マーケティングコラム

研究内容に合ったアンケートの重要性と学術調査会社の選び方

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現実社会の様々な場面における人間行動に関するデータを収集し分析する社会調査には、行政調査、市場調査、世論調査、社会事業調査、学術調査などがあります。
中でも学術調査は調査した結果を何らかの研究に利用するという目的で行われる特殊なもので、その研究内容に合ったアンケートを取ることが重要になってきます。
そのためには適切な調査会社を選ぶことが何よりも大切です。ここでは学術調査の進め方や費用、調査会社選びのポイントなどについてご紹介します。

学術調査とは

学術調査とは、学生、教授、研究者の方々が論文執筆や学術研究のために行う調査を意味し、アカデミック調査、アカデミックリサーチとも呼ばれます。

調査手法は目的に応じて様々で、インターネットを利用したネットリサーチをはじめ、グループインタビュー(座談会)や会場調査といったオフライン調査も行われます。また、調査会社によっては、海外のパネルを対象とした海外調査(多国間比較)や実験の被験者募集なども請け負っています。

学術研究におけるアンケート調査では、研究テーマに沿った調査対象者の確保や、複雑な質問内容やロジックに対応できるアンケート機能が必要になります。そのため、これらを得意とするネットリサーチが広く活用されています。

ここからは、ネットリサーチで学術調査を行う場合に絞って説明していきます。

学術調査の特徴とメリット・デメリット

学術調査でネットリサーチを利用する場合、インターネットを介することで多くのメリットが享受でき、データの収集に大いに役立ちます。一方で、デメリットも少なからずあるため、それを理解し軽減させる対策が求められます。

【学術調査のメリット】
まず、メリットとしては以下の点が挙げられます。

◆短期間で実施できる
ネットリサーチでは、調査実施から回収、集計まで全てがインターネット上で完結するため、訪問調査や郵送調査などの従来の調査手法に比べて圧倒的に短期間で調査を行うことができます。
調査側はアンケートを一斉配信でき、回答者はいつでも都合の良い時に回答できるという利便性から、早く大量の回答を得ることが可能です。例えば、調査票の入稿からローデータの納品まで最短で2・3日という調査会社も多くあります。

◆低コストで調査できる
インターネットを利用することで、従来行われていたアンケート用紙の作成・配布、回収、集計などの作業がなくなり、調査コストが大幅に抑えられます。コストパフォーマンスが上がるため、従来調査に比べて大規模なアンケート調査も行いやすいと言えます。

◆調査対象者を絞り込みやすい
ネットリサーチでは、調査会社の保有するモニター(パネル)から調査対象者を抽出します。登録情報は年齢、性別、住所といった基本属性から、職業、年収、ライフスタイルに関することなど各社独自に細かい属性情報を取得しています。
学術調査では、研究内容に応じて調査対象者を特定の条件で絞り込むことが必要なので、予め属性情報があるネットリサーチでは適切且つ効率的にモニターを抽出することが可能になります。

◆柔軟なアンケート内容が可能
学術調査は調査結果を研究に使用するという特性上、アンケートの設問が複雑になる傾向があります。そのため、必要なデータを得るためには、希望するアンケートを取ることができる自由度の高いアンケートシステムが必要です。
ネットリサーチであれば、複雑なロジックへの対応、動画や画像を使用した質問調査、ビジュアルアナログスケールの使用など依頼毎にオーダーメイドのアンケート画面を作成することができ、学術調査のニーズに応えてくれます。


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【学術調査のデメリット】
反対に、デメリットは次のようなものがあります。

◆ネット利用率の低い年代には調査しにくい
ネットリサーチのモニターはインターネットを利用している人に限ります。近年ではインターネットの普及率は非常に高く、幅広い世代で利用されていますが、それでも高齢者は他の世代に比べて利用率が低いのが現状です。
こういった世代を対象に調査を行いたい場合、ネットリサーチでは十分な回答を集めることが難しい可能性があります。その場合は郵送調査を併用するなど、調査対象者に応じて調査方法の使い分けを行うことが大切です。

