マーケティングコラム

【若者に向けたマーケティング戦略(1)】まずは“若者”を理解する

Facebook X
若者の消費行動は時代とともに変化します。どのようなものが欲しいのか、どういう点に価値を認めるのか、どのようにして情報を入手するかといったことが大きく異なります。
企業が現代の若年層をターゲットにしたマーケティングを効果的に行うためには、彼らの心理を深掘りし、消費行動のトレンドをつかんで、受け入れられる商品やサービスの開発戦略を行うことが必要になります。

若者って?

若者を対象としたマーケティング戦略を練るとき、価値観や消費行動が自分たちの若かったころとは異なっており、現在の若者の行動や考えを理解できないというジェネレーションギャップが生じることもしばしばあります。

そもそも若者とはいったい何歳までのことを指すのか、国連機関の若者プログラムでは15歳から24歳までとしていますし、日本の少年法における少年は20歳未満と、その定義自体があいまいです。この記事では、原則として10代から20代の世代と定義した上で考察を進めます。


20201211_04

若者が感じる“価値”とは

かつて、10代から20代の男性が手に入れたいと憧れたものの1つがマイカーでした。当時の勤労意欲は非常に高く、残業もいとわないモーレツ社員という言葉が存在しました。そうまでして物を手に入れることに、若者も価値を見いだしていたのです。厚生労働省が統計化している労働者の平均年間実総労働時間は1965年から1970年あたりまではおおむね2200時間前後もありました。2019年はおおむね1700時間台ですから、若年層を含め、当時の日本人がいかに長時間働いていたかがうかがえます。

しかし、近年はそうした風潮が薄れてきています。消費者庁がまとめた2017年版消費者白書には、豊かな暮らしに必要なものは何かという調査結果があります。それによると、一番は大人も子供も同じお金でした。そして若者が次に必要だと思っているものは、家族や友人とのつながりです。彼らは物ではなく、精神的なものに価値を見いだしていることが分かります。仕事に対する価値観も世代間で大きく異なります。適性検査アプリを開発・運営する企業が行った調査によると、10代や社会人となる20代は、仕事よりもプライベートを重視している人が半数程の割合でいます。ところが30代以降は徐々に仕事重視派が増加しており、若い世代ほど仕事よりプライベートに価値を置いていることが分かります。彼らにとっては、プライベートを大切にしてしながら働けることに価値があるのだということを、マーケティングの際には頭に入れておく必要があるでしょう。

価値観が変わった背景には、社会構造や経済事情の激変があります。日本の国内総生産であるGDPは1988年に世界2位になるまでずっと右肩上がりでした。しかし、バブル崩壊後の1990年代初頭から2010年代初頭までのいわゆる失われた20年間で日本経済は失速し、長期低迷から抜け出せない状況が続きました。この時期の前半に生まれたのが現在の若年層たちです。収入もなかなか増えず、明るい未来を実感しづらい時代にあって、彼らは仕事よりもプライベートに重きを置き、精神的なものを大切にする価値観に傾斜しています。

若者と大人の購買行動の違い

20代までと、それ以上の世代による購買行動の違いにはいくつかありますが、そのひとつが若いほど店舗を訪れて買い物をする頻度が少ないということです。2016年版消費者白書でも、週に3回以上店舗で買い物をする人は、10代後半は16.9%、20代でも26.8%です。30代から50代の世代はいずれも30%半ばを維持しており、好対照です。逆に、最低でも1年間に1、2回はインターネット通販を利用した人は10代後半で58.1%、20代になると77.2%もいます。この傾向は30代まで続きますが、40代からは一転して減っています。つまり、若い年齢層ほどインターネットを使った購買行動が多く、中高年層以上は実店舗に足を運んで購買するという点が大きな違いです。


20201211_03


また、大人は高額な商品を購入して自分のものにする傾向にありますが、若者の場合は購入するのではなく、必要な時に利用できれば良いという違いがあります。例えば、内閣府の消費動向調査で1995年以降の世帯別乗用車普及率をみると、30歳から59歳世帯の普及率はおおむね80%台であり、60歳以上でもずっと60%台をキープしていますが、29歳以下は下落傾向が続いており2017年には47.9%です。一方、カーシェアリングの利用数は急激に伸びています。

若者の、自分のプライベートライフが充実していることを知ってもらい、他人とつながっていることを自分自身が認識したいという欲求が消費行動に表れています。自動車などを購入するモノ消費から、体験をアピールできるコト消費へのシフトです。高額な車を買うよりも、宿泊した豪華なホテルの写真や、話題のスイーツの写真を撮ってSNSにアップし、いいねの数を獲得することは、他人とのつながりを意識できるという点で、大切で価値あることです。マーケティングにおいては、昔と今では価値観が違うのだということをしっかり把握しておくことが戦略上必要になります。

若者はどこから情報を仕入れる?

