マーケティングコラム

医療ビッグデータの活用方法!病気の早期発見や予防にも!

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近年の医療はベテラン医師がもつ豊富な経験やひらめきではなく、膨大に蓄積された科学的診断情報の記録から総合的に判断し、そこから根拠のある最適な治療法を選択するといった流れに向かっています。これを実現するために不可欠なのが医療ビッグデータで、医療費抑制の一助となると期待されています。

医療ビッグデータの活用方法

病気の予測・早期発見

日本医師会がまとめた2018年の「日本の医療ビッグデータの利活用」という報告書では、事例のひとつとしてリアルタイムの医療ビッグデータが、疾病予防に有効であるとされています。
人が医療機関で診察や治療を受けると、問診情報や画像を含めた検査結果、処方薬品名など色々なデータをまとめた医療資料が作られます。一般的には、同じ症状を持つ患者のデータが多ければ多いほど、そこから病気の特定から病気の程度や進行具合の判定に役立てることができ、客観的な判断がしやすくなります。例えば、CTやレントゲン画像データを人工知能で分析することにより、システムに蓄積されている過去の様々な患者データから似たような症例を探し出し、本人では気づきにくい病気でも早期発見や早期治療が可能になります。そうすれば、患者本人の健康的な生活を守り、生きていくうえでの幸福度を上げる効果も期待できるでしょう。

◎健康・医療戦略推進本部「日本の医療ビッグデータの利活用」(最終閲覧日:2020年2月21日)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kenkouiryou/jisedai_kiban/dai5/siryou7.pdf

新薬開発

新薬開発には3つの問題点があります。薬品として世に出てビジネスベースにのるまでに時間がかかること、膨大な開発経費がかかること、開発に成功する確率が低いことです。医療ビッグデータを活用すれば、こうした新薬開発の問題解決にも役立つと注目されています。新薬になるかもしれない研究対象物を絞り込んだり、AIで解析して研究データの質を高めたりすることによって成功率が上がり、新薬開発プロセスが効率的かつスムーズに行えるようになります。この結果、新薬の開発速度が上がり、その分開発コストが下がります。


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問診情報や検査結果などカルテの記録

同じ病気でも、病気の進行具合や患者の体力、年齢などで治療法は異なります。医療資料であるカルテがアナログの場合、その情報はどこにも共有されることなく孤立しています。近年急速に普及している電子カルテは各医療機関内、もしくは複数の医療機関が加入しているシステム内で医療情報が共有化されるので、医学的に意味のある形で分類することができれば、一人ひとりの患者に最適の医療サービスが提供できる可能性が高まります。

このように、症状、治療、結果に関する医療情報の蓄積と適切な分類、連動システムの構築は重要なテーマです。例えば、一見すると関係ないように思える病気が、体内の別部分に悪影響を与えることがあります。糖尿病になると歯周病になりやすく、歯周病が糖尿病をさらに重症化させるリスクが高いことは既に医学的研究で分かっています。しかし、内科と歯科では診療科が異なり、現状では情報の共有が困難です。異なる病気の症状や治療情報を連動させることができれば、総合的な治療が可能になるため、治療する側にも患者側にもメリットがあります。

医療ビッグデータにおける現在の課題

医療ビッグデータを活用することに対して多くのメリットが期待されていますが、課題もあります。以前から指摘されてきたのは、データが膨大になると管理が大変で、必要な情報を取り出すのも苦労するというものでした。しかし、データ管理システムの進化や、AIの導入によって、これらの問題点は徐々に解決の方向に向かいつつあります。2011年にはレセプトの電子化が義務化され、厚生労働省がデータ管理しているナショナルデータベースで統括されるようになりました。むしろ問題は、医療情報に盛り込まれている個人情報をいかにして守るかということにシフトしてきました。


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医師が作る病状、投薬、手術といった治療歴などを記載したカルテは患者名ごとに区分けされ管理されていることが多く、絶対に漏えいしてはならない重要な個人情報です。紙であろうと電子カルテであろうとこの点は変わりません。医療データを問題なく利用するためには、個人情報を匿名化、不正アクセスによる情報漏えいや改ざんのリスク排除、有用な情報を正確にピックアップできるようになることが不可欠です。各医療機関の患者データを集め、匿名化させるために、内閣府は2019年12月に京都大学の名誉教授が代表理事の事業所を認定しました。これにより、2020年の春から様々な研究機関や製薬会社などが医療ビックデータを活用できるようになります。医療ビックデータの活用は医学的には極めて役立ちますが、まずはきちんとした情報管理をすることが重要なポイントです。

◎公益財団法人ニッポンドットコム「医療ビッグデータ、その課題~DPCを中心に」(最終閲覧日:2020年2月25日)
https://www.nippon.com/ja/in-depth/a03603/

◎NHK NEWS WEB「医療ビッグデータをAIで解析 治療などに活用本格化」(最終閲覧日:2020年2月7日)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200104/k10012234991000.html
※現在は削除されています

今後の展望

業種を超えて企業と医療研究機関が協力することで、医療ビッグデータを活用した様々な研究が可能となっています。大阪の国立大学と日本の保険会社は、両者の持つ医療ビッグデータを活用して健康寿命延伸の研究を進めていて、効果的な予防医療の進化や特効薬開発、再生医療の発展などが期待されています。英国では6,000万人以上の患者を抱える国民保険サービス会社と特定地域の病院が連携し、医療ビックデータを使って生活習慣病患者の重症化を防ぐ医療開発が行われています。米国の国立がん研究所は、ソフトウエア企業や分析プラットフォーム開発企業と連携し、医療ビッグデータを活用するシステムを使って遺伝子とがんの関連性を分析研究しています。こうした研究は今後さらにすそ野を広げていくとみられています。

◎株式会社コトラ「医療・ヘルスケア業界におけるビッグデータの活用事例20選」(最終閲覧日:2020年2月21日)
https://itiger.jp/case/499.html
※現在は削除されています

まとめ

医療ビッグデータを活用するためには、カルテを匿名化させることが必須です。その際、ただ匿名化させるだけではなく、同一人物が受けた治療内容を病院や診療科目をまたがっていても網羅できるように紐づけることが大切です。
そうすることで、一つの症状に対する治療内容や治療による効果、副作用が分かります。そのデータを収集、分析することにより、早い段階でその人に適した治療方法を提案できるようになるでしょう。解析精度も上がるので、早期発見や新薬開発の観点から医療費削減にもつながる見込みがあります。

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