マーケティングコラム
【事例あり】SWOT分析とは?目的や具体的なやり方
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SWOT分析は、経営分析の一種です。強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)の4つのカテゴリーに分けて自社を見つめ直し、マーケティングに活かします。マーケティングをする上で必要不可欠なフレームワークとして知られていますが、なぜ重要なのか、疑問に感じている方もいるのではないでしょうか。今回は、SWOT分析の目的や具体的なやり方について解説します。
SWOT分析の目的
SWOT分析は経営分析の一種で、マーケティングに欠かせない分析方法です。ここでは、SWOT分析を行う目的について解説します。広告戦略に活かす
広告戦略やマーケティング戦略はコストパフォーマンスが大切です。顧客の獲得には一定のコストがかかるものですが、コストをかけても効果がなければ意味がないので、やみくもに進めるのは得策ではありません。SWOT分析をすれば、自社の強みや弱みを改めて見つめ直すことができます。自社の強みを把握し、強みをアピールしたほうが効率的に宣伝を行うことができるのです。
同業他社との差別化に役立てる
同業他社との差別化は、企業が生き残るために必須の戦略です。差別化するには、自社の強みを伸ばすことが大切です。どの企業にも必ず同業他社より秀でた部分があるので、強みを知って上手に伸ばす必要があります。強みを活かして自社独自の商品やサービスを展開したり、同業他社にはできない自社なりの方法で顧客ニーズに対応したりすることで、ファンを獲得して売上につなげるのです。
企業ブランディングの方向性を考える
企業ブランディングの方向性を考えるためには、市場の動向や規模、市場のなかでの自社のポジショニングを認識しておかなければなりません。マーケティング戦略で成果を上げるには、自社の強みを伸ばしながら弱みの部分を改善し、自社が置かれている環境などを分析して適切な戦略を打つ必要があります。
企業のリスクを見つける
SWOT分析では、自社の強みだけでなく、自社を取り巻く環境の脅威などネガティブな要素についても分析します。今後環境の変化によって自社に降りかかる脅威の分析を行い、懸念材料となる前にリスクを見つけておくことが重要です。事前にリスクを見つけておくことで、将来起こり得るかもしれないリスクの対策ができます。いざ起こってしまってから、慌てて対策を講じるのでは遅いケースが多いです。事前に予測しておくことで余裕が生まれるので、損失を最小限にしましょう。
ビジネスチャンスを掴む
SWOT分析では、自社が置かれている環境のなかで、自社だけでなく業界全体の追い風となる社会の動きについて分析も行います。追い風に乗るために自社の強みをどのように伸ばすかを検討し、市場のなかでの地位獲得につなげます。強みと合わせてチャンスを分析することで、今後自社にどのようなビジネスチャンスがあるのか明確になるのです。
SWOT分析のやり方
SWOT分析は、それぞれ順番に分析したあとに、クロス分析を行うのが一般的です。ここでは、SWOT分析のやり方を紹介します。目的を明確にする
SWOT分析を行う前に、何のために分析を行うのか目的を明確にすることが大切です。例えば、目的が勝機を探ることとリスクを回避することでは、分析内容も変わります。目的が定まらないまま行うと結果として具体的な戦略が打ち出せない場合があるので注意しましょう。分析の目的を明確にし、常に念頭に置いておくことで、より精度の高いSWOT分析を行うことができます。
外部環境の分析をする
まずは外部環境の分析から始めます。SWOT分析の機会(Opportunity)と脅威(Threat)の部分です。機会と脅威の分析には、PEST分析とファイブフォース分析を使うのがおすすめです。PEST分析では、政治(Politics)、経済(Economy)、社会(Society)、技術(Technology)の4つの視点から外部環境を分析します。PEST分析を行うと、俯瞰的にマクロな視点で外部環境の分析が可能です。
ファイブフォース分析では、競合他社、代替品の脅威、参入障壁、買い手の交渉力、売り手の交渉力の5つの脅威を分析します。自社の収益に大きく関わる脅威について細かく分析しましょう。
内部環境の分析をする
