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フルグラ、発売20年後に急成長した理由第1回 シリアル市場のシェアゲームを脱し、朝食市場に挑む

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カルビー株式会社
マーケティング本部 フルグラ事業部 企画部 部長

網干 弓子

 カルビーは、1988年にシリアル市場に参入しました。最初に発売したのはコーンフレークとフルーツの入っていないグラノーラ。その後、91年にフルーツを加えた「フルグラ」(当時のブランド名は「フルーツグラノーラ」)を発売し、2016年に25周年を迎えます。

10億から220億円への飛躍

 カルビーは、1988年にシリアル市場に参入しました。最初に発売したのはコーンフレークとフルーツの入っていないグラノーラ。その後、91年にフルーツを加えた「フルグラ」(当時のブランド名は「フルーツグラノーラ」)を発売し、2016年に25周年を迎えます。

 グラノーラ市場は2012年から急激な成長を遂げ、それまでシリアル全体で売上が250億円程度だった市場は、現在グラノーラカテゴリーだけで約370億円になっています。フルグラの売上げは、223億円(2015年度)と市場の約半分を占め、No.1シェアのブランドとして成長してきました。今回は、私たちが市場拡大に成功したポイントをご紹介したいと思います。

 そもそもカルビーがグラノーラを投入した背景には、「かっぱえびせん」(64年発売)、「ポテトチップス」(75年発売)に続く、3本目の柱をつくろうという流れがありました。当時、アメリカで大きな市場が存在していたのがシリアル。グラノーラの素材である「オーツ麦」に着目し、日本人の味覚に合わせた「フルグラ」を開発しました。

 発売後の売上げは10億円前後で推移していましたが、90年代後半に、20代の働く女性を中心に、グラノーラがおしゃれな食べ物として注目されブームとなりました。私たちが「第一次成長期」と呼んでいるこの時期に、「フルグラ」も売上げを30億円ほどに伸ばしています。その後、再び市場は横ばいを続けていたのですが、発売20年以上が経過した2012年より、急激に成長を始めました。

 それまで私たちは、「フルグラ」の主戦場を「シリアル市場」として見ており、250億くらいが天井だと言われてきました。そのなかで30億というのは決して悪いものではなく、毎月競合とシェアNO.1を争うようなブランドではあったのですが、社内で「フルグラ」が良い商品であると評価されていたこともあり、「もっと売れるのではないか」と議論が起きたのです。そこで出てきたのが、「シリアル」から「朝食」市場へのドメインを変更する、という考え方です。

 シリアルカテゴリーは、盛り上がりを見せる一方で、プライベートブランドなど競合も増え、価格競争に陥っていました。一方で朝食市場は、とらえ方にもよりますが17兆円近くあると言われており、シリアルとは規模も違います。市場をより大きくとらえることで、マーケティング機会も創出することができると考えました。


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フルグラを朝食の定番メニューにしている顧客の中には、ECで定期便購入する人も出てきた。

ターゲットは「朝食を食べない人」から「食べる人」へ

 朝食市場へと競争の舞台を変えたことで、売上げの目標も100億と明確に設定しました。また、ターゲットについても見直しを行いました。それまでのシリアルやグラノーラは、十分に朝の食事がとれないときに簡単に食べられるものという存在でした。ところが、日本人が朝食を食べていない割合、欠食率は性別や年齢層で差はあるものの、全体で10パーセント台です。この数字は近年大きく変化していません。つまり、私たちはこれまで10パーセントの人達に食べてもらおうとしていたことになります。

 当然ですが、朝食を食べている残り90パーセントの人をターゲットにした方が、売り上げを伸ばす可能性は高いはずです。朝食を食べる人をターゲットとした場合、そのうちのどんな人にフォーカスすればいいのかを検討した結果、朝食の献立の決定権を持っている30~40代の女性で母親を中心にするのが良いということになりました。

 朝食は、朝、昼、晩の食事のうちでも、ご飯やパンなど、決まったメニューになることが多いのが特徴です。つまり朝食のメニューのラインアップに含めてもらえれば、長期的な関係性を築くことができます。もちろん、定番メニューに入るまでが大変なのですが、朝食市場に主戦場を変え、目標とする100億円を目指して、様々な施策を行っていくことになりました。

 次回は、ヨーグルトとの「トモダチ作戦」など朝食市場での認知を高めるために行った施策についてお話します。


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直近は商品の改良を加えず市場規模を拡大。現在はラインアップを増やし、発売25周年を迎えた。

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