マーケティングコラム
2020年、SDGsが学生にもさらに浸透!その理由に迫る
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世界的規模で取り組むべき目標であるSDGsはSustainable Development Goalsの略で、2015年の国連サミットで選び抜かれた2030年までに実現するべき目標のことです。貧困や飢餓の撲滅、健康で安全な自然と社会の構築など、17の目標が設定されています。この人類共通の課題に対する認知度は、社会人よりも学生のほうが高いという調査結果があります。それはなぜなのか、理由を考え、今後を展望します。
調査からわかる学生の認知度向上
株式会社クロス・マーケティングが2019年と2020年に実施した認知度調査によると、社会人も学生・院生のどちらも、SDGsに対する認知度は調査を実施した1年間で飛躍的に向上しています。とりわけ、大学生・院生の認知度向上は明瞭です。2019年の調査で、SDGsの名称も内容も知っていると回答した層と、内容は知らないが名称は聞いたことがあると回答した層を合わせると、社会人は14.7%だったのに対し、学生・院生は25.3%で、社会人の1.72倍もありました。これが2020年になると、社会人は25.9%、学生・院生は52.1%にと実に社会人の2倍以上になっています。
調査結果詳細:https://www.cross-m.co.jp/news/release/20200220/
なぜ社会人よりも学生の認知が広がるのか?
社会人よりも学生・院生の認知度が広がっている理由として考えられるのは、主に3点挙げられます。理由1:教育環境の優位性
外務省が公開している情報によると、既に17の目標と関係性が強い内容を取り入れている教育現場も存在し、社会人に比べて学生・院生たちはSDGsに関する教育環境の面で優位性を持っていることが認知度向上の理由として考えられることの一つです。(参考:外務省公式サイト 「JAPAN SDGs Action Platform」)
17の目標の中には、質の高い教育をみんなに、ということが掲げてあります。日本では性別や家庭環境に関係なく受けられる義務教育が普及しています。質の高い教育という項目に関する達成率は他国に比べ高いとされているので、達成率の低い国への支援をしつつ、国内ではこうした環境を持続的に整えていくための教育も推し進められています。このような環境下で育ってきたため、学生・院生たちも日常的に17の目標はどれも自分自身の人生に関わる問題としてとらえているのではないでしょうか。
(参考:国立研究開発法人 科学技術復興機構 「SDGsへの取り組みを活用した 持続可能社会への移行加速」)
理由2:自分事として考えている
学生・院生にとってSDGsで掲げている目標は、決して他人事ではないということも大きな理由です。2030年には、今の学生・院生は経済社会の第一線で活躍し、地域、国家、さらには国際社会の中で、中核的存在として活躍していく年齢層です。スウェーデンの少女が温暖化によってもたらされる地球環境のリスクを訴えているように、多くの若者にとって、気候変動に対する具体的対策、自然保護対策は自分自身の今後の人生に直接的、間接的に降りかかってくる不可避の課題です。貧困や飢餓問題、教育問題、クリーンエネルギーをはじめとした技術革新の基盤整備など、17の目標はどれを取っても今後の自分たちの人生とは切り離せない課題です。こうしたテーマに危機感や強い問題意識を持っているのは、リタイアした高齢層や定年間近な世代ではなく、未来を担い、社会的責任を持つことになる今の学生・院生世代です。そのため、この問題を放置しておいては、いずれ自分自身に跳ね返ってくる課題という自覚を持つ若い世代も多いと考えられます。
理由3:サスティナブル商品の流通
環境保護や資源保護を目的としたサスティナブル商品が市場に数多く出回るようになってきたことも理由として挙げられます。衣料品を例にとると、途上国の工場で大量生産した低価格品のファストファッションに対して、製造段階で発生する大気や水質汚染問題、生産後に短期間で商品が大量に廃棄されることで生じる埋立地への影響や二酸化炭素の排出が問題視されています。このことを受けてサスティナブル商品の製造を始めたファッション関連の企業も注目を集めています。
日本では若年層を中心にフリーマーケットアプリが普及しています。普及に伴い今の学生たちの中には不要になった時に、捨てるのではなく売ることを考えて衣服を買うなど、SDGsの考えに則った行動をする人が増えています。
(参考:SDGs・サステナブル商品の認知度は1年で増加 企業のSDGsの取り組み有無は大学生・院生の就職先検討に影響も | 朝日新聞デジタル&M(アンド・エム)
https://www.asahi.com/and_M/pressrelease/pre_10009343/)
※現在は削除されています
(参考:同じ物量で「服を楽しむ価値総量」を増やす。メルカリが生んだサステナブルな消費文化 - Weare -ウィア - | powered by sitateru
https://weare.sitateru.com/inspiration/mercari-market/)
世間的なSDGsのイメージ
認知度調査の結果から、社会人でSDGsの内容を明確に把握している人は全体の10.2%と非常に少ないことが分かります。そのうち自主的に何らかの動きをしている人はさらに限られてくるでしょう。国連で採択されたとは言えども、認知度アップや社会全体で目標の達成を目指す動きが出ているとは言い難い現状です。しかし、SDGsは今後、ビジネス社会においてさらに重要なテーマになっていきます。例えば、長時間労働や無理な仕事を強いて社員の健康を損ねたり、うつ病対策を取らなかったりするような企業のスタンスは「すべての人に健康と福祉を与える」という目標とは真逆です。就職活動をする学生は働く企業を選ぶときに働きやすさや、企業が社員に対して行っているケアを踏まえて判断します。そのため、たとえ給料が良くてもそのようなスタンスの企業は学生の支持を得るのが困難になってくるでしょう。企業が持続していくためにSDGsの導入は避けて通れない状況にあるのが分かります。
SDGsの今後
SDGsの実現目標年である2030年まであと10年。今後日本だけではなく世界各国で実現に向けた動きが加速していくでしょう。各国のSDGs達成度で順位付けした「SDG Index and Dashboards Report」では、17の目標ごと評価したスコア、そしてそれに応じた順位が公開されています。2019年度に日本は総合評価で156カ国中15位と、各国と比較して高い評価を受けています。一方で、スコアが低い項目には性別による雇用格差、食品ロスの問題などが取り上げられています。今後は達成していない項目に重点的に取り組む必要がありますが、これらは政府の取り組みだけでは達成が難しいため、企業や個人での取り組みも進めていかなければなりません。企業の場合はSDGsを自社でどのように取り入れていくことができるのかをしっかりと見極めて実行し、CSR活動などで正しくアピールすることができれば、企業イメージの向上に繋がるはずです。環境問題への配慮など個人でできるSDGsの取り組みも多くあるため、企業や個人ともに意識・行動改革を進めていくことが重要です。