外部環境の分析が終わったら、内部環境の分析を行います。SWOT分析の強み(Strength)と弱み(Weakness)の部分です。内部環境の分析では、4C分析と4P分析を使うのが一般的です。4C分析では、顧客価値(Customer)、コスト(Cost)、利便性(Convenience)、コミュニケーション(Communication)の4つのCを顧客目線で分析します。顧客が商品やサービスを購入するに至るまでの意思決定に影響する部分について考えてみましょう。
4P分析は、商品(Product)、価格(Price)、流通チャネル(Place)、プロモーション(Promotion)の4つのPを企業目線で分析します。自社が顧客にどのように価値を伝えるかについて分析してみましょう。
クロス分析で戦略を練る
ここまでの分析は自社の現状を整理しただけの状態なので、ここから戦略に落とし込むには、内部環境と外部環境を掛け合わせたクロス分析を行う必要があります。「強み×機会」のクロス分析では、自社がもっている強みを生かして、現在吹いている追い風に乗る方法を検討します。強みを生かして自社の花形になり得る戦略を打ち出しましょう。
「強み×脅威」のクロス分析では、強みを生かして迫り来る脅威にどう立ち向かうのかを考えなければなりません。リスクを避けつつ、そのなかで利益を最大化するために強みをどう生かすのかを検討する必要があります。
「弱み×機会」のクロス分析では、弱みを改善して追い風に乗る方法を考えましょう。この戦略を成功させると、売上が一気に伸びる可能性があるため、実現可能性が高い戦略を考えるのがおすすめです。
「弱み×脅威」のクロス分析では、弱みを踏まえつつリスクを最小限に留める方法を考えますが、最終的に撤退を検討するのもひとつの方法です。この部分を伸ばすよりも、上記の3つの戦略を伸ばすほうが利益の最大化を狙えます。
【事例】SWOT分析例
SWOT分析の方法を踏まえつつ、ここではSWOT分析の事例を紹介します。建築業:過疎化地域の着工数減少を改善する戦略を立案
建築業のある大手企業は、過疎化地域の着工数減少によって売上が減っていることと人員と建築機械の余剰時間が多いことが課題でした。SWOT分析を活用して自社が請け負っている過疎化地域の着工数減少を食い止めるための戦略を考えます。この企業のSWOT分析は下記の通りです。
強み:社員数の多さと資金力・技術力の高さ、社員に農業経験者が多い
弱み:過疎化地域の工事数が減り、建築機械や技術を持て余す時間が増えている
機会:農業への新規参入が容易になった、建設業の異業種への参入の奨励
脅威:過疎化による工事数の減少、住宅新築需要の減少
結果的に、この企業は弱みである建築機械と人員の余剰時間を無駄にしないために、新規参入が容易になった農業への参入を決めました。
製造業:新規顧客獲得を目指す戦略を立案
オーダーメイドで部品を製造する企業は、SWOT分析を活用し新規顧客獲得を目指しました。この企業のSWOT分析の例は下記の通りです。強み:顧客の要望に沿う柔軟な対応力、オーダーメイドの部品であり参入障壁が高い
弱み:要望に合わせて発注するためコストが高い、納期の長期化が進みスピード感に欠ける
機会:将来的に顧客となり得る業種の企業が地域内に増えている
脅威:短納期とコストカットを実現する競合他社が出てきた
結果的に、オーダーメイドという強みを活かして、錆びない素材で部品をつくることができると海沿いに会社を置く造船会社に営業をかけ、新規顧客を獲得しました。
小売業:来客数を増やす戦略を立案
スーパーなど、メーカーが卸す商品を売っているような小売業でも、SWOT分析を活用すれば来客数増加を目指すことができます。この企業のSWOT分析は下記の通りです。強み:契約農家から直接オーガニック野菜を仕入れている
弱み:SNSなどインターネットの活用が苦手である、総菜など加工品の売上が伸びない
機会:高齢化している地域に立地しており、最も家から近い当店に足を運ぶ高齢者が多い
脅威:郊外に大手スーパーがオープンし、若年層が大手スーパーに流れている
このスーパーは、高齢の顧客が多いことをチャンスとし、自社の総菜の配送サービスを始めることで、弱みを克服できます。また大手スーパーには真似できないきめ細かなサービスで差別化を図ることにもつながるのです。
まとめ
自社の強みや弱み、自社にとっての機会や脅威は、一見わかっているように感じるかもしれません。しかし、実際にSWOT分析として紙や表に落とし込んで明文化してみると、これまで気づけなかった新しい発見につながることもあります。「新たな戦略を打つべきか」「既存の戦略を強化すべきか」などマーケティング戦略を立てる上で迷ったときは、SWOT分析をして現状を整理することも大切です。今回紹介した例を参考に、SWOT分析で自社の利益を最大化する方法を考えてみましょう。