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ロングセラーブランド、リステージの戦略第2回 歯科医師のイメージと消費者の習慣を変える

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ライオン株式会社
ヘルス&ホームケア事業本部 オーラルケア事業部 ブランドマネジャー

横手 弘宣

 クリニカは、「予防歯科」をブランドの基本コンセプトとしていますが、そもそも「予防歯科」とは何かと言いますと、虫歯などになってからの「治療」ではなく、なる前の「予防」を大切にすることです。歯磨きなど、日常的に自分で行うケアだけでなく、定期健診で歯科医師から指導を受け、毎日のケアに活かす。自分自身による「セルフケア」と歯科専門家による「プロケア」の両輪を循環させることで虫歯にならない社会を作ろう――これが、私たちの打ち出す「予防歯科」の狙いです。

「歯医者さんに褒められる」と嬉しい

 クリニカは、「予防歯科」をブランドの基本コンセプトとしていますが、そもそも「予防歯科」とは何かと言いますと、虫歯などになってからの「治療」ではなく、なる前の「予防」を大切にすることです。歯磨きなど、日常的に自分で行うケアだけでなく、定期健診で歯科医師から指導を受け、毎日のケアに活かす。自分自身による「セルフケア」と歯科専門家による「プロケア」の両輪を循環させることで虫歯にならない社会を作ろう――これが、私たちの打ち出す「予防歯科」の狙いです。

 まず、クリニカ自身が「予防歯科」を標榜するブランドとして、消費者から「ふさわしい」と思ってもらえるようになることを目指しました。そのためには、単に商品の販売を目的としたマーケティング投資ではなく、消費者がオーラルケアの重要性を理解・納得してもらうための啓発活動に積極的に投資して、消費者の意識から行動・習慣を変えていくアプローチが大切です。

 私たちが、啓発活動が重要だと考えたのには理由があります。実は、2004年頃にも、同じような予防コンセプトを打ち出した販促キャンペーンを展開したのですが、そのときは思ったような成果をあげることができずに終わりました。製品の機能を打ち出すコマーシャルに傾倒し、消費者が「予防歯科」の大切さを理解して、行動につなげていくための情報発信が後手に回ってしまったと考えているからです。そこで今回のリステージでは、消費者が共感し、実践しようと思ってもらえる「予防歯科」とはどうあるべきか、この探索に向けた定性調査を実施しました。

 調査から私たちが気づかされたのは、消費者の「歯科医師に対するイメージ」でした。現状、皆さんが歯科医院に行くタイミングとしては、虫歯がある、歯が痛むという必要に迫られていることが多い。治療目的で通院するため、医師とは特に会話をすることも少なく、マスクで表情が見えない先生に、歯を削られて、削り終わると次の治療日時を決めるというやり取りが繰り返されることが多くなりがちです。そこで生まれる歯科医師のイメージは「ちょっと怖い」、「治療を長引かせているのでは?」といったものでした。オーラルケア先進国の北欧では、虫歯予防の健診目的で通院することが当たり前で、歯科医師との心理的距離感も近いのですが、残念ながら日本では、まだまだ治療が主な目的となるので歯科医師に対して、少し後ろ向きなイメージがあったのです。一方で、だからこそ「専門家である歯医者さんに褒められるとやっぱり嬉しい!」と発言される方もおられました。これは私たちにとって大きな発見でした。

 消費者は、セルフケアの大切さをわかっているものの、あくまでも自己流で行っているため、自分自身のやり方が正しいのかどうか、自信が持てないものです。でも、ホンネでは自分のケアを見直したいという前向きな気持ちもあります。だからこそ歯科医師との会話の中で、自分自身のセルフケアに対するアドバイスをもらいつつ、毎日の予防歯科の実践を通じて、次の健診時に「よく磨けていますね」と褒めてもらえると嬉しいのです。この結果から、今回のリステージでは、クリニカは一人ひとりにあったセルフケアの実践を通じ「歯科医師に褒められる歯」が目指せるブランドである、という価値構造を採用することで、消費者の心理的ベネフィットを描くべきだと考えました。

専門家も推奨のセルフケアができる

20160617_02アドバンテージラインの商品。パッケージには専門家が推奨していることが書かれている。
 商品ラインアップも、このリステージを機に、高機能の「アドバンテージライン」を強化していきました。もちろん、私たちが勝手に高機能を謳うのではなく、歯科医師・衛生士と相談し、歯科専門家がすすめるセルフケアとはどんなものかを明確にしました。

 予防歯科のポイントは3つです。まずは「歯垢を残さず落とす」、次に「フッ素を口の中に残す」、そして口の中の「細菌を増やさない」ことです。このポイントをトータルにケアできるラインアップを整え、クリニカシリーズを使えば、あなたにあった予防歯科のセルフケアができる、というフォーメーションを組みました。消費者に対してケアのポイントを明確に提示したことは今回のリステージにとって、非常に効果的だったと感じています。

 プロモーションに関しても、テレビCMの最後に「歯科健診に行きましょう」というメッセージを流すようにしました。訴求内容も商品機能だけを伝えるのではなく、歯科医師に「まだまだですね」と言われながらも健診へ通い、歯科医師との関係を築きながら「予防歯科を実践しましょう」というストーリーになっています。初年度のテレビCMでは、歯科医師に指導してもらっているシーンを描いたので、2年目以降は定期健診で歯科医師から「よく磨けていますよ」と褒められているシーンへ切り替えることで、より「褒められる歯」というベネフィットを印象づけたつもりです。このテレビCMに対しては「歯科医師のイメージがよくなって助かる」といったお手紙をいただくなど反響もありました。


20160617_03歯科医院を舞台にした健診啓発のテレビCMを放映


 次回は、歯科医師団体との協力体制や社内調整について、またリステージ後の実績や今後の取り組みについてお話しします。

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