マーケティングコラム

“気づき”マーケティング(2) 「濡れ落ち葉」

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東京辻中経営研究所
同社代表取締役マーケティングプロデューサー 株式会社ユーティル研究顧問

辻中 俊樹

もうかれこれ20年以上になるだろうか、「濡れ落ち葉」と云う言葉が一世を風靡したことがあった。今の若い方々はご存じないかもしれないが、定年リタイアした男たちの行く末を暗示したものである。

現役時代は働き詰め、家庭など顧みることもなくいつも帰宅は午前様、土日は接待というゴルフ三昧、ほとんど家になどいなかった夫が、退職と同時に“ずっと家にいる”という状態を示している訳だ。そして、何をするわけでもなく一日中ずっとリビングのテレビの前に、マグロかクジラの様にころがっている様子が浮かび上がってくる。 本当にマグロのように転がっているだけならば問題ないかも知れないが、何しろ三食と身の回りのお世話は欠かせないのだ。これは妻にとってみれば、降って湧いた天災の様なものだ。家の中に処置なしの落ち葉がたまり、やがて朽ちていく様子を「濡れ落ち葉」と表現したのである。



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男たちにも言い分があっただろう。何しろ高度成長を支え、家計の右肩上がりを支えてきたのも自分たちなのだ。それを終えて空気の抜けた自分に何の非があるのだと。しかし、妻側の言い分はハッキリしている。夫が不在の家庭の中では、すでに10数年前からそれぞれがシングルの様に暮らしており、時折それぞれの生活動線が重なった時にミックスするという「シングルミックス=シングル」スタイルが出来上がっていたのだ。これがいきなり「カップルアゲイン」になっても困るのだ。ましてや、そのパートナーは陸に上がったマグロ状態なのである。

「妻たちのシングルライフ?!」

夫たちが仕事で不在にしていた間に、妻たちはパートであったり、社会活動であったりと様々な外出行動を増やしていた。つまり、外出動線をその生活スタイルに組み込んでいったのである。この外出動線を支えている生活価値観を表層的にみれば、新しい生きがいづくり、自分探し、社会参加などといったものがあるといえる。その通りといえるが、深層心理的にいえば「避難路」「避難場所」づくりだといっていい。

この外出動線の主たる時間帯はお昼なのである。妻の生活スタイルからいえば朝から義務的な家事を済ませ外出、一度は家に戻ったりすることもあるが夕方までのデイタイムが、この生活パターンを作り上げることになったのである。決定的な、具体的な問題としていえば、この時間帯の真ん中にあるお昼ごはんが重要だ。「濡れ落ち葉」のお昼ごはんを用意することは、この妻たちのスムースな外出動線を維持するには、大きな阻害要因なのである。たかが昼めしごときとはいえない。

妻たちは自分一人のお昼ごはんということになれば、本当に残り物ですませたり、子供たちにお弁当を作ってやっている時代ならばそれを流用して自分のお弁当を確保しておく。時間もなく何にもなければインスタントラーメンで済ますのである。

これが「濡れ落ち葉」の背景ということであるが、「わしわし族」なんて言葉もあった。これは妻が外出していく先に、やる事のない夫が「わしもついて行く」ということ、最悪のことを揶揄したものだが。

「シニア世代の外出動線」から次の“気づき”へ!

さてこの事態は現役のシニア世代にもつながっていることなのだろうか。結論からいえばこの「濡れ落ち葉」とういうキーワードはすでに死語になりつつあるといえそうなのである。シニア世代の女性は当然なのだが、男性もとにかくよく外出しているのだ。専門的な言い方をすれば多様で頻度の高い外出動線を保持している。

一昨年に2,000サンプルほどでこの世代の外出行動を調査した結果がある。「ほぼ毎日」外出している人が4割弱、「週4~5日程度」という人まで含めれば7割近い人が外出しているのだ。60代の前半まではまだ現役世代が多いので当然といえるが、それ以降でも落ちないのだ。データで見ても「濡れ落ち葉」は死語になっているようだ。

このデータはある“気づき”に基づいて調査されている。そしてその先の“気づき”を作っていくことこそが重要といえる。それは、「どんな時間帯に、どれくらいの時間数を、どこに、誰と」といったシーンの具体性が問題なのである。

この外出動線の核となっているのが、基本的には夫が「一人」での外出行動なのである。家という場所から、夫が一人で外に出かけて行くとういうシーンは「避難路」をつくり「避難場所」に向けての脱出行為ということになる。もちろん、妻は妻で「一人」での外出行動をもともと頻度高く持っていた。シニア世代の昼間時間帯の家は、まったく空っぽということが主流だとみておく必要がある。



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お互いの外出動線の確保は、シングルミックスの生活スタイルを成立させていくための最大の前提条件なのだ。そして、「どこに、どんなことをするために、、、」。ここからが次の“気づき”をみつけていくポイントになる。

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