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ロングセラーブランド、リステージの戦略 第3回 流通からの共感を得る
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ライオン株式会社
ヘルス&ホームケア事業本部 オーラルケア事業部 ブランドマネジャー
横手 弘宣
クリニカではリステージ以降、「歯医者さんと予防歯科を目指しましょう」というメッセージを前面に打ち出してきました。こうお話しすると「予防歯科が浸透し虫歯になる人が減れば、歯科医院へ行かなくなるのでは?」と疑問を持たれる方がいるかもしれません。しかし私たちの想いとしてあるのは、歯科医院に、治療のためだけでなく、予防のための定期健診に通ってもらいたい、ということです。歯に問題がなくても歯科医院へ通う機会ができれば結果的に受診の頻度は上がります。さらに予防のためのメンテナンスが来院の目的となれば、患者さんと歯科医師との会話も増えて、信頼関係を築くことにもつながり、定期的に健診に通いたいという気持ちも生まれると考えています。
予防歯科は歯科医院にとってもメリットがある
このような利害関係の一致を踏まえ、日本歯科医師会とも協力関係を強めることができ、予防歯科のポイントを知ってもらう啓発冊子の作成や、情報発信を全国の歯科医院で展開しています。このほかにも、自治体の保健所で行われている、1歳6カ月児健診の場で小さなお子様に向けたフッ素ハミガキサンプルや、仕上げみがきの方法を解説した冊子を配布しています。これらの啓発アクションや、自治体で配布している予防歯科啓発冊子には、すべて同じ「予防歯科アイコン」を掲出しています。また歯科医院の現場では、このアイコンと一緒にクリニカのブランドメッセンジャーである「堀北真希さん」が登場するポスターを掲出してもらっています。このように予防歯科という考え方や、定期健診の受診促進のための活動を連携させることで、歯科医院とライオンが、お互いにメリットを感じられる関係性ができました。この関係性の構築は、リステージにとっても大きなポイントとなりました。
予防歯科を啓発するポスター。歯科医院で掲出。
予防歯科のアイコンとして、歯をモチーフにしたクリニカのロゴが使われている予防歯科ガイド。
店頭での販売数が倍以上へ
予防歯科の認知が高まり、消費者のセルフケアの意識と行動が変わると、オーラルケアアイテムの使用率が向上する――。店頭で購入される商品がクリニカブランドであれば、私たちも販売を伸ばすことができ、ブランドロイヤリティの向上にもなるというロジックを、社内と流通に対して説き続けました。
その結果、店頭では、ブランドラインアップをエンドに一体陳列できる店頭展開が実現しました。通常、ブランド一体陳列は、メーカー側のエゴと捉えられることもありましたが、売場の中に予防歯科に関する啓発情報を発信するPOPを設置して、店頭の過剰な在庫を抑制しつつ店頭回転を高めるための工夫を凝らしたことで、クリニカをブランドシリーズ全体で展開する動機づけを徹底しました。このPOPを採用した売場では、POPのない店舗に比べて販売個数が倍近く伸張するという分析結果も確認できています。
クリニカのラインアップを揃えたエンド売場。予防歯科への関心を高め、アイテムの併買を促すつくり。
これまでは、比較的予防歯科への意識が高い人達が支持してくださったクリニカですが、今後は「予防歯科に興味はあるけれど、まだ行動には至っていない」人達を、いかに巻き込んでいくのか、をテーマにしています。そこで現在は、予防歯科実践の第一歩として、まずは毎日使うハミガキを見直してみませんか?というコミュニケーションを展開しています。毎日使うハミガキを、クリニカアドバンテージに変えてみて、それに加えて「デンタルリンス」や「デンタルフロス」などの、『一人ひとりのお口にあったケア』に前向きに実践できる土壌づくりに取り組んでいます。
こうした取り組みを通じ、私たち本気で願っているのは、「日本を予防歯科先進国とする」ことです。今はまだ、オーラルケア後進国である日本が、予防歯科の重要性の理解を深め、もっと前向きに実践し、いつまでも健康な歯を手に入れられる国に変わっていく……。このミッションを果たすため、これからも「クリニカだからできること」を1つでも多く提案していきたいと考えています。