マーケティングコラム
5Gをビジネスに活かすには? 今やるべき準備はなに?
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第5世代移動通信システムの略称である5Gには、通信業界以外に世界中の政府や企業が注目しています。単に通信が便利になるだけでなく、新たなビジネスを創出して産業構造を変革し、社会のシステムすら変えてしまう可能性を秘めているからです。従来の4Gとは何が違い、何ができるようになるのかを知り、世間の流れから後れを取らない対応が企業には求められます。
4Gが5Gになるとどうなる?
スマートフォンの普及とともに2010年に登場した4Gは高速通信を実現し、スマートフォンで高度なゲームをしたり、高画質の動画を鑑賞したりするといったことができるようになりました。この4Gよりはるかに高速通信を可能にしたのが5Gです。4Gと比較し5Gになることで可能になる注目すべき点は、大きく3つあります。第1に、4Gに比べて20倍も通信速度が速く、一度に送信できる容量も大幅にアップします。4Gでは困難だった4Kや8Kの超高精細画像や動画の表示がスムーズになるのです。これにより、一般ユーザーの楽しめるコンテンツの幅が増えることに加え、超高精細画像診断で在宅医療など遠隔医療も可能になり、離島や寝たきり患者の診察などにも応用できます。
第2に、4Gで指摘されていた遅延問題が解決します。4Gを使ったWEB会議などで映像や音声のタイムラグが生じると質疑のやりとりが混乱して話がかみ合わないことがありますが、遅延が劇的に短縮されるため、情報のやり取りはほぼリアルタイムです。他にも、自動車の自動運転や建築機材の遠隔操縦など、タイミングの遅れが許されない技術領域で、致命的なエラーを防げます。
第3に、1台の基地局から同時接続できる端末数の大幅な増加です。例えば、通信を必要とする機器を多数接続が可能になることによって、同時に複数の建築機械を遠隔で操縦することや、公共施設や駅などにおける犯罪や事故の抑止を監視するシステムの構築が実現されます。こうしたことは、人手不足の解消や、安全安心の社会形成に寄与すると期待されています。
5Gで起こるビジネスの変化
5Gになり画像や動画がより鮮明になったり、公共エリアの監視能力が向上したりするといった変化は、以前からあるビジネスやサービスが向上や拡大したものです。しかし5Gは、これまでなかったサービスの創出を後押しするところに価値があります。すでに全く新しい分野の事業開拓やサービス事業展開が進んでおり、産業構造のシステムや価値観が劇的に変わろうとしています。例えば、米国ではサッカー大会や男子プロバスケットリーグの試合で4Kライブ映像やVR映像配信の実証実験が行われています。日本でもプロ野球公式戦で、実験対象になった観客に自由視点映像を選べるタブレットを渡し、新しい観戦スタイルの実験を行いました。通常、観客は自分の座席からの角度でしか試合を見ることはできません。高速大容量対応のシステムを組み込んだタブレットならば、座席の位置にとらわれず投手側からでも打者側から見た映像でも自由に選べるので、野球の楽しみ方が劇的に変わります。
あなたのビジネスは大丈夫?
5G時代は、通信業界だけでなく、あらゆる産業を巻き込んだビジネス革命が起きる可能性があります。大手企業では、既に5Gを自社の事業にどう結びつけるかという可能性を探り、新規事業や既存事業の改変に向けてさまざまな実証実験を行っているところもあります。そのため、従来の自社事業や自社製品とは全く異なる領域の事業にチャレンジする企業も増えてくると見られます。小さな企業や自治体も知恵を絞っています。総務省が募集したコンテストでは、大容量データを使った有害鳥獣の対策案を出した沖縄の企業や、低遅延と同時多接続というメリットを生かした近未来の雪害対策で応募した福井県の小さな町によるアイデアが入賞しています。
5Gビジネスは、確実に成功するサービスや商品がまだ確定しているわけではないので、徐々に浸透し、進化していくことが想定されます。新たな技術の活用に踏み切る際には、それまでの固定概念にとらわれないよう組織全体としての意識改革が不可欠です。このためには、システム管理の部署に一任するのではなく、企業のトップから進んで新しいことに取り組み、挑戦を継続する姿勢を社員にも見せ続けることが重要です。
まとめ
今後高齢化が進んでいき、高齢者による交通事故の増加や免許返納により、地方では日々の買い物が困難になるなど、様々な問題が発生すると考えられています。5GとIoTを組み合わせることができれば、完全な自動運転の実用化に近づき、これらの問題も解決できるでしょう。また、スポーツや医療業界と映像コンテンツなどの異なる分野業界が協力することで、今まで実現が難しかった新しいサービスなどを提供することも可能です。5Gの誕生により、既存のIoTサービスや商品の質をより高め、内容の幅を広げていけるようになります。これは地方の企業でも小さな自治体でもアイデア次第で活用の道が開けるということにほかなりません。そのため、大手企業であっても、対応策を講じなければ後れを取る可能性があります。組織全体で新しいものを恐れず、積極的にチャレンジしていくことが大切です。
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