マーケティングコラム
“気づき”マーケティング(21) 「三世代サンドイッチ」 ~“50歳”へのアプローチ~
公開日:
東京辻中経営研究所
同社代表取締役マーケティングプロデューサー 株式会社ユーティル研究顧問
辻中 俊樹
2016年、明けましておめでとうございます。穏やかな天気の年末年始、よい年を迎えられましたか。年初なので少しロングタームのお話を。
2025年に日本は「平均年齢50歳」の社会になる。今から10年後には「平均年齢50歳の国」になるということだ。こんな社会の到来にマーケティングはどうあるべきか、これは博報堂の橋本さん、村田さんたちが提唱している、なかなか素敵な取り組みだ。
2025年に日本は「平均年齢50歳」の社会になる。今から10年後には「平均年齢50歳の国」になるということだ。こんな社会の到来にマーケティングはどうあるべきか、これは博報堂の橋本さん、村田さんたちが提唱している、なかなか素敵な取り組みだ。
“平均年齢50歳”の社会はもうすぐ
「平均年齢50歳」といっても、なかなかイメージが掴みにくいので、ここでは“50歳”とはなんだろうかという視点におきかえてみる。50歳前後、あるいは50代前半の生活価値観はどのようなものなのか、そこから少し未来のイメージを覗き込んでみることにする。まず考えてみたいのは、現在の50歳前後の人たちがどんな状況におかれ、どんな価値観を持っているのかということだ。ここで一番大切な視点は、50歳前後、あるいは50代前半の世代は、ちょうどサンドイッチの具材のような位置にいるということである。両側を子どもの世代と、親の世代というパンにはさまれた状態だ。私たちがよく使うキーワードでいえば、「三世代サンド」としてみておくということになる。20代というパンと、80代というパンにはさまれた真ん中で、押しつぶされそうになっているとみてもよい。
三世代の連鎖という視点
現在の社会をみるにはこの三世代の連鎖という視点は不可欠である。50代、あるいは50歳前後をみるには、20代、80代との相関である。また、40代には10、70代という連鎖がある。60代には30、90という世代が重層化されるということになる。あるいは30代をみるには、0(プレティーンズ世代)、60という世代の相関をとっておくということだ。麻雀をご存知の方ならわかりやすいだろうが、これは順子(ジュンツ)の筋そのものである。概略でいえば、30年前後で世代が重なり合わさっていくという構図は、まさに麻雀の筋のように、世代が連鎖していくことである。
超高齢化していくということと、人口が減少していくという社会の構図は、世代を単独でみることの意味よりも、三世代の連鎖でみることの意味を明らかに増大させていくことになる。
なぜならば、50歳ならば80代の親の世代はかなりの確率で健在であり、20代の子どもの世代とのサンドイッチにならざるをえないのである。また、40代ならば70代の親と10代の子ども世代の間に、まさにはさまれている状態になっているのだ。これが、よくいわれる団塊ジュニアと団塊世代の構図だということができる。
50歳前後、あるいは50代という世代は、ほぼ1960年代生まれであり“新人類”などといわれた経緯もある。私たちの見方でいえば“新人類”であったかどうかよりも、80歳、あるいは80代の親を抱え、20代の子どもにはさまれているということの方が重要なのである。80代の世代は、昭和ヒトケタ生まれであり、読者の方には全くイメージできないだろうが、日本はなかなか豊かであり、圧倒的に多産であった。兄弟姉妹が片手以上はいたという時代である。
50歳前後の人たちは、80歳前後の両親だけでなく、おじ、おばもまた多くいるのだ。そういう意味では高齢側のパンの厚みがタップリあるといってもいい。
生活満足度を上げる要因は何か
さて、こんな50代を真ん中にした三世代の連鎖を前提にして、50、60、70代という世代を比較してみると、明確な傾向がある。つまり、60、70代になれば、自分たち自身が三世代サンドイッチのパンの側にどんどん移行していくことになる。60代前半あたりが、三世代サンドの真ん中の具材からパンの側に移っていく過渡期だとみることができる。比喩的にいえば、50はまだまだ具材の真只中、やっと60をすぎてパンの側に移り、70になればはっきりとパンになる。超高齢化社会というのは、単純化してみればパンになる時期の遅延ということに尽きる。30年前の50歳、あるいは50代はもはやパンの側への確実な移行期だったのである。
「あなたは、日常生活について、全体的にどの程度満足されていますか?」という問いに対して、50、60、70代の三世代全体では「満足している」「どちらかといえば満足している」を合わせると85%近くがそうだという。相対的満足に到達しているのだが、50代に限ってみればこれが下がる。
「満足している」というトップボックスも全体では2割あるのに対して、50代では10%強まで下がる。逆に「不満がある」というマイナスのトップボックスは、60、70代では1%程度になっているのに対して、50代では10%を超えている。これは2015年に私たちが実施したプロジェクトからのデータだが、どのようなデータをみてもほぼそんな傾向になっている。
「三世代サンド」は、パンの側に移行することが生活の満足度を上げることになるのか。50代は具材としてはさまれていることが問題なのか。50歳はそれを教えてくれる世代なのだ。