マーケティングコラム

クリエイター・エコノミーとは?市場規模や日本での実態を解説

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中小企業診断士/MBA/魅力発信ブランディングコーチ
株式会社アイリスプランナー代表取締役

外資系ブランドで27年のマーケティングの経験からマーケティング専門の経営コンサルタントとして、
クリニックや起業家250社以上の経営戦略・マーケティング支援・オンラインビジネス化をサポート。
インターネット・デジタル化の進展とともに、クリエイター・エコノミーという新たな市場が生まれ、成長し続けています。コロナ禍でインターネットの利用時間が増え、これまで視聴者・消費者の立場だった個人が、今度はクリエイターとして発信者・販売者になり、デジタル空間で収益を上げ始めました。今回は、クリエイター・エコノミーの市場規模やクリエイターが実際に収益を得る方法、今後の可能性について解説します。

奥野 美代子

クリエイター・エコノミーとは?

クリエイター・エコノミーとは、インターネット上で個人クリエイターが商品・サービスを提供し、収益を上げるデジタル市場です。さまざまなメディアを介して行われる、個人クリエイターの情報発信や行動によって形成された消費・生産・販売の経済活動の場ともいえるでしょう。

クリエイターには、アーティスト、プロゲーマー、YouTuber、ライバー、ブロガー、ジャーナリストなど、さまざまな個人の発信者が存在します。彼らは文字、画像、動画、ライブなど多様なコンテンツの販売、関連サービスや商品の販売、イベント開催などで収益を上げています。

クリエイター・エコノミーの市場規模

インフルエンサー・マーケティング調査会社「Influencer Marketing Hub」による2022年の調査によると、同年クリエイター・エコノミーの世界の総市場規模は約1,040億ドル(日本円約12.6兆円/2022年3月時点)に達する見込みとなり、世界中で5,000万人以上がコンテンツクリエイターとして活動しています。
日本では、ネット上で個人が発信するサービスを提供している「base」や「note」が中心となり、クリエイターが活動しやすい社会環境を提供することを目的として2021年7月にクリエイター・エコノミー協会が設立されました。

出典:Influencer Marketing Hub |インフルエンサーマーケティングの現状2022:ベンチマーク レポート
https://influencermarketinghub.com/influencer-marketing-benchmark-report/

クリエイターエコノミーの歴史

クリエイター・エコノミーの歴史は、1999年にスタートしたブログサービス「Blogger」から始まりました。当時、写真や文章をWebに投稿するのは専門的な知識がなければ難しいというイメージがありましたが、同サービスの登場により誰でも気軽にブログを始められるようになったのです。さらに、2005年に動画配信サービス「YouTube」、2010年に写真共有アプリ「Instagram」がそれぞれ登場。この3つのサービスで個人の発信の場が大きく広がりましたが、当時はまだ情報発信のみで、発信したコンテンツを収益化する仕組みはありませんでした。
その後、2008年にYouTubeの広告サービスが始まり、YouTubeから一部のクリエイターに利益が還元される仕組みができました。2010年以降は影響力の強い「インスタグラマー」と呼ばれる人たちが現れ、彼らにSNSで商品を宣伝してもらうインフルエンサー・マーケティングが拡大しました。

クリエイター・エコノミーはなぜ注目されている?

クリエイター・エコノミーが注目されるようになったのは、2つの環境変化により、さまざまなジャンルのコンテンツ販売などで稼ぐ個人クリエイターが増えてきたからです。

一つは、Web環境の変化です。「YouTubeショート」や「TikTok」、Instagramの「リール機能」などで、スマホで撮影した短時間動画を配信できるようになり、専門知識や撮影機材がなくても個人が気軽に発信できるようになりました。

もう一つは社会的環境の変化です。TVよりYouTubeを楽しむ人が増加傾向にあった中、新型コロナウイルスの影響でおうち時間が増えたことから、SNSなどでクリエイターではない一般人の発信を目にすることが多くなりました。その結果、発信そのものに興味を持ち、視聴者から発信側に回ろうとする人が増えています。

クリエイターエコノミーを形成する3つのカテゴリ

クリエイター・エコノミーは、大きく分けて以下の3つのカテゴリーで成り立っています。

メディアプラットフォーム

メディアプラットフォームとは、動画・画像配信の「YouTube」、「Instagram」、「Twitch」、「TikTok」、音楽配信の「iTunes」、「Spotify」、文字情報発信の「note」など、オンラインでコンテンツを配信するためのサービスです。配信プラットフォームだけでなく、コンテンツ制作に関するサービスとして、動画や画像編集ソフトを提供する「Adobe」や「Canva」のほか、「iStock」や「PIXTA」などの写真・画像ストックサービスも含まれます。

インフルエンサー・マーケティング

特定のターゲットに大きな影響力を持つインフルエンサーに、企業の商品やサービスをSNS上で紹介してもらうことで認知拡大や売上アップにつなげるマーケティング手法です。企業が特定のターゲット層を想定顧客とする場合、ネット広告にお金をかけるより、影響力のあるインフルエンサーからSNS上で推奨してもらった方が購入につながりやすいケースもあるため、SNSが一般的になった昨今ではインフルエンサーへ広告依頼が増えています。インフルエンサー・マーケティングには、インフルエンサーを紹介する代理店や効果測定するCRMツールサービスも含まれます。

