【事例あり】サンクコスト効果とは?対策やマーケティングへの応用
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マーケティングを行う上で、無駄なコストを生み出さないために、サンクコスト効果について知っておくことは重要です。今回は、サンクコスト効果の概要や具体例をはじめ、陥らないための対策、さらにこの心理効果をマーケティングに活かす方法について詳しく解説します。
サンクコスト効果とは
サンクコストとは、過去に支払った費用のうち、将来的に回収が難しいコストを指します。過去コストや埋没費用とも呼ばれ、具体的にはオフィスの賃借料、設備投資費用、広告キャンペーン費用などが該当するでしょう。これらの費用は、会社にとって利益を生む可能性があるものの、直接的に回収することは困難です。
サンクコスト効果とは、回収できないコストに固執してしまい、取り戻そうとさらに投資をしてしまう心理状態を指します。例えば、失敗すると予想されているプロジェクトに対して「ここまで投資してきたのだから」と考えて撤退できず、さらに資金を注ぎ込んでしまう状態です。
この心理状態は、合理的な意思決定を妨げるため、経営において注意しなければならないことのひとつでもあります。
サンクコスト効果の例
広告費
広告費は、マーケティングにおいて典型的なサンクコストの一例です。広告キャンペーンに投入された費用は、たとえ売上が向上したとしても直接的な回収は難しく、回収不能なコストに該当します。
広告の効果が見込めない場合でも、「ここまで費用をかけたから」との心理が働き、広告を打ち続ける選択をしてしまいがちです。無駄な費用が膨れ上がる可能性が高まり、資金を他の有益な施策に回せなくなるおそれがあります。
広告戦略の見直しを怠ると、サンクコスト効果による無駄が発生しやすくなるため、適切な費用対効果の評価が必要です。
新規事業参入
新規事業への参入は、多くの資金を必要とします。初期投資として設備導入や人材確保、マーケティング費用など、多岐にわたるコストが発生しがちです。
事業がうまくいかない場合でも、「これまでの投資を無駄にしたくない」という感情によって、サンクコスト効果を引き起こすことがあります。その結果、事業の撤退をためらって、さらなる資金投入を選択するケースが少なくありません。
このような状況は、最終的に損失を拡大させるリスクがあるため、客観的なデータに基づいた意思決定が重要です。成功の見込みが薄い場合は、早期撤退を決断する姿勢が求められます。
サンクコスト効果に陥らないための対策
サンクコスト効果は、意思決定を非合理的なものにし、ビジネスの成長を妨げる可能性があります。これを防ぐためには、意識的に対策を講じることが重要です。
ここからは、サンクコスト効果に陥らずに合理的な判断を維持するための方法を解説します。
サンクコスト効果について理解する
サンクコスト効果を理解することは、この心理的バイアスに陥らないための第一歩です。自身がどのようにサンクコスト効果の影響を受けているかを把握すれば、合理的な判断ができていない可能性に気づけます。
事業の進退やマーケティング施策の継続を検討する際には、冷静にデータや成果を分析する姿勢が重要です。感情に流されることなく、状況を客観的に見直すことができれば、より合理的で戦略的な意思決定が可能になります。
このようにサンクコスト効果の影響を理解した視点を持つことで、将来的な成功につながる選択ができるようになるでしょう。
機会費用に注目する
機会費用とは、ある選択をすることで失われる他の選択肢の価値を指します。機会費用を意識することで、時間や資源の有効性を考え、最適な判断をすることにつながります。例えば、面白くない本を「もったいないから」と読み続ける場合、その時間を別の面白い本に費やす機会を逃している可能性があります。
このように、現在の行動が他のより良い選択を阻害していないかを常に考えることが、非合理的な判断を避けるための有効な手段となるでしょう。
第三者の意見を聞く
サンクコスト効果に陥らないためには、第三者の意見を取り入れることも効果的です。自分が進めているプロジェクトや施策について、信頼できる同僚やビジネスパートナーに説明し、客観的な意見を求めると冷静な判断がしやすくなるでしょう。
第三者の視点を得ることで、自分では見落としている問題点や非合理的な思考に気づく可能性があります。例えば、これまでの投資額に固執するあまり、見込みの低い施策を続けている場合でも、他者からのフィードバックによって改善点や撤退の必要性を認識できるかもしれません。
ビジネスシーンでは、信頼できる同僚やアドバイザー、または専門家の意見を参考にすることが、より合理的な意思決定を行うための有効な手段です。
サンクコスト効果をマーケティングに応用するには
サンクコスト効果は、ビジネス戦略の妨げになるとネガティブなイメージが持たれがちですが、逆に上手に活用すればマーケティングの成果を高めることも可能です。この心理的バイアスを巧みに利用することで、顧客の購買意欲を引き出し、継続的な関係を構築できます。
ここからは、サンクコスト効果を実際のマーケティング施策に取り入れる具体的な方法を紹介します。
会員ランクを設ける
会員ランク制度は、サンクコスト効果を活用する効果的なマーケティング手法のひとつです。顧客は、購入額に応じてランクアップし、ポイントや特典が増加する仕組みが採用されます。
この仕組みは、「あと〇〇円で次のランクに到達する」といった具体的な基準が提示されます。そのため、顧客側に「これまでの支出を無駄にしたくない」という心理が働き、追加購入を促進できるのです。
結果として、顧客はより多くの買い物をし、企業との関係を継続する動機が強まるため、売上の増加につながります。会員ランク制度は、顧客のリピート購入を効果的に引き出すための戦略的なツールといえるでしょう。
お試し版を提供する
無料お試し版の提供も、サンクコスト効果を活用したマーケティング手法です。例えば、1か月間無料でツールを利用できる場合、ユーザーはその期間中に操作方法を習得し、効果的な使い方を模索します。
新しいツールの学習や習得には時間と労力がかかるため、1か月後に契約を中断すると、それまでの努力が無駄になると感じることがあるのです。この感情がサンクコスト効果を引き起こし、ユーザーは継続利用を選びやすくなります。
お試し版を通じてユーザーにツールの価値を理解させるとともに、すでにかけたコストや時間を無駄にしたくないという心理を利用できるでしょう。
付録・特典をつける
付録や特典を活用することも、サンクコスト効果を引き出す効果的な手法です。顧客は、購入時に得られる付録や特典を魅力的に感じ、それを得るために継続的に商品やサービスを利用しようとする心理が働きます。
特に、シリーズ化された付録や特典は「すべて集めたい」という欲求を刺激し、顧客はこれまでの購入履歴を無駄にしないために追加の支出をする傾向が強まるでしょう。例えば、シールを一定数集めると特典がもらえる仕組みも、この心理を効果的に利用する方法です。付録・特典は、顧客の購買意欲を促進し、ブランドへの忠誠心を高めることにつながります。
まとめ
サンクコスト効果は、非合理的な意思決定を招くリスクがある一方で、効果的に活用すればマーケティングにも役立つ心理的バイアスでもあります。大切なのは、その特性を正しく理解し、適切な対策を取ることです。合理的な戦略を取り入れることで、ビジネスの成長を促進させられます。今回紹介した方法を活用し、より良い意思決定を目指しましょう。