マーケティングコラム
クライアントとのワークショップのすすめ
公開日:
株式会社クロス・マーケティング
リサーチプランニング部 エグゼクティブリサーチャー
梅山 貴彦
最近、ワークショップが改めて注目され、各所で頻繁に実施されている。社内で実施するものから、趣味のコミュニティ、地域活性型、技術者による新商品開発、メーカーで行うもの、企業同士が共同で行うものなど、様々なワークショップが存在している。ワークショップとは、参加者の共同による体感・体験による相互理解と、商品開発や課題解決など、なんらかのアイデア・ソリューションの創出と私は考えている。
なぜワークショップなのか
現在のように消費財の市場が成熟してくると、新しいニーズの探索やインサイトの発見が難しくなっていく。確かに、調査によって未充足ニーズの発見などができないわけではない。例えば、エスノグラフィによる人間行動の観察の結果、今まで注目されていなかったことが再認識されて、それが新商品開発につながったケースも多くあるだろう。しかし、発見されたインサイトや未充足ニーズの実現のために、多大な努力を要する技術開発であったり、巨額の投資が必要であったりすることも事実である。そうして世の中に提供された商品が、必ずしも成功するとは限らない。タイミングが遅かったり、競合からすぐに追随されたり、結果的にニッチ市場の商品であったりしているのではないだろうか。また、その企業にとっては、商品開発そのものが難しい場合もあるだろう。成熟した商品のインサイトは、既に多くの研究や調査がなされていて、わかっていることもある。そこに向けて、いきなりマーケティングリサーチを実施して、効果があるのだろうか。成熟市場では、既に十分すぎるほどニーズが満たされ、ユーザーが未充足ニーズを感じる余地がなくなってきているのではないだろうか。時代に逆行すると言われるかもしれないが、今はまたシーズを提供する時代がきているのではと思う。
ワークショップの進め方
そこで、クライアントとのワークショップが改めて重要だと考えられる。ワークショップのメリットとは、①課題ヒアリングに最適、②目的を決めた上での進行、③連体感の形成、④アクショナブルな戦略策定などがある。ワークショップを始める前の準備として、目的に沿って、クライアントが保有する情報や調査会社が収集した情報の整理を一緒に行う。ここでは、過去の実績、マーケティングミックス情報の強み、弱み、技術力、ターゲットなどをもとに、現状を体系的にまとめる必要がある。この時点で、推進側で具体的なワークショップのゴールの設定をすることになる。一般的な進め方としては、新商品やサービスの開発であれば、ワークショップの参加者は、マーケティング、広告、営業、開発などのプロジェクトに関わる横断的なメンバーを選出する。事前にまとめた資料をワークショップ参加者に説明をし、ゴールを設定した上で、ワークショップを進める。ファシリテータ(進行役)としては、クライアント側と調査会社側の2人をたてる。ひとつの参考として、商品開発のワークショップでは、ゴール設定後に参加者に課題を考えてもらう。課題は、内容に応じて、消費者像、販売店、卸売業者、開発者などのステークホルダーのそれぞれのイメージを考えてもらう。一回目のワークショップでは、各自が考えてきたイメージを発表してもらう感じである。その後、イメージの人物像の共通化と差異を判断し、いくつかのパターン分類を行う。次に商品開発であれば、商品使用のきっかけ、目的を考える。そうして想定ニーズを絞り込んでいく、一回目はこのぐらいだろう。その後、課題として、そのニーズに沿ったアイデアをいくつか、参加者一人一人に考えてもらう。2回目は、その発表から始まり、みんなで、アイデアは的を射ているのか、作れるのか、誰が売るのかなどの観点でブラッシュアップを行い、アイデアを選定し、また発表してもらう。この時点で、参加者の相互理解やクライアント内での実現の可否などが、参加者には共有されていることになる。
その後はじめて、ワークショップで創出されたものに対して、マーケティングリサーチが実施されるというプロセスである。
\t
\t
\t
\t
\t\t
\t\t
\t
\t
\t
最後に
ワークショップのメリットは、参加者の、「このプロジェクトを進めるぞ」というモチベーションUPに繋がるという点である。クライアントのモチベーションが低い商品やサービスは、良い結果を生む確率は低いだろう。みなさんも、ワークショップを実施して、より効果の上がるマーケティング活動につなげていってほしいと、心から願っている。
関連ページ