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ファンとのつながりを強くする、モスバーガーの戦略第1回 安全・安心・健康の取り組みで、店舗の利用機会を増やす
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当社は1972年からハンバーガー専門店「モスバーガー」を全国で展開し、今年で45周年を迎えます。本連載では、私たちが行っているモスカードプログラムなど、ファンを増やすための施策を中心にお話します。
野菜へのこだわり
当社は1972年からハンバーガー専門店「モスバーガー」を全国で展開し、今年で45周年を迎えます。本連載では、私たちが行っているモスカードプログラムなど、ファンを増やすための施策を中心にお話します。近年ハンバーガーを扱うファストフードチェーンでは外資系の新興チェーンの日本上陸が話題になっています。ハンバーガーという食べ物自体がアメリカからやってきたものですが、そうした中で、モスバーガーは日本生まれのハンバーガーチェーンとして「和」を意識した商品開発を特徴とし、テリヤキバーガーの隠し味に味噌を使うなど、日本の食文化を生かした商品開発に日々取り組んでいます。
美味しい商品を届けることで地域1番店になることを目指す中で、特にこだわってきたのは野菜です。美味しく安全な野菜を提供することなどを表明した、1997年の「新価値宣言」以降、「安全・安心・健康」をより一層意識し、国内の協力農家で可能な限り農薬や化学肥料に頼らない栽培方法で育てた「モスの生野菜」を全店で導入しています。創業当時は、店舗ごとに近隣の八百屋などへ野菜を買いに行っていた時期もあったのですが、野菜の品質によってハンバーガーの味も変わってしまうため、農家さんと関係をつくり、安定供給を図りました。協力農家は、2017年3月時点で約3000軒となっています。近年は地域限定で協力農家が栽培する野菜を生かした商品開発にも力を入れています。
野菜へのこだわりの一環として、ファストフードチェーンでは少なくなっている店舗での調理も行っています。そのため、各店舗に包丁、スライサーなどの調理器具を置いています。カット野菜を各店舗に納品することも可能ですが、店舗で仕込みをした野菜の方が鮮度も高く、美味しい商品を提供できると考えています。テレビCMでも、店舗で調理していることを伝えるために野菜を切るシーンを使っています。
20年に渡る「モスの生野菜」を中心とした「安全・安心・健康」への取り組みが評価されたのか、2015年の日経BPコンサルティング社によるインターネット調査「食の安全・安心企業ブランド調査」では15位にランキングされています。製造業で占められているトップ20社の中で唯一の外食チェーンとなったことで、私たちの取り組みが消費者の方々にも浸透してきたことを実感できました。
具材をバンズの代わりにレタスで挟んだメニューもある。
地域密着型店を全国へ
モスバーガーの利用が多い年代層や性別などは傾向としてはありますが、その層に向けた何かを強化するよりも、老若男女全ての方に安心して来ていただけるようなブランドでありたいと考えています。例えばお子さま向けに「モスワイワイセット」を用意しています。これは安全・安心とともに、幼少期からブランドに親しんでもらうことで長期的な関係性の構築を目指す意図もあります。モスバーガーは47都道府県に出店した初めての外食チェーンで、2017年3月末時点で直営、フランチャイズ合わせて1362店舗あります。創業当初から地域密着のFC展開を進めており、地域に根付いたオーナーさんとネットワークを広げ、離島にいる方にもモスバーガーを楽しんでいただいています。
ただ全都道府県に店舗を持ってはいるものの、消費者の方が求める地域全てに出店できているわけではありません。できる限り期待に沿いたいという思いはあるものの、店舗数の拡大よりも、まずは美味しい商品を届けるということを大事にするという方針を重視しています。
そのため、既存の店舗でいかにたくさんのファンを生み出し、利用機会を増やしていくかがブランド成長の大きな課題となっています。モスカードプログラムを中心とするダイレクトマーケティングには、そのための「ファン化」と利用機会の増加、ロイヤルティ向上を目的にスタートしたものです。
次回はモスカードの仕組みと会員プログラムについて、その効果や課題についてお話します。
「モスバーガータウンミーティング」は、2015年に47都道府県での開催を達成。