マーケティングコラム

女性を対象としたマーケティングはこまめな細分化が鍵

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10年ほど前にベストセラーになった、とある本があります。日本国内だけで200万部、世界40か国以上で600万部も売れたというこの本は、男性と女性の考え方と行動の違いについて紹介しています。この本が売れてからというもの、男性と女性の価値観やコミュニケーション方法の違いなどを解説する本が次々に出版されるようになりました。男性と女性が時代も国境も超えて、互いに「違うから理解し合いたい」と感じているということの表れでしょうか。

女性対象のマーケティングとは

 10年ほど前にベストセラーになった、とある本があります。日本国内だけで200万部、世界40か国以上で600万部も売れたというこの本は、男性と女性の考え方と行動の違いについて紹介しています。この本が売れてからというもの、男性と女性の価値観やコミュニケーション方法の違いなどを解説する本が次々に出版されるようになりました。男性と女性が時代も国境も超えて、互いに「違うから理解し合いたい」と感じているということの表れでしょうか。

 一般的に、「消費の80%は女性がコントロールしている」と言われます。独身女性はもちろん、多くの既婚女性が自家用車から洗濯機や冷蔵庫などの白物家電、文房具に至るまで、家庭内で用いる物の購入決定権を握っていることからも分かります。自家用車を購入しようとして、気になる車種を奥様に紹介したら「私はこの車、好きになれない。」という一言で諦めざるを得なかった、という経験をお持ちの既婚男性もいるのではないでしょうか。

 男性と女性では、同じ商品・サービスであっても、支持するポイント、評価する視点が違います。たとえば、家電製品であれば、思考を好むとされる男性は、スペックを比較して、客観的な視点から個々の価値観と重ねた上で選びます。一方で女性は直感的と言われています。スペックについてはあまり目を向けず、全体のイメージを持って、直感で「分かりやすいか」「私のライフスタイルに似合うか」などを判断して選ぶのです。

 機能性が高くても、直感的にピンとこなければ、その商品・サービスは市場において80%の人に選ばれず、結果として「人気がなくて売れない」ものになってしまいます。「消費の80%は女性がコントロールしている」ということは、世に数多ある商品・サービスは、女性に選ばれるものであるかどうかがその後の命運を左右する、ということにもなります。

 女性は男性と比べて持ち物が多いため、商品・サービスを選ぶ機会が増えることからも同様のことが言えます。巷で人気の高いブランドバッグの購入層や、満席になることが多いレストランなどは、女性客が多いことからもそれらがうかがえます。消費の命運を握る存在である女性をターゲットとして、女性の支持するポイントと視点をつかむ。女性対象のマーケティングは、それを商品・サービスの開発と販売促進に反映させるためのマーケティングなのです。

コミュニケーション戦略と細分化で訴求力アップ

 男性と女性で違う点は、スペック重視かイメージ重視か、だけではありません。注目したいのは、コミュニケーションの仕方についてです。

 男性は、相手との対話・会話において、問題を解決したり、相手との優劣を決めようとしたりする傾向があります。そのため、商品・サービスを消費する場面においても、自分の価値観や選択眼にかなう物を手に入れることができたかどうかを重要視します。入手に至るまでの途中経過や、誰かとのコミュニケーションの有無などはあまり意識しません。

 一方で女性は、誰かとの対話・会話において、共感や情報の共有などを大切にします。つまり、コミュニケーションを取ることを重要視するのです。商品・サービスを選択して購入する場面においても、買い方やプロセス、その商品・サービスを購入した気持ちなど。購入に至るまでの途中経過とその後の自分を他の誰かと共有し、共感してもらうためにコミュニケーションをすることを求めます。



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 SNSで「いいね」をたくさん付けてもらいたくて「写真映え」する商品や場所選びから、写真の撮り方・加工まで手を抜かないのも一例です。自身の体験、つまり商品・サービスの購入について、選んだ物とともに、それを選んだ自分のプロセスと気持ちについてもだれかと共有したいと考えるのが女性の思考なのです。女性をターゲットにして商品・サービスを開発するときは、この女性思考が求めるコミュニケーションに目を向けて戦略を立てる「コミュニケーション戦略」が、訴求力を高める上で必要不可欠になってきます。