◆データの品質管理に課題がある
パネルの中には謝礼目的で適当な回答をしたり、虚偽回答をしたりする悪質なモニターが少なからず存在します。こういった回答が混ざると回収データの信頼性が下がり、研究に必要な正確なデータが得られません。
そのため、モニターの情報を定期的にチェックして不正モニターを排除する取り組みや、回収データから不適切回答を除外するデータクリーニング等、調査会社側でデータの品質管理が徹底されているかどうかが重要となります。

以上のようなネットリサーチの特徴をよく理解し、学術調査に上手く活用できれば有用なデータを収集できるでしょう。
※参考
あらためて知っておきたい ネットリサーチのメリットとデメリット
https://www.cross-m.co.jp/column/marketing/util52/

ネットリサーチを利用した学術調査のやり方・進め方

ネットリサーチで学術調査を行う場合、調査会社に依頼する方法と、セルフ型アンケートツールを利用して自身で行う方法の2つがあります。ここでは、それぞれの調査の流れ、特徴や進め方の注意点などを説明します。

【調査会社に依頼した場合の学術調査の進め方・流れ】
調査会社に依頼すると、専任リサーチャーが調査企画から調査票作成、結果分析まで丁寧にサポートしてくれるため、初めての方や調査に慣れていない場合は安心です。どのような流れでネットリサーチを進めるのか、以下にまとめています。

1. 調査企画
研究課題に対し「誰にどのような調査をすればいいのか」、調査目的、対象者条件、サンプルサイズ、調査項目や分析方法などを決めていきます。この調査設計は調査の核となる部分であり、リサーチャーが丁寧にヒアリングし最適な調査計画を提案してくれます。

2. 調査票の作成
調査設計を基に実際の設問を作成していきます。研究に活用できるデータが取得できるかどうかは調査票作成に懸かっています。回答者が負担に感じたり混乱したりせずに最後まで回答できることが大切で、質問の順序や形式、文章表現などに工夫が必要です。

3. アンケート画面の作成
調査票を入稿し調査会社側でWEB上のアンケート画面を作成してもらいます。高機能なアンケートシステムを有する会社では、研究内容に合わせた複雑な画面設計が可能です。

4. 実査
指定の条件で抽出したモニターにアンケートを一斉配信し、回答してもらいます。回答されたデータは自動的に回収されます。

5. データクリーニング・集計
回答データが集まったら、事前設定した有効票の基準に基づき不正回答をチェック・排除してから集計を行います。集計表は単純集計表(GT表)とクロス集計表とあり、調査会社によって基本納品物が異なります。

6. 分析・レポーティング
集計データから研究に必要な分析を行います。より深い分析及び報告書を調査会社のリサーチャーに依頼することも可能です。

調査内容やサンプル数によって納期は変わりますが、上記のような流れでフルサポートを受けると一般的に約2~3週間かかります。なお、調査票作成や分析は自分で行い実査のみを依頼する場合は、調査票入稿から最短で2・3日でローデータ納品が可能という調査会社もあります。

【セルフ型アンケートツールを利用した学術調査の進め方・流れ】
予算や調査内容によっては、調査会社に依頼せずにセルフ型アンケートツールを利用するという方法もあります。調査の流れは同じですが、アンケート画面の作成や配信、データのチェック・集計も全て自分で行うというものです。

調査会社に依頼する場合と比較して費用は抑えられ納期も早くなりますが、その分の手間がかかるという問題点もあります。また、高度なアンケート機能はなく、調査会社で作成してくれるようなオーダーメイドのアンケート画面は作れない点に注意が必要です。

調査に慣れていてサポートが不要な場合や複雑でないアンケートを取りたい場合は、セルフ型アンケートツールが良い選択となるでしょう。

このように、調査会社に依頼する方法とセルフ型アンケートツールを利用する方法とどちらもメリット・デメリットがあるので、調査ニーズに応じて上手く使い分けることをおすすめします。

有用性のある研究アンケート作成のコツ・注意点

調査票は、アンケートで有益なデータが収集できるかどうかを左右する重要なものです。調査票の良し悪しが回収データの品質につながります。

例えば、質問文が長すぎる・わかりづらいと、モニターの回答意欲が落ちて途中で回答を止めてしまったり、適当な回答をされてしまう可能性が出てきます。そうなると、回収データの信頼性は下がり、せっかくのアンケート調査が研究に活かせなくなってしまいます。

