“気づき”マーケティング(16) 「ヤオコー」ユーザーの生活を“可視化”してみた!―意思決定の<間際化>を考える②―
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![辻中 俊樹](https://www.cross-m.co.jp/hubfs/Imported_Blog_Media/20150806_04-3.jpeg)
東京辻中経営研究所
同社代表取締役マーケティングプロデューサー 株式会社ユーティル研究顧問
辻中 俊樹
「ヤオコー」ユーザーの日常的な食生活の可視化
むしろ、他のチャネルを重層的に使い、時と場合に応じて使い分けをしているユーザーといえる。
計画性と<間際化>
このネットスーパーの利用は「雨が朝から降っていて外出できず」という、まさに意思決定の<間際化>を象徴する出来事ともいえる。案の定、お昼は「お米を切らしていたのでパスタにした」ということで2歳の息子と「小松菜とベーコンのクリームパスタ」を食べている。そのつどの場面によって工夫することができるから<間際化>も成立しているのだろう。
家族で出かけた外出先の休憩がてら車の中でセブンイレブンのアイスコーヒーを飲むというシーンや、日曜日の朝「子どもたちが早く起きて散歩ついでにパンを買いに行った。みんなが好きなパン屋なので楽しい朝食になった。」というシーンもある。
子どもと出かけて「息子が寝てたので、つかれもあり、作るより買って食べようと思ったから」ということでセブンイレブンのおにぎり2コとゆずレモンサイダーにした後、「明日予定があって買い物に行けない」ということでヤオコーに寄って2~3日分のまとめ買いをしたりもしている。この日買った「豚ロースしゃぶしゃぶ」肉が翌日の夜に「豚しゃぶサラダ」になって登場する。これはある種の計画性であり、意思決定は<間際化>ではないようだ。
複数チャネルを併せ持つユーザーたち
この計画性という点でいえば、パルシステムに代表される生協を使っているヤオコーユーザーがいたりもする。「一週間前に注文するので重ならないようにと思うが…」ということで、「赤魚一夜干、あずきバー、キャベツ、人参」がこの日到着、翌日の夕食に焼き魚として登場する。焼き魚だけでは足りないので「デミグラスハンバーグ」も登場し、計画品が重なった妙な食卓となっている。
あずきバーは、その後数日食後のデザートシーンを飾っている。様々なチャネルを、計画性と<間際化>と、その中間の要素を混合しながら、ミックスして利用しているのが実態である。
たとえば生協は家の土台や一階部分であり、一階の一部や二階をヤオコーが担当し、ベランダはコンビニというように、一軒の家の機能を複数の売り場がそれぞれ受け持っているというようにみえる。それが時折入れ代わったりもしているというのが実態のようだ。
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生活日記だからこそ見えるもの
8歳と5歳の娘さんと実母が同居している40代のヤオコーユーザーの平日。夕方になってヤオコーに買い物に行く。「食パンがなくなったのと夕食のおかずになる物を買いに行く」という、比較的<間際化>した動機である。
「しじみと餃子(冷凍)は母が使ってほしいというので、しじみのみそ汁と餃子を焼く」という夕食の献立のベースが夕方に決まりつつあったのである。これだけではおかずが足りないということで買い物に行ったという訳だ。
「ヤオコーの試食でマーボー豆腐だったので豆腐と素のソースを買って簡単に調理する。レタスを下に敷いてマーボー豆腐を乗せたら見た目も良く一緒に食べてもおいしかった」ということで、「夕食が中華でまとめられて良かった。母からの餃子が自分で買うのよりおいしくて満足した」という夕食が成り立ったのである。
このマーボー豆腐の店頭提案は<間際化>の意思決定をものの見事に刺激している。だが、この時のレシートデータをいくら解析してもこの食生活はみえてこない。POSデータというビッグデータは、決して生活の可視化にはとどくことはないのだ。
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