 コミュニケーション戦略には、二つあります。ひとつは、消費者である女性自身のコミュニケーションを後押しすることで商品・サービスの消費を促進するための戦略です。商品・サービスそのものの開発だけでなく、その商品・サービスを選んだ女性の思考もサポートします。「人とコミュニケーションを取ることで、この気持ちを共有したい」という、女性の気持ちを後押しすることで、支持を得られ、訴求力を高めることができるようになります。

 とある商品・サービスを、ある女性が選んだとします。その商品・サービスを好ましいと思う気持ちは、SNSなどを通じて拡散することで「友だち」と共有することができます。共有した人は、この商品・サービスの存在を知り、共感することで、自分も購入しようと考えたり、更に別の人へ広めようとしたりして、それぞれで共有しようとします。この、SNSなどを通じて共有する部分がコミュニケーションであり、この部分をサポートできる戦略を構築することで、商品・サービスの訴求力を高めることが可能になるのです。

 もうひとつは、女性のクラスタ(異なる性質の大集団から似た性質の対象を選んで集めた小集団)ごとにコミュニケーションを取る戦略です。女性思考を男性思考と分けて分析することとは別に、女性単独で見た場合においては更にトレンドや趣向、価値観などで細分化することができます。

 広告業界におけるマーケティングのクラスタ分類においては、女性は主に年齢層によって「F1」「F2」などという名称で分けられます。これに嗜好や価値観、社会環境などを掛け合わせると、更に多くのクラスタを設定して細分化することができます。

 この、細分化されたクラスタごとにコミュニケーションを取るのです。具体的には、まずターゲットとなるクラスタの性質を明確にします。そして、クラスタごとに共感を得られるペルソナ(ある集団における代表的な特徴によって形成された架空の人物像)やキーワードなどを設定します。そのペルソナとキーワードに基づいて商品・サービスのストーリー設定などを行います。

 細分化したクラスタそれぞれで共有されるキーワードに沿って、そのクラスタに所属する女性の共感を得られるようなコミュニケーション方法を考えること。それが、細分化できる現代女性を対象にしたマーケティングにおいて、訴求力を高めるためのもうひとつの戦略です。

時代や流行によって変わる女性のクラスタ

 ただし、細分化されたクラスタは、そのまま固定されるものではありません。女性の年代と社会または個人ごとの環境に、トレンドや嗜好、価値観などを掛け合わせて分類しているので、時代や流行などが変われば、共感を得られるキーワードも違うものになります。クラスタごとにコミュニケーションによるプロモーションを行うのであれば、クラスタの変化に合わせてコミュニケーション戦略の内容も変えていく必要があります。そのときどきのトレンドや嗜好性などを別に把握した上で、それらに基づいて、ターゲットとなるクラスタに合わせたコミュニケーション戦略を構築するのです。

 ここで注意しておかなければならないことは、以前に構築したことのあるコミュニケーション戦略が、そのまま継続して使えるとは限らない点です。過去に存在したクラスタの性質に合わせたコミュニケーション戦略は、クラスタの性質が変わったら通用しなくなります。時代に合わせたコミュニケーション戦略を構築するために、流行やトレンド、社会環境などによって、女性のクラスタそのものを設定し直すところから始めなければなりません。

 逐一、時代に即した新たな情報を、商品・サービスを開発する側も把握することから、女性を対象にしたマーケティングは始まるのです。

まとめ

 消費の場面において購入決定権の大半を握っている女性を対象にしたマーケティングは、商品・サービスの販売促進のためには必要不可欠です。女性的思考を中心にすると、スペックよりもイメージまたはデザイン重視、論理よりも直感で良さを理解できるもの、など開発に対する概念も変えていく必要があります。消費傾向の8割を決定する女性を牽引することは、実は、女性の意見を聞いて購入を決める男性の消費傾向も左右することになります。そして、女性中心のマーケティングによって、男性の消費傾向にも影響を与え、商品・サービスの消費を全体的に向上させることにもなります。つまり、女性の消費傾向は、8割にとどまらず全体の消費にかかわるのです。

 ターゲットとするクラスタの女性に愛される商品・サービスを世に生み出すため、時代に即してこまめに細分化したコミュニケーション戦略が必要です。変化する女ゴコロと消費拡大の機会を掴み続けていきましょう。

参考サイト:https://www.ex-ma.com/blog/archives/1287

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