調査対象者から必要な情報を確実に聞き出すためには、回答者が答えやすい調査票を作る必要があるのです。ただ、そのためにはある程度スキルが求められ、比較的難易度の高いタスクと言えます。

そこで、ここでは有用性のある質問調査票を作成するためのコツをご紹介します。

◆まずは簡単な質問から
一番目の質問はシンプルな選択式がベターです。

◆誤回答防止の選択肢を入れる
選択肢の中に該当するものがないため適当な回答をするというケースを防ぐため、「その他」や「わからない」など回答者が最終的に選べる選択肢を入れておきます。

◆マトリクス設問を作成する
同じ選択肢の質問が続く場合は、マトリクス形式(表形式)の一覧表を作って回答者が答えやすいようにします。

◆選択肢のランダム表示
一般的に最初か最後の回答が選ばれやすいという傾向があり、そのような回答の偏りを避けるために回答者ごとに選択肢の並び順をランダム表示にします。ただし、設問によっては回答者を却って混乱させてしまうケースもあるので注意しましょう。

◆尺度比較
質問テーマに合わせて回答の尺度の段階を決めます。「好き」と「嫌い」を例にとると、シンプルに「好き」「普通」「嫌い」の3段階か、「好き」「やや好き」「普通」「やや嫌い」「嫌い」の5段階かになります。

◆自由回答の使い方
回答者の自由意志に任せる形で質問の最後に「その他感想や意見があればご自由にお書きください」という項目を入れることで、選択肢や設問の漏れに気付くことがあります。ただし、自由回答は回答者の負担となり誤回答が増える場合もあるため、多用は避けましょう。

◆回答者の属性
質問表の最後に回答者の属性(性別・年代・職業など)を知るための質問を入れます。理由は、属性は個人情報に近い情報であるため、最初の方に入れると回答者が不安になってその後の回答率が下がる可能性があるからです。

◆質問の数値化
行動や目に見えるものに関しての質問は、回答データが正確な分析につながりやすいので、具体的な数値を表示して聞きます。

以上のようなポイントに気を付けることでモニターが回答しやすい調査票になり、回収データの品質向上につながります。


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学術調査の活用事例

学術調査は教授や講師、研究員といった研究職の方の研究や、学生の卒業論文や修士論文のために幅広く活用されています。調査テーマの例としては以下のようなものがあります。

・医学関連
医学に関しての特殊な病気の成因、診断基準、治療に関する調査

・遺跡関連
重要性が指摘されている遺跡に関して特別史跡や遺跡保存を前提に行われる調査

・個人情報
住民基本台帳や選挙人名簿の調査など

・災害関連
東日本大震災に関する総合的な調査など

また、調査会社への依頼内容も様々で、調査設計から集計までフルサポートを受けたいというケースもあれば、部分的に依頼したいというケースもあります。

<依頼内容の例>
・調査設計から分析まで手伝ってほしい
・実査のみ依頼したい
・アンケートツールだけ利用したい
・パネルの貸し出しのみ依頼したい
・郵送調査とネットリサーチを組み合わせて行いたい
・日本と海外両方のモニターを対象に調査をしたい

こういった個々のニーズに応えられるよう、希望のサービスを組み合わせて利用できるオーダープランニングを行っている調査会社も多いので、どこまで依頼したいのか相談してみると良いでしょう。

ネットリサーチを利用した学術調査の調査費用

学術調査の費用は調査手法によって異なりますが、ここではネットリサーチを利用する場合についてご紹介します。

ネットリサーチの料金体系は一般的に「基本料金+オプション料金」となります。ここで注意したいのは、基本料金に含まれるサービス内容が各社異なるということです。

基本料金とは調査実査費用のことで、アンケート画面作成からメール配信、データ回収、ローデータ納品までを指すことが多いです。調査会社によっては調査票作成費や集計費も含む場合があります。