オーディエンスによる直接課金

オーディエンスとは、Webマーケティングで広告を発信する際のターゲットとなる消費者のことで、オーディエンスがクリエイターの商品やサービスに直接課金するツールも数多くあります。
直接課金の方法としては、作った商品やスキルを販売する「BASE」や「ココナラ」といった通販サイト、「Adobe Stock」や「Shutterstock」など写真や画像の販売サイト、情報や知識を販売する「note」や電子書籍、オンラインのレッスンや学習コースを販売する「ストアカ」や「Udemy」などがよく利用されています。
クラウドファンディングで支援者に応援を依頼するのも、直接課金の一つの方法です。


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クリエイターが収益を得る方法

クリエイターが収益を上げる方法はいくつかあります。代表的な4つの方法を紹介しましょう。

クラウドファンディング

クラウドファンディングは、実現したい事業の資金集めを目的に、企業やクリエイターが起案者としてクラウド上にプロジェクトを立ち上げ、それを応援する支援者が資金提供するための仕組みです。
主なクラウドファウンディングサービスとして、ガジェットなどの商品開発、サービス開発、舞台・演劇の活動費など幅広いジャンルをカバーする「CAMPFIRE」、ファッション、フード、飲食店を中心に低価格の応援資金が設定できる「Makuake」、スポーツチームやアイドルなどの応援プロジェクトがメインとなる「FiNANCiE」などがあります。
クラウドファウンディングの成功例としては、バーチャルシンガー・花譜のワンマンライブ開催のためのプロジェクトが有名です。2019年と2021年、二度にわたるクラウドファウンディングを行い、目標金額を大幅に上回る1億円以上の支援金が集まりました。

出典:CAMPFIRE|みんなで作る!花譜セカンドワンマンライブ
https://camp-fire.jp/projects/view/409416

月額課金

月額課金のサブスクリプション型の継続支援を行う仕組みとしては、会員制プラットフォーム「Patreon」があります。YouTubeコンテンツ製作者やミュージシャンをはじめとしたクリエイターを応援するパトロン(ファン)に対し、毎月または作品のリリース時に会費を請求・決済してクリエイターに支払う集金代行サービスです。クリエイター自身が会費を決める形で、ファンに応援してもらうことができます。
ブログ感覚で有料のニュースレターを配信できるアメリカ発の月額の購読サービス「Substack」も、ニッチな読者に向けて情報発信したいライター起業家の利用が増えています。

eコマース

eコマースは、ハンドクラフトやアート作品からデジタルデータまで、クリエイターが直接自分のファンである消費者に販売する「D2C(消費者直接取引)」という方法です。プラットフォームとしては「BASE」や「Shopify」の通販サイトが使われています。
最近のeコマースでは、ライバーと呼ばれるクリエイターがライブで商品・サービスの紹介をするライブコマースが増えています。ファンが集まるSNSで告知し、インスタライブで配信するのが効果的です。

ファン・オーディエンスからのギフティング(投げ銭)

投げ銭は、YouTubeのライブ配信時などに、視聴者であるファンが何らかの形でお金を送って応援の気持ちを伝えることができるシステムです。寄席やショーでのおひねりを投げる習慣に似ていることから、投げ銭と呼ばれています。
YouTubeでは「投げ銭(スーパーチャット)」の機能を使って、1回につき100円~5万円まで、1円単位で送ることができます。
ライブ配信アプリ「Pococha(ポコチャ)」や「SHOWROOM」はコインやゴールドをあらかじめ購入した上で、配信中に投げ銭します。

クリエイター・エコノミーとNFTやメタバースなどWeb3.0の関係性

「NFT(Non-Fungible Token=ノンファンジブル・トークン)」はクリエイター・エコノミーの新しい方法の一つで、「非代替性トークン」とも呼ばれています。

NFTは、仮想通貨で用いられているブロックチェーン技術を利用しており、データの改ざんができない仕組みであることから資産性の高いデジタルデータを生み出すことが可能です。NFTの技術はアートにも利用することができ、代替不可能なデジタルアートとして高い価値をつけることができます。ゆえに、金銭的なリターンをもたらす投資としてNFTを発行するビジネスモデルも生まれています。

一方でNFTはまだ新しい概念であり、「メタバース」「アバター」「Web3.0」など今後の技術進展により、新たな収益化の可能性が広がりつつありますが、所有権や著作権について法的な根拠が定められていない点も多いので注意が必要です。

クリエイター・エコノミーの課題

クリエイター・エコノミーの急速な発展に伴って、個人のクリエイターが収益を上げる機会が増えていますが、以下のような課題も浮き彫りになってきました。

・一部のクリエイターに収益が集中する
・有名人が市場を独占し、収益を上げられないクリエイターが増える
・プラットフォームの規定・仕様変更の影響で収益が下がる例がある
・海外のプラットフォームサービスも多く、クリエイターの権利問題が複雑

クリエイター・エコノミーは個人が活躍できる経済圏といっても、基本はリアルのビジネスと変わらず、サービスの提供と回収の場がインターネット上に広がっただけともいえます。自分のビジネスの設計図をしっかりと描き、Web環境の変化を最大限に活用していきましょう。

まとめ

クリエイター・エコノミーにより、インターネットの世界では誰でもクリエイターとして収益を上げることができるようになりました。一方、まだまだ発展途上の市場でもあり、Web3.0時代に向けて収益を得る方法やWeb環境も変化していくと考えられます。課題もありますが、今後ますます細分化し、拡大していくでしょう。

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