マーケティングコラム
ヘッドレスCMSとは?通常CMSとの違いやECにおける将来性を解説
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2019年に新卒で独立し、2020年に「株式会社Curiver」を設立。SEO対策とコンテンツマーケティングを軸にした
Webマーケティングの代行、SEO記事やWebサイト、動画、ホワイトペーパー制作の代行業に従事。
手軽にコンテンツを管理できるCMS(コンテンツマネジメントシステム)は、多くのWebサイトで活用されています。しかしセキュリティや運用コスト、表示速度などの面で注意点があるのも事実です。そこで注目されているのが、セキュリティや運用コスト、表示速度などの面でメリットがある「ヘッドレスCMS」です。本記事ではヘッドレスCMSの概要から通常のCMSとの違い、ECサイトにおける将来性について解説します。
柄木田 裕哉
ヘッドレスCMSの概要
「WordPress」に代表されるCMSとは、Webの管理画面上で記事や動画などのコンテンツ管理から、配信まで一貫して行える仕組みのことです。一方、ヘッドレスCMSとはコンテンツの管理に特化した表示画面(ヘッド)が設けられていないCMSを指し、代表的なものに「Jamstack」があります。コンテンツ管理特化型のCMS
一般的なCMSは、コンテンツを編集・管理するバックエンドと、実際にユーザーへコンテンツを表示させるフロントエンドが一体化されていますが、ヘッドレスCMSはバックエンドのみで構成され、コンテンツの管理に特化している点が特徴です。また、ヘッドレスCMSはAPI連携により、Webサイトをはじめモバイルアプリやデジタルサイネージ、スマートウォッチなどでコンテンツを配信できます。そのため、Webサイトに限らず複数の媒体やデバイスで容易にコンテンツを表示させることが可能です。
ヘッドレスCMSが必要な理由
ヘッドレスCMSが必要とされる主な理由は、フロントエンドのカスタマイズ性に優れているためです。通常のCMSはデータベースや管理画面を指すバックエンドと、ユーザーが直接目にするフロントエンドがまとまっています。その関係上、フロントエンドをカスタマイズする際には、一般的にバックエンドからフロントエンドまでエンジニアのサポートが必要です。
ヘッドレスCMSは通常のCMSと違ってバックエンドが独立しているため、コンテンツを配信する際、Webサイトやモバイルアプリなど表示させたい媒体に応じて、柔軟にフロントエンドをカスタマイズすることが可能です。
そのため、複数のチャネルで活用するコンテンツを一元的に管理したい場合や、Webサイト以外でコンテンツを配信したい場合に適しています。
通常のCMSとの違い
通常のCMSとヘッドレスCMSの違いは、コンテンツを表示する表示画面の有無です。通常のCMSは、コンテンツを蓄積するデータベースやコンテンツを編集する管理画面、表示画面がまとまっている点が特徴です。一方でヘッドレスCMSでは、データベースや管理画面といったバックエンドは存在するものの、コンテンツの表示画面は存在せず、APIを活用して配信・表示します。
ヘッドレスCMSを使うメリット
ヘッドレスCMSには、以下のような3つのメリットがあります。それぞれ詳しくみていきましょう。サイトの高速表示が可能
ヘッドレスCMSを活用する1つ目のメリットは、サイトの高速表示が可能な点です。従来型のCMSは、コンテンツの管理から配信までを一貫して行う関係上、読み込み時間が長くなりやすく、表示速度が遅くなりやすい傾向にあります。一方ヘッドレスCMSでは、コンテンツの管理と配信が分断されているため、高速表示がスムーズです。サイト運用においてページの読み込み速度や表示速度は、SEO(検索エンジン最適化)の観点やユーザーの離脱を避けるためにも重要な要素になっています。
運営コストを抑えられる
ヘッドレスCMSを活用する2つ目のメリットは、運営コストを抑えられる点です。通常のCMSでは、一般的にデータベースをはじめ、デザインテンプレートやプラグインなどのソフトウェアをサーバーに直接インストールする必要があります。そのためインストールするソフトウェアやコンテンツによっては、大きなサーバーコストやスペックが不可欠です。しかしヘッドレスCMSでは、基本的にデータベースをAPIで連携し、コンテンツを発信します。そのため直接サーバーにソフトウェアやコンテンツなどのデータをインストールする必要がなく、通常のCMSに比べてサーバーコストやスペックも少なく済みます。よって運用コストを抑えられ、特にWebサービスを提供する際には大きなメリットです。
セキュリティレベルが高い
