- マーケティングコラム
インターナルブランディング(インナーブランディング)って何?事例とともに紹介!
株式会社アイリスプランナー代表取締役
外資系ブランドで27年のマーケティングの経験からマーケティング専門の経営コンサルタントとして、
クリニックや起業家250社以上の経営戦略・マーケティング支援・オンラインビジネス化をサポート。
奥野 美代子
2022 / 11 / 18
ブランディングというと、ブランドイメージの向上など社外に向けた施策をイメージする人が多いでしょう。しかし、最近では社外に対するエクスターナルブランディングに加えて、社内に向けたブランディング、いわゆる「インターナルブランディング」に取り組む企業も増えています。この記事では、インターナルブランディングに取り組みたい企業の担当者に、エクスターナルブランディングとの違いや具体的な実施方法を事例とともに紹介します。
インターナルブランディング(インナーブランディング)とは
ブランディングとは一般的に外部に自社の魅力を伝える活動を指しますが、社外に対するブランディングをエクスターナルブランディング、社内に対するブランディングをインターナルブランディング(インナーブランディング)と区別することもあります。それぞれ詳しく解説します。そもそもブランディングって何?
ブランディングとは、自社の企業イメージや商品の価値を正しく伝え、顧客の信頼や共感を得ることにより、他と区別した上で「〇〇だったらA社」と選ばれることを目指すマーケティング活動です。「ブランド」という言葉は、ノルウェーの古ノルド語で「焼印をつける」という意味を持つ「ブランドル(BRANDR)」が語源です。かつてノルウェーでは、放牧している牛などの家畜と他の家畜を区別するために、家畜の体に焼印をつけており、そこから派生して「ブランド=他と区別する印」という意味を持つようになりました。
ブランディングには、社外向けのエクスターナルブランディングと内部の従業員・関係者に対するインターナルブランディングの2種類があります。
エクスターナルブランディング
エクスターナルブランディングは、メディアやSNSなどさまざまなツールを駆使し、社外に向けて自社の考えや顧客に提供する価値を伝える活動です。こうした活動は有名ブランドや大手企業が行うことで、「シャネル」や「ナイキ」などの象徴的なロゴや旗艦店があってこそだと誤解されがちですが、実は中小企業にも大切なことです。同じような商品・サービスを提供している会社が他にもある中で、自社を選んでもらうには、「〇〇だったらA社」というイメージが想起されなければなりません。そのために、エクスターナルブランディングを通して社外に商品やサービスの価値などを伝える必要があるのです。
インターナルブランディング
インターナルブランディングは社内に向けて企業理念や行動指針の浸透を促し、自社の商品・サービスの価値を伝える活動です。外部に自社の価値を伝えていくのは、社内でさまざまな業務に取り組む一人ひとりの従業員です。従業員がインターナルブランディングに取り組むことで、自社に対する理解が深まり、商品やサービスの品質が向上する効果があります。もしブランディングコンサルタントなど外部の専門家を使い、エクスターナルブランディングに取り組んでも、インターナルブランディングができていなければ、ブランドのイメージと従業員から受け取るサービスの価値にギャップが生じ、場合によっては顧客の信頼をなくしてしまう恐れがあります。
インターナルブランディング(インナーブランディング)の目的
インターナルブランディングを行う目的は、企業理念や自社の価値観を社内で共有した上で、従業員が正しく理解し、それに基づいて行動できるようになることです。企業活動を安定的に進めるためには、内部の意識を揃えなければなりません。インターナルブランディングを継続的に実施することで、従業員が自社の考えや方向性を理解できるようになるだけでなく、人材育成にも役立ち、従業員満足度の向上やコンプライアンス遵守にもつながります。
インターナルブランディング(インナーブランディング)の施策
インターナルブランディングを行うには、次のような施策が有効です。クレドの作成と共有
クレドとは企業の信条や行動指針をまとめたものです。まずクレドを作り、従業員教育や朝礼で継続的に活用します。トラブル発生時や急な判断が必要な時も、クレドを判断の根拠として、従業員が自発的に解決策を考えることができるようになります。広報活動としてSNSの発信を行う
SNS発信を行い、自社の考え方や活動を外部に発信することは、エクスターナルブランディングの一環ですが、実はインターナルブランディングにも効果があります。SNS発信を企業広報と位置付けてチームを作り、継続的に発信していくためには、自社の方向性や価値を把握しておかなければなりません。その上で、経営トップのメッセージや、働く従業員やお客様の声の紹介などを継続してSNS発信をすることで、SNSチームの成長だけでなく社内の価値観共有にも効果があります。人事評価制度に組み込む