今何が人気なのか、欲しいものはどこで安く売っているかという情報を、若者は主にインターネットから入手しています。中でもSNSの活用が顕著です。総務省の調査では、信頼できる情報を提供しているメディアのトップは新聞であり、年代別で見ても20代でも1位、10代ですら2位です。ところが、実際に何かを買ったりサービスを利用したりするために得る情報源は新聞ではありません。自分たちがつながっていることが実感できるSNSの情報を大切にします。


20201211_02


2019年に実施された情報収集に関する調査では、10代から20代がスマートフォンを使ってファッション情報を調べる場合のソースとしてはInstagramがトップのシェアを獲得しました。2016年の調査では検索サイト利用が最も多かったのですが、SNSへの傾斜が進んでおり、同様の傾向は話題のグルメスポットなど他のジャンルでも見られています。

SNSが主たる情報源となっているのであれば、企業としてはそこに自社広告やPR情報を発信したいところですが、SNSに彼らが求めているのは信頼できるつながりですから、宣伝臭い文言はスルーされかねませんし、露骨に購買を促すような戦略は逆効果になる懸念もあります。

まとめ

若者の特性は時代とともに変化します。欲しいものも代わりますし、価値観も変わります。特に最近は消費行動のためによる情報収集の手法がデジタル化で激変しています。マーケティングの世界では顧客ターゲットを年齢層と性別で分けて戦略を練りますが、時代とともに価値観や商品へのアプローチ方法は変化していきます。したがって、若年層のマーケティングはビジネス業界の動向だけでなく、デジタル分野の進化や世界の経済動向、超高齢化社会における価値観の変化など、総合的な情報を分析して継続して戦略を更新していく努力が求められます。

関連コラム

マーケティングコラム
あの世代の呼び方は何?各世代へのマーケティング方法もご紹介
「団塊の世代」や「Z世代」など、生まれた世代によってさまざまな名称が付けられています。マーケティング担当者であれば、それぞれの世代の名称と特徴を把握し、世代ごとにあわせたマーケティングを実施しましょう。 本記事では、それぞれの世代の呼び方について説明し、各世代に合ったマーケティング方法を解説します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム
独身の人が増えすぎている?未婚の割合や増加の理由を解説
結婚して家庭をもつことが当たり前だった時代からは一変し、生涯を独身で過ごす人が増えています。なぜ未婚率が高くなっているのでしょうか。今回は、未婚の割合や未婚の人が増えている理由について解説します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム
中学生のスマホ使用時間の理想はどれくらい?スマホが及ぼす影響も紹介
近年、中学生からスマホを持たせる家庭が多いなか、使用時間の長さが問題視されているケースが多く見受けられます。スマホの使用時間が長いと学力に影響するといわれることもあり、子どもを持つ親からすると、「適切な使用時間の範囲で使わせたい」と考える方もいるようです。 今回は、中学生がスマホを使う時間の理想をはじめ、使用時間が長いとどのような影響を及ぼすのかを解説します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム
犬派か猫派か?どちらが人気?性格や相性を徹底解剖!
ペットを飼っている人や、これから飼いたいと考えている人にとって気になるのが「犬と猫はどちらが人気なのか?」という点ではないでしょうか。また、犬派と猫派それぞれの性格や相性などについて気になる人も多いかと思います。本記事では、犬派と猫派どちらが多いのか、また性格や相性はどうかを徹底解剖します。弊社で行ったアンケート結果もふまえて解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム
α世代の次の世代とは?β世代の特徴や取り巻く環境を予測しよう
今注目されているZ世代の次がα世代と呼ばれており、さらにその次がβ世代にあたります。Z世代以降は、デジタルネイティブであることが特徴ですが、マーケティング担当者や商品の開発担当者であれば、β世代とはどのような世代なのか、今と取り巻く環境がどのように変化しているのか気になるのではないでしょうか。今回は、β世代の特徴やβ世代を取り巻く環境について解説します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム
推し活の経済効果はどれくらい?市場規模と推し活マーケティングのメリットとは
若年層に適確なアプローチができないなど、従来のマーケティング手法に限界を感じてはいませんか。商品やサービスのターゲットとして、「推し活に力を入れる消費者」に絞る方法もあります。 推し活とは、推し(お気に入りのキャラやアイドルなど)を応援する活動のことです。今回は、推し活の経済効果や企業が推し活マーケティングに力を入れるメリットについて紹介します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
マーケティングコラム
団塊の世代はいついなくなる?高齢化で生じる問題と対策を紹介
団塊の世代は、全人口に占める割合の大きさから、社会に多大なる影響を与えてきました。高齢化の話題に接して、団塊の世代の存在感に驚いた方もいるのではないでしょうか。今回は、団塊の世代の高齢化問題と企業の対策について紹介します。
# マーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
デジタルマーケティングコラム
【TikTok】バズる時間帯はいつ?曜日ごとのバズりやすさとあわせて解説
TikTokは短期間で多くのユーザーにリーチできるプラットフォームです。しかし、効果的な運用には、適切な投稿時間を見極めなければなりません。社内でTikTokの運用を開始する際に、まず押さえておくべきなのが「バズりやすい時間帯と曜日」です。今回は、TikTokでバズるために最適な投稿時間や曜日について詳しく解説し、投稿時に押さえておくべきポイントについても紹介します。
# デジタルマーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
デジタルマーケティングコラム
SNSのエンゲージメントとは?SNS別の確認方法や向上施策も紹介
最近では中小企業でも、流入チャネルを増やすためにSNS活用を始めるところが増えてきました。SNSの運用を成功させるためには、できるだけ多くのエンゲージメント(リアクション)を得ることが重要です。今回は、SNSにおけるエンゲージメントについて、確認方法や向上させるための施策を解説します。
# デジタルマーケティングコラム
業界/業種
支援領域
開催日:-
受付終了
ご相談・お見積もり依頼
【法人・個人様】
フリーダイヤルでのお問い合わせ
0120-198-022
※ モニター様からのお電話でのお問い合わせは受け付けておりません。
資料ダウンロード