- マーケティングコラム
カスタマージャーニーマップ作成ポイントと有効活用法
2019 / 07 / 04
顧客であるユーザーの消費行動はどんどん多様化しています。消費者の思考やニーズを把握し、素早く適切な形で応えることがビジネスを勝ち抜く道です。それにはさまざまな分析手法がありますが、カスタマージャーニーマップもその一つです。ターゲット層に魅力を感じてもらえる製品やサービスを提供するためには、企業側ではなくユーザー視点も踏まえてビジネス戦略を立てることが重要となってきます。
カスタマージャーニーマップとは
カスタマージャーニーマップとは、ユーザーの心理や行動を追い、その過程で明確になった不満点や評価している点を列記して、既成商品やサービスの改善や次の製品の開発に生かすためのビジュアル化したデータ一覧表です。商品を購入した人やサービスに加入した人が、どのような方法で情報を獲得し、どういう基準で判断して購入や加入を決め、その後どういった感想を持ったかという思考と行動の変動を一覧的かつ時系列で俯瞰的に見ることが出来ます。ユーザーの行動と心理を可視化することで、ビジネスに携わるスタッフ全員が、どこに問題があるのかという共通認識を形成できるという利点もあります。たとえば旅行先のホテルを探し始めたユーザーの最初の行動は何かを使ってホテル情報を探します。この最初の行動をタッチポイントといいます。かつては新聞広告であったりしましたが、最近はスマートフォンの普及とSNSの台頭を背景に、Web広告やWebサイトにアクセスして情報を探すユーザーも多いです。
ユーザーは、清潔さや料金を根拠にホテルを決めた時点では心理的にアップしますが、現地でホテルまでの道が分かりにくかったらダウンします。しかしスタッフの対応が良ければ再びアップします。このようにユーザーはWeb広告にアクセスして商品やサービスを評価したり比較検討しますが、その心理は時系列で上下に変化します。これをデータ的に把握し、ビジネスに活用できるのがカスタマージャーニーマップです。
カスタマージャーニーマップをより有効に生かす方法としてCross Traceという調査アプローチがあります。Cross Traceは消費者の属性データ、行動データ、意識データを三位一体とした分析手法です。Web広告やWebサイトにタグを埋め込み、アクセスしてきたユーザーを分析し、アクセスログをもとにアンケートを実施します。このアクセスログのデータとアンケート結果を紐づけすることで、Web広告やWebサイトに誰がアクセスし、どう行動したかを分析し、ユーザーの評価や理由までトレースします。この一連の作業によって、優位性や問題点を突き止められるので、ホテルであれば案内表示の改善や、これまで以上に応対教育を図ることでビジネスに生かせます。
作成の目的
カスタマージャーニーマップを作る目的は下記の4点に集約されます。・ユーザーの感情や欲求、行動から評価までを段階ごとに俯瞰する
・多くのスタッフが作成に参加することで結果に対する共通認識を持つ
・商品やサービスが抱える課題を解決すべき優先順位を明確にする
・ユーザー目線で現実的な戦略を立てる
まず、カスタマージャーニーマップはユーザーが購買に動く流れや行動原理、評価を容易につかむことができる点が最大の特長です。「A商品を購入するまでにユーザーはどのような情報ツールを使うのか」や「Bサービスはユーザーが最適と評価するタイミングで提供されているか」といった課題を浮き彫りにし、サービス改善や新たなユーザー獲得に生かすことができます。
多くの参加者で作成を進める理由は、偏りを防ぐためです。エンジニア、営業、企画担当など多くの目線で作成することにより、問題点の把握や解決法の検討に関して共通認識が持てます。また課題の中で何を最初にやるべきかという緊急度を判定できます。つまり課題の優先順位を確定し、合理的手順で商品やサービス改善のスケジュールを組めるのです。作成作業自体がユーザー目線で商品やサービスを評価していくことになりますので、そこから得られる情報をもとに、ユーザーの立場に立った効果的戦略を構築できます。
作成・活用方法
まず自社製品やサービスのターゲットとなるユーザー像を定義します。次にペルソナの行動を時系列でいくつかの局面に分けて横軸として列記します。最初に興味を持ったり必要性を感じる第1局面です。次に必要な情報をWeb広告やSNSで探す第2局面です。集めた情報を比較検討する第3局面と続き、購入の可否を決定する第4局面となります。最後に評価情報を得る最終局面となります。最終局面ではアンケートを行うことで幅広い情報が得られます。縦軸はペルソナが各局面で抱くツールの選択、思考や感情の起伏で区分します。こうして横軸に時系列データ、縦軸にユーザーの思考や感情の起伏を分類したカスタマージャーニーマップが完成します。この制作工程でCross Traceを活用すると作業が効率的になり、より高い効果が期待できます。Cross TraceはWeb効果測定調査などに使えるモニター役のユーザーを保有しています。Web広告への接触者、非接触者双方のデータをアンケートを通して集計、分析できるので、両者の意識や評価の比較検証ができます。Web広告への接触回数などをもとに、情報に接した人の購買意欲などが、接しなかった人に比べて上がったかどうかを判定するブランドリフトよよばれる効果測定にも有用です。商品やサービスへの評価だけにとどまらず、Web広告のデザイン、迷わず操作できるサイト設計など、購入率にも関係してくるUIやUXなど技術的な分析も得られます。こうしてできたマップは、営業は販売強化に活用しますし、開発部門は商品を改善したり次期製品のアイデアに応用できます。システム系スタッフはよりレベルの高いUIやUX設計に役立てることが出来ます。