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ヤッホーブルーイングが挑む、若者のビール需要拡大第1回 クラフトビールのカテゴリーを浸透させる
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株式会社ヤッホーブルーイング
よなよなエールFUN×FAN団
稲垣 聡
「よなよなエール」「水曜日のネコ」など、クラフトビールの製造と販売を行うヤッホーブルーイングは、業界内製造量が国内最高を誇るクラフトビールメーカーです。私は、よなよなエールFUN×FAN団という部門で、製品の認知を高め、ファンを増やし、イベントや動画など様々な接点を通じて、「ファン度」を上げていくための仕事をしています。
観光・土産用の地ビールから、全国流通のクラフトビールへ
「よなよなエール」「水曜日のネコ」など、クラフトビールの製造と販売を行うヤッホーブルーイングは、業界内製造量が国内最高を誇るクラフトビールメーカーです。私は、よなよなエールFUN×FAN団という部門で、製品の認知を高め、ファンを増やし、イベントや動画など様々な接点を通じて、「ファン度」を上げていくための仕事をしています。そもそもクラフトビールとは、アメリカからやってきたもので、簡単に言うと小規模のビール会社が造るビールのことを指します。日本では、1994年に酒税法が改正、ビール醸造の免許取得条件が緩和されたことで、小規模ビール会社が生まれました。当時は「地ビール」と呼ばれる方が一般的で、ブームにもなりました。
その頃の地ビールは「地産地消」やローカリズムといったイメージで、日本のそれぞれの土地へ行って飲む観光資源的な扱いでしたので、ビールとしての質はそれほど高いものではありませんでした。そのため、地ビールブームが去ると一気に熱も冷めていきました。当社は、軽井沢に本社を構えビール醸造所をつくったときから、アメリカのクラフトビールがそうであるように、小規模でも全国に流通するビールを造ることを事業の目的としていたのですが、ブームが下火になるのに合わせて苦戦する時期が続きました。
2006年頃になると、ようやくクラフトビールの認知と支持が、ニッチではあるものの高まりを見せてきました。軽井沢で「よなよなエール」を飲んでファンになってもらったお客さまと、インターネット通販という形でつながりを持つことができるようになり、以来、2016年まで12年連続で黒字化することができています。
近年は市場全体としてもクラフトビールに注目が集まっており、それまでビール市場に占めるクラフトビールのシェアが0.3%程度だったものが1%にまで成長しています。アメリカではすでに20%になっているので、日本はようやく1%にまで伸ばせたというところです。
こうした市場環境もあり、私たちは市場内のシェア争いよりも、まずはクラフトビールを知ってもらい、ニーズを拡大していくことに主眼を置いています。「ビールに味を!人生に幸せを!」をミッションに掲げ、画一的な味しかなかった日本のビール市場に多様性をもたらし、日本のビール文化にバラエティを提供していくことを目指しています。そのために、まずは「クラフトビール」というカテゴリーを浸透させていかなければなりません。製品開発やプロモーションにおいては、この点が最大の課題となっています。
ビールを買わない世代が動いた
以前はインターネット通販が大きな販売チャネルになっていましたが、現在は店頭が主流です。首都圏の食品スーパー系では配荷率が50%近くになっていますし、成城石井は全店舗で当社の製品を扱っています。コンビニエンスストアでは特に、ローソンが8割から9割近い店舗で当社の製品を販売しています。ローソンでは、比較的早い段階から「よなよなエール」を売り切りのスポット商品として扱ってもらいました。その頃の配荷率は30%に満たないほどでしたから、発注する各店舗のオーナーさんにとっては、「売れない商品」の扱いです。
一方、ローソン本部側は、「クラフトビールがこれまでビールを買っていた層とは異なる20代から30代の若い人達に買われている」というデータに気づいていました。他チェーンとの差異化を図るうえで、クラフトビールに勝機を見いだし、当社と一緒にローソンの専売品を開発することになりました。それが「僕ビール、君ビール。」です。
2014年11月にスポット商品として2万ケース分を発売したのですが、3カ月分が1カ月で売れ、全国のローソンで11月の売り上げが2位となり、それまで不動であった順位を変動させるという「事件」を起こしました。これをきっかけにオーナーにも売れる商品であることを認識してもらい、クラフトビールを定番化することができました。
次回は「僕ビール、君ビール。」開発と発売時のプロモーションについて、また私たちの消費者調査についての考え方を紹介します。