マーケティングコラム

対象の全数を調べる悉皆調査(しっかいちょうさ)のメリットとデメリット

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「悉皆調査」とは、「悉皆」が意味するように、「ことごとく皆」を調査する全数調査(complete enumeration)のことです。
 日本で代表的な悉皆調査には、普段日本に居住している人を対象とした国勢調査や日本国内の事業所を対象とした経済センサスなどがあります。

悉皆調査(しっかいちょうさ)とは

「悉皆調査」とは、「悉皆」が意味するように、「ことごとく皆」を調査する全数調査(complete enumeration)のことです。
 日本で代表的な悉皆調査には、普段日本に居住している人を対象とした国勢調査や日本国内の事業所を対象とした経済センサスなどがあります。

標本調査との違い

 悉皆調査は、調査対象をすべて調査する全数調査ですが、一方、標本調査(sampling survey)は、調査対象の中から無作為(単純無作為抽出法、層化無作為抽出法など)に標本(サンプル)を抽出したものに対して調査を行い、その結果に基づいて、母集団の値を推定するものです。
 調査テーマにもよりますが、ほとんどの世論調査やマーケティングリサーチは標本調査で行われるといっても過言ではなく、悉皆調査を実施することは稀といってよいでしょう。 

悉皆調査のメリットとデメリット

 悉皆調査は、対象をすべて調査する全数調査であるため、無作為に標本を抽出する標本調査のように標本誤差が生じません。調査で得られた値は即母集団の値となり、標本誤差を考慮に入れる必要はありません。またN(母集団の大きさ)も大きいケースが多いと想定されるので、複雑かつ多様な分析に耐え得るn(調査対象数)を確保しやすい、といえるでしょう。
 しかし、悉皆調査にデメリットがないわけではありません。以下に悉皆調査の重要なデメリットを列記します。

 1.莫大なコストがかかる
 2.調査終了までに時間がかかる
 3.労働集約的領域が多く、人手を要する


 1.「莫大なコストがかかる」について、国勢調査の場合、調査実施年には1,000億円弱の予算が組まれます。民間企業には到底捻出できる額ではありません。また市区町村で悉皆調査を実施すれば、コストは標本調査と比べものにならないほど高くなります。

 2.「調査期間が長くなる」についても調査対象数が多くなるので、調査員の配置など調査の準備に時間が必要となります。調査期間中のトラブル発生件数も多くなったり、回収された調査票のインスペクション・点検・アフターコード作業などに膨大な時間を要したりします。

 3.「労働集約的領域が多く、人手をかなり要する」については、2.「調査期間が長くなる」でも触れましたが、調査員調査の場合、調査員に調査を依頼するため、その分の人的リソースを必要とします。調査期間中には調査員の管理者を配置しなければなりません。調査票回収後は、インスペクションや調査票の検票、データ入力などの作業が発生します。例えば、ある100万人都市の消費者意識を知りたい、というテーマで調査に臨むとした場合、1,000サンプルで標本調査した場合、単純に考えれば、人手は1,000分の1となります。

 以上のようなデメリットが悉皆調査にはありますが、このデメリットが調査実施の大きな障害となっていたために標本調査法が研究・開発されました。別の言い方をすれば、標本調査には、標本誤差があるものの、コスト、時間、人的リソースの問題を超えるメリットがある、ということです。

日本を理解できる経済センサス

 日本国内で最も認知度の高い悉皆調査は国勢調査であろう、と推測されますが、同じく総務省が実施している経済センサスも国勢調査と同様にマーケティング戦略を立案するうえで非常に重要な悉皆調査の1つです。

 経済センサスは、「事業所及び企業の経済活動の状態を明らかにし、我が国における包括的な産業構造を明らかにするとともに、事業所・企業を対象とする各種統計調査の実施のための母集団情報を整備することを目的としています」*1。
*1 総務省統計局のHPより引用(http://www.stat.go.jp/data/e-census/)

 つまり、経済センサスは、日本の事業所から得た情報をベースして事業所の実態を浮き彫りにする、経済分野の悉皆調査ということができます。(2015年11月30日に総務省が公表した「平成26年経済センサス‐基礎調査(確報)結果の公表」によれば、平成26年7月1日現在の我が国の民営事業所数は577万9000事業所となり、膨大な数になっています。)
 このようにN(母集団の大きさ)が大きいので、特定地域の経済情勢も把握可能です。

 約600万弱の事業所が対象となった経済センサスは、国勢調査と同様にマーケティングリサーチ業務における収集すべき重要セカンダリーデータである、ということはいうまでもありません。

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