人事評価の項目として、部署別のインターナルブランディングの取り組みの達成度や個別の取り組みに関する自己評価などを設ける企業もあります。具体的な施策としては、サンキューカードで相互理解の推進を図ったり、1 on 1ミーティングを取り組んだりすることが挙げられます。インターナルブランディング(インナーブランディング)のメリット
インターナルブランディングは文字通り、社内従業員や組織へのよい影響だけでなく、長期的には外部へのブランディングにも効果を発揮します。具体的なメリットは以下の通りです。従業員の会社に対する愛情の増加
インターナルブランディングに取り組み、企業理念やビジョンが社内に浸透すると、従業員は顧客や社会に提供している価値を意識するようになります。さらに、組織の一員として働く自分の仕事に誇りを持ち、働くモチベーションが上がります。その結果、自社に対するロイヤリティの高い従業員が増加傾向になっていきます。同じ価値観を持つ仲間と働くことに喜びを感じ、会社に対する愛情が増加するという好循環が生まれるのです。組織のパフォーマンス向上
企業の理念やビジョンが社内に浸透し、組織として同じ目的を持って進むことができるようになると社内に連帯感が生まれます。同時に、仲間から認められることに喜びを感じ、一人一人が自発的によりよい成果を求めて仕事に取り組むようになり、全社視点で協力しあう文化が根付くことも。その結果、バックオフィス機能の従業員も含めて業務のパフォーマンスが上がり、顧客対応や情報発信、売上・利益に至るまでよい成果につながるでしょう。従業員定着率の向上
組織全体に理念やビジョンが浸透し、協力して働きやすい環境が整備されると自社で働くことが喜びとなり、従業員の離職が減ります。そして企業のビジョンと自分自身の将来のありたい姿の実現を目指して、目標達成することで成長したいという意識を持つ従業員が増えていきます。新卒採用についても、求職者に自社の企業理念を正しく伝えることで、自社に合った人材の採用につながります。また、インターナルブランディングを推進する中で、外部へ発信する機会も増えると求職者にもその魅力が伝わり、ビジョンを共有する人が入社する可能性が高まるので定着率もアップするでしょう。
インターナルブランディング(インナーブランディング)の施策例
インターナルブランディングの施策例を紹介します。自社で取り組む際の参考にしてみましょう。リッツカールトン
おもてなしのすばらしさで世界的に評価の高いザ・リッツ・カールトングループでは、企業理念と価値観を6つの項目にまとめた「ゴールドスタンダード」が定められています。その中で、クレドとして「お客様への心のこもったおもてなしと快適さを提供することを最も大切な使命」と明記され、すべての規範となっています。また、サービスバリューズとして、リッツ・カールトンの一員としての12の行動指針が具体的に示されています。これらを継続的に学ぶことで、顧客本意の主体的な行動を促す仕組みができています。
出典:ザ・リッツ・カールトン|企業理念「ゴールドスタンダード」
https://www.ritzcarlton.com/jp/about/gold-standards
スターバックスコーヒー
スターバックスコーヒーでは、従業員満足度の向上に力を入れています。正社員だけでなくアルバイトも含めた全従業員が、企業のミッションである「人々の心を豊かで活力あるものにするために― ひとりのお客さま、一杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから」を理解・共感し、段階的に成長続けることができるように「成長の階段」を示しています。Why(自分自身の存在理由)を考え、How(どうやって実現するか)を学び、それを伝えることで仲間と共に成長することが従業員のやりがいとなっています。
出典:【公式】スターバックス コーヒー ジャパン「アルバイト求人情報」
https://starbucks-job.jp/step/
ANAホールディングス株式会社
ANAホールディングス株式会社では、グループ行動指針として「あんしん、あったか、あかるく元気!」に行動できるよう「ANA's Way」を定めています。具体的には「〔1〕安全〔2〕お客様視点〔3〕社会への責任〔4〕チームスピリット〔5〕努力と挑戦」の5項目を中心に自律的な活動を推進しています。ほめる文化の伝承を大切に「Good Job Card制度」や「ANA’s Way AWARDS」という表彰制度を設け、仲間を尊重し認め合う組織文化を醸成しています。
出典:ANA『ANAグループ行動指針「ANA's Way」の推進』
https://www.ana.co.jp/group/csr/human_resources/way/
まとめ
インターナルブランディングは、社内の人材育成や価値観共有はもちろん、社外に向けてのブランディングやファンづくりにも効果を発揮します。成果を上げるには全社で時間をかけて取り組むことが必要です。インターナルブランディングを通し、企業が目指す方向に向かって一人ひとりが成長することで、自立した組織としての持続的な成長が期待できるでしょう。Related Column/ 関連コラム
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