ2つの視点を加えた分析方法です。中間顧客の最終顧客(Customer’s Customer:顧客の顧客)や競合(Customer’s Competitor:顧客の競合)を分析することで顧客理解をさらに深め、主要成功要因(KFS)の検討に効果があります。
SWOT分析との違い
3C分析とSWOT分析は、活用する場面が違います。3C分析は、自社のターゲット顧客とそれを取り巻く市場環境および競合を分析し、自社がどこで勝てるかKFS(主要成功要因)を検討するフレームワークですが、SWOT分析は3C分析で自社の強みと弱みを分析するときによく使われます。SWOT分析を行う際には、内部環境として自社が現在持っている強み(Strength)と弱み(Weakness)、外部環境として機会(Opportunity)と脅威(Threaten)にそれぞれ分けた上で、「強み × 機会」(自社の強みを使って機会につなげるにはどうすべきか)、「弱み × 脅威」(自社の弱みを理解し、脅威を抑えるにはどうすべきか)といった形で、2軸x2つの視点で書き出します。
SWOT分析では、自社の強みや弱みを環境の変化による影響と一緒に考えますが、環境が変われば、強みが弱みになる場合もあります。そのため、環境の変化に合わせながら、定期的にSWOT分析と3C分析を組み合わせて使いましょう。
【SWOT分析】
PEST分析の活用が重要
3C分析で市場を取り巻く外部環境の変化を分析するときに使われるのが、PEST(ペスト)分析です。「Politics(政治や法改正)」「E= Economy(経済や為替)」「S=Society(社会や流行)」「T=Technology(技術革新)」の4つの切り口で分析するので、これらの頭文字をとってPEST分析と呼ばれています。
現代社会では、外部環境の変化に合わせて、自社の組織やサービスを変革していかなければ生き残ることはできません。自社を取り巻く業界だけでなく、社会全体を俯瞰するマクロ的な視点でPEST分析を活用することが大事です。
【PEST分析】
クロスSWOT分析を利用する
クロスSWOT分析は、SWOT分析で導き出した自社の強み(Strength)、弱み(Weakness)と、今後の環境変化として考えられる機会(Opportunity)、脅威(Threat)を掛け合わせて、今後の戦略を検討するフレームワークです。企業が投資できる人材やお金には限界があり、環境変化の激しい現代では選択と集中が求められます。自社の強みを生かせるビジネスチャンスを見逃さずに成果につなげるには外部環境の変化をしっかり把握することが大事です。クロスSWOT分析を行うことで、どこに集中して投資すべきかが明確になります。
【クロスSWOT分析】
3C分析の目的
3C分析の目的は、事業を成功させるための要因を見つけ出し、状況に適した経営戦略を立て、自社の優位性を高めることです。企業が利益を上げ、存在し続けるためには経営方針を固める必要があります。そのためには、事業を成功させるための要因を見つけ出すことが重要です。
企業の経営状態や市場での優位性は、取り巻く環境によって大きく左右されます。そこで、利益が伸び悩んでいるときなどは事業の改善すべき点を見つけ、自社のマイナス面をプラスに変えられるような戦略を立てることが必要となります。
3C分析で自社分析を行うことによって、企業が成長すべき引き金、つまり成功要因を明らかにすることができます。市場における自社の立ち位置が明らかになるので、自社の既存ビジネスで市場変化に対応することができるのか、どれくらいの成果が期待できるのか、その場合どのくらい経営資源を投入し続けるべきかなどの未来予測が可能となり、中長期的な経営戦略を練ることができるでしょう。
すべての企業は強みと弱みを持っています。しかし人材や設備、資金など経営資源は限られており、完璧に注力することはできません。ゆえに、なるべく低コストかつ高パフォーマンスとなる事業戦略を立てることが必要ですが、そのためには3C分析が有効です。そのほか、新規事業への参入や現在の市場もしくは既存ビジネスの撤退も視野に入れて今後の見通しを立てたいときにも役立ちます。
自社プロモーションへの活用
3C分析を正しく行うことで、自社プロモーションに必要なマーケティング戦略にも活用できます。プロモーションがうまくいかない背景には、ターゲットを絞り込むことができず、競合との差別化ができないことが挙げられます。そこで3C分析によって市場・顧客を理解し、そのニーズに対して競合を上回る自社の魅力を明確にすれば、アプローチ方法や競合と差別化できるメッセージや具体的なプロモーションを検討することができます。
市場の変化に対応できる
3C分析で「市場・顧客」「競合」「自社」について分析し、PEST分析やSWOT分析を合わせて行うことで、KFS(主要成功要因)を言語化できます。いったん言語化できれば、市場の変化に対して、市場・顧客への影響や競合がどのような対応するか、予測することも可能です。変化の激しい時代に、将来の市場展開を予測する上でも役立ちます。
3C分析の方法
ビジネスを行う上で一番重要なのは顧客です。したがって3C分析では顧客、つまり市場環境を最初に分析します。顧客や市場の分析では、ターゲットにしている顧客や市場が今の商品やサービスに満足しているかどうかを調べます。加えて、テクノロジーや時代の変化によって、顧客ニーズが今後どのように変化していくのかも見極めましょう。
