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ヤッホーブルーイングが挑む、若者のビール需要拡大第2回 ビールを飲まない人にどう情報を届けるか?
公開日:
株式会社ヤッホーブルーイング
よなよなエールFUN×FAN団
稲垣 聡
「僕ビール、君ビール。」は、ローソンでクラフトビールを買う若い世代をターゲットにした製品です。「若者のビール離れ」と言われる中で、これまでとは味も香りも異なる、新しいビール体験をしてもらうことで、需要喚起を狙おうと開発し、2014年の発売から累計110万本以上を販売する製品に成長しています。
ビールを選ばない理由を探る
「僕ビール、君ビール。」は、ローソンでクラフトビールを買う若い世代をターゲットにした製品です。「若者のビール離れ」と言われる中で、これまでとは味も香りも異なる、新しいビール体験をしてもらうことで、需要喚起を狙おうと開発し、2014年の発売から累計110万本以上を販売する製品に成長しています。各種の調査を見ると、酒類の消費量は減少し、若い世代は好んでビールを選ぶ人の割合が少ない、という結果がでています。しかし、私たちが主催するイベントでは20代後半~30代前半のファンが多く参加して下さっていますから、若者は決してビールが嫌いなわけではないのでは、という思いがありました。
製品開発にあたり、ターゲットがビールを選ばない理由を探る必要があったため、ビールの飲用者ではない20代後半から30代前半の男性を対象にしたデプスインタビューを行いました。日常的なお酒の選び方や、好きなお酒の種類について聞き、わかったのは、「自分たちの世代の飲み物ではない」、「オジさんっぽい」などのネガティブなイメージのためにビールを避けている若者層がいるということでした。
目指すべき製品は、これまでのビールとは一線を画したもので、それを選ぶこと、飲むことに「自分らしさ」や「ポジティブな感覚」を覚えてもらえるものだ、と考えました。製品のコンセプトは「アラサー男子の“プチ個性的な自分らしさ”にフィットするビール」と設定し、開発を進めました。
味覚は、普段ビールを飲まない人に向けたものなので、一般的なビールを少し変えたようなものでは差異化できませんし、記憶にも残りません。飲んだ人が「何これ?」と感じる、好き嫌いがはっきりするくらい個性的な味を目指しました。たとえ検索サイトで「僕ビール、君ビール。」と入力したときに、ネガティブなワードが追加で提示されたとしても、話題にならないよりは良いという考え方です。
カエルのキャラクターはどう生まれたか?
ブランド開発でも、ビールのイメージを変えることを意識しました。2012年に「水曜日のネコ」を発売したときに、キャラクターはブランドのパーソナリティが伝わりやすいという発見があったので、「僕ビール、君ビール。」もキャラクターを作ることにしました。製品のパーソナリティを、ブランドが目指す方向性もふまえて「友達」、「楽しいことを知っている」、「知的な変わり者」といったいくつかのキーワードで設定し、それに合ったキャラクターを考えました。いくつかの候補から、採用したのは社内アンケートで好評だったカエル。カエルは親しみやすさを感じるキャラクターとして、人気アニメ作品などにも登場している生き物でもあります。ゆるいイラストのキャラクターによって、ブランドパーソナリティがよりわかりやすくなりました。
ビールを飲まない人に「新しいビールが出ました」と広告を打っても、響きませんから、「話題になっているから飲んでみよう」と若い世代に思わせることを目指してプロモーション施策を考えていきました。
「僕ビール、君ビール。」を話題にしてくれるであろう、クラフトビールファンや当社のファンを核にクチコミを広めていくことを狙い、発売に先駆けて、クラフトビールの大規模フェスに出品。さらにアンテナショップであるよなよなエールの公式ビアバルでもファンに先行提供を行いました。そして店頭発売時には「かえる捕獲大作戦」と題し、全国47都道府県で製品を見つけたら「〇〇(県)で捕獲!」とSNSで投稿するよう促し、スタッフも、東京23区内のローソンを回って捕獲ツイートを行いました。
情報が拡散されると、ファン以外のターゲットにも情報が届きます。「何それ?」「かわいい」といった話題をさらったのは、パッケージデザインでした。従来のビールとは違うインパクトがあったからこそ、本来のターゲットであるビールを選ばない若者へも情報を届けることにつながりました。「かえる捕獲大作戦」は狙い通り全国に波及し、販売数を伸ばすことができました。
次回はファンを巻き込んで熱量を上げる、ヤッホーブルーイングが考えるファンマーケティングのあり方についてお話しします。