マーケティングコラム
新しい働き方『ワーケーション』とは?事例や今後の課題を解説
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「休みながら働く」という新たな働き方がワーケーションの基本的な考え方です。旅行や帰省中の一定時間を労働時間にあてることで、従業員だけではなく企業や地域にも大きな恩恵をもたらします。今回は、クロス・マーケティングの調査データを参考にしながら、ワーケーションのメリット・デメリットや課題、将来的な普及の見通しなどについて解説していきます。
コロナ時代の新しい働き方・ワーケーションとは?
「Work(仕事)」と「Vacation(休暇)」を組み合わせて生み出された「ワーケーション(Workation)」。勤務先であるオフィスを離れ、休暇を兼ねて観光地などで仕事を行う新しい働き方です。新型コロナウイルスの影響で働き方の自由が確保された結果、リモートワークの一種として生まれました。従業員にとっては、働き場所や勤務時間に縛られず多様な働き方が可能になる他、休暇先で心身共にリラックスできることで仕事の能率を高められます。事実、ワーケーションを実施する企業のなかには、ビーチやリゾート、温泉施設などで仕事を許可するケースも珍しくありません。
また、企業にとっては休暇取得推進の起爆剤となり、地域にとっても地方創生の足がかりになるなど経済効果も期待できるため、政府や各省庁もワーケーションの普及に力を入れています。
※参考:環境省 国立・国定公園、温泉地でのワーケーションの推進事業(http://www.env.go.jp/press/108032.html)
ワーケーションの実態、事例から見える良し悪し
クロス・マーケティングは、山梨大学生命環境学部地域社会システム学科の田中敦教授・西久保浩二教授の研究グループと共同で、「ワーケーションに関する調査(2021年3月)」を実施しました。※出典:https://www.cross-m.co.jp/report/workstyle/20210506workation/
この調査では、直近1年間にワーケーションを行った1,000人に対し、実施内容やその効果について聴取しています。では、実際にワーケーションを経験した人は施策についてどのような感想を抱いたのか、事例からメリット・デメリットを探っていきましょう。
ワーケーションの良かった点
クロス・マーケティングと山梨大学がワーケーションの経験者1,000名に調査を行った結果、以下のような実施効果があることが分かりました。・整理整頓された落ち着いたホテルだからこそ作業に集中でき、能率が高まったと感じた
・出費した金額以上に心身のリフレッシュができたと感じている
・自分の裁量で仕事をする機会が増えストレスが軽減できた。出勤という行為そのものを考えさせられた
なお、ワーケーションを経験した人のうち、その多くがネガティブな意見よりもポジティブな評価を与えています。「再度ワーケーションを行いたいか」という質問に対しても、半数以上が「行いたい」と回答したのは、ワーケーションが好意的に受け取られている証拠です。
ワーケーションの悪かった点
もちろん1,000人のワーケーションの意見は、そのすべてが肯定的なものではありません。少数ながらも、以下のようにワーケーションのデメリットを訴える意見も存在します。・社員と直接顔を合わせて仕事をするときよりも、コミュニケーションに不備を感じる
・常に休める環境と隣り合わせにあるので、オンとオフを切り替えるのが難しい
・場所によってはネットワーク環境が不安定で仕事に差し支えが出ることも
上記の事例のうち、仕事に集中する意識を切り替えるのは非常に困難です。慣れていない人にとって新しい環境に順応するには時間がかかるでしょう。
しかし、コミュニケーションの不備やネットワーク環境の不満といった課題は技術的な問題なので、この先リモートワークが普及することで解消される可能性が高いと言えます。よってワーケーションのデメリットにこだわるよりも、メリットに目を向けて前向きに施策を考えていきましょう。
ワーケーションの今後の課題と展開
ワーケーションという言葉が生まれたのは、2020年7月の菅官房長官(当時)の記者会見が始まりです。それから1年以上が経過した現在、すでにJAL(日本航空)やガイアックスといった企業が積極的にワーケーションを活用しています。今後も数多くの企業事例が生まれるであろうワーケーションですが、いくつか気になる課題も存在します。例えば社員の労働時間の管理について。働き場所を指定するテレワークですら時間管理の難しさが指摘されるなか、ワーケーションでは公私の線引きが困難となり、さらに難解さが増します。
また、ワーケーションを導入する企業は、従業員がスムーズに仕事を行えるための作業環境を構築したり、システムの整備やセキュリティリスクを軽減するための制度を構築しなければなりません。特に中小・零細企業にとっては、時間的・金銭的なコストが重くのしかかってくることでしょう。
しかし、クロス・マーケティングと山梨大学が実施した調査では、会社にワーケーションの体制ができておらずとも本人の判断でワーケーションを実施する「隠れワーケーター」のような人もいることがわかりました。
ワーケーションを実施した人に対して再び行いたいかを聞いたところ、半数以上が「行いたい」と回答していることからも、これからワーケーションの需要は増えることが予想されます。今後、新たな働き方として受け入れられる日がくるかもしれません。
【参考URL】
https://suits-woman.jp/job_money/119645/
https://www.jalan.net/news/article/491449/