基本料金の価格に各社で開きがあるのはこのためです。例えば、10問×100サンプルの場合、50,000円の会社もあれば90,000円の会社もあります。

これに加えて調査設計やスクリーニング、分析・報告書作成などを依頼すると、オプション料金が発生します。オプション料金は依頼内容によって変わるため、一律の価格は掲示されておらず別途見積もりが必要です。

このように、ネットリサーチの調査費用を調べる際は、単純にホームページ上の価格表を比較するのではなく、その内訳をよく確認しオプション料金も含めて見積もりを取ることが大切です。

なお、学術調査の場合、割引価格や学割が適用される調査会社が多くあります。通常料金では予算的に難しい場合でも、見積もりを取って割引後の金額を確認してから検討することをおすすめします。

また、科研費や公費からの支払いを希望する場合、大手調査会社の多くは対応可能ですが、支払い方法は各社異なるので事前に確認をした方が安心でしょう。

学術調査を依頼・委託する調査会社の選び方

学術調査は結果次第でその後の学術研究の方向性も変わるような大切なものですから、調査を依頼する会社の選び方は重要です。
調査会社選びの基準としては、以下のポイントを参考にしてください。

◆学術案件の実績数
学術調査で効果的なアンケートを取るためには、リサーチや分析に関するスキルが必要になります。そのため、学術案件の取扱実績が豊富で、専門の学術調査チームがある大手の企業を選ぶと的確なアドバイスを受けることができ安心です。
実績数や取引機関を公式ホームページ上で公開している会社も多く、年間300件以上の調査実績がありアカデミック調査に精通している会社も見られます。過去調査の取扱研究テーマがわかれば、どのような分野の学術調査ができる会社なのかも判断できます。

◆アクティブパネルの多さ・属性の多様さ
研究課題によって大規模なサンプル回収が必要であったり、調査対象者の絞り込み条件が細かかったり、パネルに対するニーズは様々です。必要なパネルが確保できるかどうか、調査会社が保有するモニター数の多さと属性の豊富さの確認は欠かせません。
モニター数の多い調査会社では1,000~2,000万人程のアンケート会員を保有しており、また、細かい属性でカテゴリ分けされた専門パネルを用意している会社も多く、出現率が低い調査についても相談ができます。

◆アンケート機能の柔軟性
アンケート画面を作成するアンケートシステムの機能は各社で異なります。調査内容によって、質問の出し分けや画像・動画の挿入など画面設計に求める機能は様々あるでしょう。
特に、学術調査では複雑な分岐やロジックの設定が必要なケースが多いため、希望の調査票に合わせて自由に画面をカスタマイズできるアンケートシステムかどうかは重要なポイントです。

◆データクリーニング
学術調査において、研究内容に影響を与える回答データの信頼性は極めて重要です。矛盾する回答やいい加減な回答などの不適切回答を排除するデータクリーニングを行っている調査会社は多いですが、どの程度徹底されているかが肝心です。
また、セルフ型アンケートツールでは、このデータクリーニングを自身で行う必要があるため、そのスキルや労力が求められます。データクリーニングはデータの品質確保に必須なので、確実に行える方法を選びましょう。

◆予算と納期
予算と時間に余裕がある場合は、調査会社に依頼して丁寧に質の高い調査を行うという選択ができますし、できるだけ安く・早く調査を行いたいという場合は、実査のみのプランやセルフ型アンケートツールを利用するケースが多いでしょう。
なお、料金に関しては学術案件の割引キャンペーンを行っている調査会社も多いため、相場よりも安くリサーチが可能なケースもあります。一度見積もりを取って金額を見てから比較検討することをおすすめします。

まとめ

アンケート調査の主流となりつつあるネットリサーチは、学術調査においても広く活用されています。インターネットの利便性とその機能から研究に必要な複雑なアンケートを効率よく実施することが可能ですが、同時にデータの品質管理といった課題も抱えています。

学術調査では特に信頼性の高いデータが求められ、調査の難易度も高いため、確実に任せられる調査会社を選ばなくてはなりません。各社の特徴やサービス内容をよく理解し、学術案件に強く最適なプランを提案してくれる調査会社を選びましょう。

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