こうした点を知るためには、PEST分析を使って、法規制の動きや景気変動などを把握し、市場へのインパクトをマクロの視点から測ることが有効です。さらに、「5フォースモデル」で、買い手の交渉力、新規参入や代替品の脅威といった、自社のビジネス環境に影響するミクロ環境の変化を捉えます。こうして得た結果も踏まえて、顧客や市場の分析を行います。
次に、顧客や市場の分析結果を踏まえて競合分析します。その際に競合他社の売上やシェア、コストといった結果と、その結果がもたらされた理由(営業方法やブランド力、商品開発力といったリソースの使われ方など)の両方に着目して分析します。
さらに、競合の商品開発からマーケティング、流通といったバリューチェーンにも着目し、ビジネス全体の効率性を競合ごとに精査していくことで、競合の戦略にどのような成功要因が潜んでいるかを考察します。
3C分析における注意点
自社を取り巻く業界や競合との差別化のポイントを確認するのに有効な3C分析は、シンプルでわかりやすく、自社事業について社内で共通認識を持ちたい場合にも最適です。実際に活用する際の注意点をまとめます。実測値・データに基づいて分析する
3C分析を行うときは、実測値(事実)やデータに基づいて分析します。そのために、外部調査機関や統計資料からできるだけ最新かつ信頼性のおける客観的な実測値・データを集めましょう。他社の調査資料などに紹介された二次データを参照する場合は、資料作成者の解釈や意見に惑わされず、元データの信頼性を確認します。さらに、ネット検索などの机上調査で得られる一般的な情報に加え、顧客や業界関係者へのヒアリングなど自社独自のリサーチや蓄積したデータベースを活用することが大事です。外部データと自社データを比較することで、より正確な分析を実施することができます。
スピード感を意識する
市場トレンドが激しく変化する近年、3C分析はスピード感を意識して行うことが大切です。外部環境の変化に合わせて、顧客ニーズや市場、競合の状況なども常に変化しています。古いデータをそのまま使ったり、分析に時間をかけすぎたりすると、最新の市場状況から乖離してしまい、役に立ちません。市場のトレンド情報を元に入手できる情報でスピード感を持って分析し、仮説を立てて戦略に反映して実行します。その結果をもとに戦略を見直しつつ、3C分析を定期的に繰り返し、ブラッシュアップしましょう。
3C分析の具体例
3C分析はマーケティング戦略を考える上では、非常に基本的でかつ実践的なフレームワークです。ここでは、企業の具体的な事例を使って、分析結果の導き方を解説します。任天堂の事例
「Nintendo Switch」などが人気の「任天堂」を例に挙げて、3C分析を行います。Customer(顧客・市場):
・2020年以降、コロナ禍で家庭用ゲーム需要の増加
・子どもからファミリー、高齢者まで幅広いユーザー層
・コアゲーマーだけでなく、家族でゲームを楽しむユーザーも多い
Competitor(競合):
・競合の「ソニー」は若年層男性中心のコアゲーマーの支持が高い
・FPS需要に沿ったシューティングゲームが期待される
・高画質・高音質のゲーム機器の開発に優れている
Company(自社):
・ハードとソフトの両方の開発ノウハウを持つ
・キャラクター資産を多数所持し、過去作品のリメイク・コラボで売上増が見込める
・「Nintendo Switch」で幅広い顧客層向けの商品戦略を行う
任天堂では「Nintendo Switch」向けのキャラクター資産を使ったゲームソフトの展開でビギナーからコアゲーマーまで幅広いユーザーを獲得する一方、6〜7年のハードのライフサイクルに備えた新しいハードの開発を続けることが、KSFになると考えることができます。
スターバックスの事例
日本進出26年を迎える「スターバックス」を例に挙げて、3C分析を行います。Customer(顧客・市場):
・日本進出26年で全国に1,771店展開、「ドトール」の1.6倍超の店舗数に成長
・10〜60代まで幅広い顧客層が利用している
・居心地のよいサードプレイスを求めている
・PCやタブレットを使い、社外で仕事をするニーズがある
Competitor(競合):
・競合は日本でのセルフコーヒー先駆者「ドトールコーヒー」
・リーズナブルな価格で高品質なコーヒーを提供
・定番のメニュー中心で、コーヒーメニューは限定的
・分煙対策で一部店舗の喫煙可
Company(自社):
・高品質な内装、完全禁煙で落ち着ける空間
・高品質・高価格の季節メニュー、バリエーション豊富
・パートナー(すべての従業員)や顧客とのつながりを重視
スターバックスでは、年間を通して季節の限定メニューなどを販売し、付加価値の高い商品展開でお客様とパートナーにワクワクする発見を提供することがKFSとなっています。
出典:スターバックスコーヒージャパン株式会社|会社概要
https://www.starbucks.co.jp/company/summary/
株式会社ドトールコーヒー|ドトールグループ総店舗数
https://www.doutor.co.jp/about_us/ir/report/fcinfo.html
まとめ
3C分析は古くから使われている基本的なフレームワークですが、SWOT分析やPEST分析などと一緒に使うことで、外的環境の変化が激しく「市場・顧客」や「競合」の定義が変わることがある現代でも自社の成功要因を導き出すことができます。新規事業の立ち上げだけでなく、既存のビジネスの推進にも役に立つので、事例を参考に活用してみましょう。
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