マーケティングコラム
“気づき”マーケティング(4) 「妊婦さん」の特徴って何?
公開日:
東京辻中経営研究所
同社代表取締役マーケティングプロデューサー 株式会社ユーティル研究顧問
辻中 俊樹
マタニティ、つまり妊婦さんのことをちゃんと知りたいという欲求があった。マタニティの時期の特徴的なライフスタイルや価値観を知りたいという調査のオーダーがあり、さてどうするのがよかろうかということになる。
妊婦さんというセグメント
出産後授乳期を経て乳児を抱えたポストマタニティの時期と、どんな連続線や不連続線があるのかを整理しておきたいということにもつながっている。妊婦さんというセグメントは単純にみえるので、妊娠中の女性であれば研究対象としては完結してそうにみえる。ただ調査というものはそうでもなく、その中でもより特徴的な人の生活をみることが重要だということになる。妊婦さんと一言でいっても、そう一筋縄ではいかないのである。こういう時には私たちは、まず「生活2次データ」を洗うことになる。いわゆるマクロデータとかオープンデータというものをスタディしてみることになる。
2011年の年間出生数は約105万人で、最低新記録であり、1970年代前半のベビーブームの頃が200万人を超えていたのに比して半減している。とはいえ、100万人以上という人数はそれなりのセグメントであることになる。これから言えることは、常に100万人を超える妊婦さんがいることである。
次に重要なポイントはこの妊婦さんのコンディションである。この妊婦さんは初産をむかえようとしているのか、第2子以降ということですでに出産経験者なのかということである。概略でいうと、約48%が第1子の出産となっており、約50万人は初産をむかえるママさんということになる。逆に残りの半数以上は出産経験者であり、2次データ的にいえば3歳前後の上の子がいるというパターンになる。
ここで最低2つのセグメントができあがる、全体の半分を占める初産妊婦さんと、すでにポストマタニティママであり第2子以上の妊娠をしている残り半分強である。妊婦さんには「これからママ」と「すでにママ」の2通りの特徴があることになる。
「働く妊婦&ママさん」は重要なセグメント
「これからママ」を別の角度でみれば、働いている女性、古いいい方をすればOLさんである。OLさんプラス妊娠中というプロフィールになる。これも2次データで洗っておくことができる。2010年「第14回出生動向基本調査」(国立社会保障・人口問題研究所)によると、第1子出産前後の女性の就業形態の中で、妊娠前から無職だった女性は30%以下である。いわゆる、結婚後退職、そして妊娠出産という、「寿退社」パターンは3割にも満たない少数派なのである。ちょうど20年前が40%弱だったのが更に減少した訳だ。ただこういう特徴的な妊婦さんは研究に値することは間違いない。逆に「第1子妊娠前就業~第1子1歳時就業」という、妊娠、出産、ポストマタニティ期を含めて、継続就業していた「働く妊婦さん、出産後も働くママさん」が約27%近くになっている。ただ、これを20年前と比較してみると、2ポイントほどの微増にすぎないのには、正直私たちも少なからず驚いたところもある。
「働く妊婦&ママさん」は重要なセグメントなのである。細かくみればこのセグメントの中で、この20年で育休利用者が12ポイント上昇している。育休とかの制度は、もともとあったセグメントに有効活用されたに過ぎないのだろうか。
そしてもう1つのセグメントが、いわゆる「出産退職」と呼ばれる、第1子妊娠前就業~第1子1歳時無職のパターンである。これが約44%を占め、ここが相対的多数派になるのだ。加えて、20年前に比べて6ポイント以上増加している。実はここが一番重要なセグメントなのである。
出産直前まで働いていて出産以降は専業ママになったのか、妊娠後比較的早く退職したのか、ここはグラデーションのかかった状態だ。そして、第1子が1歳以上になり再び仕事に復帰したり、復帰後あるいは専業ママのまま第2子の妊婦になるのか、ここもグレーななり行きを持って循環してそうである。
定性的に追跡し気づきをみつけだす
ここに整理したような特徴あるセグメントが4つ程度妊婦さんの中に想定できそうである。いわゆる「寿退社型妊婦さん」、とは言えこれは社会の主流ではない。次に「働き続ける妊婦&ママさん」、恐らくこのタイプは第2子出産に関してもこのパターンを続けて行く確率は高い。そして重要なのは「働く妊婦さん」、そして退職タイプである。出産、子育て、復職、仕事継続、再退職、専業のポストマタニティママといった、いくつものプロフィールを短期間に選択していくというセグメントということになる。ここに働くことと働かないことを繰り返すという2つ程度のパターンをみつけることができそうであり、全部で4つ程度が想定できそうなのである。そして、まずこれらのタイプの特徴を定性的に追跡してみることになる。それぞれが1人でも2人でもいいので、様々な気づきをみつけだしていく必要がある。生活2次データを使って、最低限の整理をしておくことで、気づきをみつけだしていく手順がまずスタートラインとなる。
関連ページ