ヘッドレスCMSを活用する3つ目のメリットは、セキュリティレベルが高い点です。通常のCMSの代表格である「WordPress」は、オープンソースであることからサイバー攻撃のターゲットにされやすい傾向にあります。また、通常のCMSは、表示画面を生成する際にコンテンツのデータファイルと動的ファイルをやりとりするプロセスが生じます。その点、ヘッドレスCMSでは、表示画面生成の際に動的ファイルを生成しないため、サイバー攻撃の対象になりにくく、高いセキュリティレベルを保持できます。
通常のCMSはサイバー攻撃を受けた場合、サイト全体に悪影響が生じる可能性がありますが、ヘッドレスCMSはサイバー攻撃を受けても、フロントエンドとバックエンドが分かれているため、サイト全体に悪影響が生じにくいといえるでしょう。
ヘッドレスCMSを使う際の注意点
上記のようにヘッドレスCMSはメリットが多い反面、次の注意点も存在します。これらの注意点は通常のCMSを扱う際にも関連することがありますが、ヘッドレスCMS導入を検討する際にも押さえておきましょう。エンジニアが不可欠
ヘッドレスCMSを使う際の1つ目の注意点は、導入時にエンジニアが不可欠な点です。ヘッドレスCMSの導入時には、基本となるインターフェースは選択できるものの、APIの実装に関しては、専門的な知識を有するエンジニアが必要です。そのため、エンジニアにAPIの実装によってコンテンツの配信基盤を構築してもらった上で、コンテンツを発信する必要があります。
入稿コンテンツに上限が設けられている
ヘッドレスCMSを使う際の2つ目の注意点は、入稿コンテンツに上限が設けられている点です。通常のCMSに比べ、大量のコンテンツ配信にも適しているヘッドレスCMSですが、サービスやプランごとに入稿できるコンテンツ数には上限があります。中にはコンテンツ数が無制限となっているサービス・プランもありますが、配信を想定しているコンテンツ数と、該当のサービス・プランにおける上限との兼ね合いを確認してから、導入を進めましょう。
別途ツールの用意が必要な場合がある
ヘッドレスCMSを使う際の3つ目の注意点は、別途ツールの用意が必要な場合がある点です。ヘッドレスCMSはカスタマイズ性に優れている点が特徴ですが、その反面、自社に適したツールでカスタマイズし、配信環境を構築する必要があるといった見方もできます。また、静的なページに対応している一方、動的機能の導入には適していないケースもあります。そのため運用方法や活用を検討しているツールとの兼ね合いを鑑みた上で、導入を進める必要があります。
ヘッドレスコマースの将来性
ヘッドレスCMSは、コーポレートサイトやオウンドメディアといった一般的なWebサイトでの活用はもちろん、ECサイトにおける活用や将来性も期待されています。ヘッドレスCMSを使用したECサイトは「ヘッドレスコマース」と呼ばれ、米国では大手企業のみならず、中小企業でも活用が拡大傾向にあります。通常のECサイト運営では、商品の在庫状況や決済・配送システムなどのバックエンドと、フロントエンドが一元的に管理されています。一方でヘッドレスコマースでは、フロントエンドとバックエンドを分けて管理できます。
そのため、バックエンドのシステムに依存せず、ユーザーに適したフロントエンドのデザインを構築できます。さらにターゲットに応じてコンテンツを配信しやすいため、ユーザービリティの高いECサイト運用を実現できるのです。こうした点からヘッドレスコマースは、将来性が期待されています。
ヘッドレスコマースを採用したECサイトの事例
ヘッドレスコマースを採用することで、より最適化されたデザインの構築やコンテンツ配信が期待できます。ここではブランディング戦略や既存CMSからの移行を想定し、ヘッドレスコマースを採用したECサイト事例を解説します。ブランディング戦略による導入
ヘッドレスコマースを活用すると、Webサイトに加えモバイルアプリやスマートウォッチなど、多様なチャネルでブランディング戦略に有用なコンテンツを配信できます。記事や動画など、チャネルごとに適した種類のコンテンツを柔軟にカスタマイズすることで、見込み客にとって適した高品質なコンテンツの提供が可能になるためです。
さらに同様の商品でもターゲット層に応じて複数のECサイトを構築し、ターゲットに合わせたECサイトで商品を訴求することで、ブランディング施策をより最適化できます。
既存CMSからの移行
ヘッドレスコマースは提供するコンテンツの最適化や工数削減、配信スピードの面でメリットが大きいことから、既存のCMSから移行する事例も増加傾向にあります。ECサイトの集客やブランディングに活用するコンテンツは記事や画像に限らず、動画を活用するケースも増えています。活用するコンテンツが多様化する分、ECサイトの運営者側は複雑な管理と対応が求められます。
ヘッドレスコマースであれば、コンテンツをバックエンドで管理しつつ、チャネルに合わせて配信可能です。そのため管理面での工数が削減でき、スピード感を持って見込み客へコンテンツを提供できます。