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新たなニーズを発掘する商品ブランド戦略 第2回 消費者の「違和感」を見逃すな
公開日:
株式会社資生堂
トレードマーケティング部 トレードマーケティング室 コラボレートマーケティンググループ
長野 種雅
「フルメーク ウォッシャブルベース(FWB)」は、自社オンラインショップ(watashi +)での先行発売と卵を使った動画を核としたプロモーションの効果もあり、2013年3月発売の予定を前倒しして店頭発売することになりました。店頭での発売時には、会社一丸となった大規模な店頭プロモーションを実施しています。先行発売時の動画と同じように卵を使い、お湯で簡単にメークが落ちることを端的に理解してもらえるプロモーションを行いました。
過去最速でシェア30%へ
「フルメーク ウォッシャブルベース(FWB)」は、自社オンラインショップ(watashi +)での先行発売と卵を使った動画を核としたプロモーションの効果もあり、2013年3月発売の予定を前倒しして店頭発売することになりました。店頭での発売時には、会社一丸となった大規模な店頭プロモーションを実施しています。先行発売時の動画と同じように卵を使い、お湯で簡単にメークが落ちることを端的に理解してもらえるプロモーションを行いました。店頭発売を前にした流通との商談には私も同行し、実演してみせました。流通の担当者も先行発売の実績や、私の実演動画が拡散していることを知っていたこともあり、私たちの大規模プロモーションの話にも前向きに乗ってもらえました。3月のテレビCM放映と同時に店頭を占拠するプロモーションを行い、ブランドの垂直立ち上げに成功しました。
メーク時
お湯でメークを落とした時
手小売りとの商談時に、長野氏が自らメークをして臨み、その場でお湯で落として見せた。
その結果、その場で大口の商談が実現したという。
その結果、その場で大口の商談が実現したという。
「メークが落ちていない」という誤解
一方で、課題も見えていました。まずは、立ち上げの段階でメークをお湯だけで落とすという新しい化粧習慣を伝えるメッセージに偏りすぎたため、お客さまに「本当にお湯だけでメークが落ちるのか?」という疑問を抱かせてしまったことです。そこでお客さまの疑問を払拭すべく、メークがお湯だけで簡単に落とせる事を端的に訴求するテレビCMを制作しました。さらによりインパクトの強い形に進化させたのが、歌舞伎俳優の片岡愛之助さんを起用したテレビCMや店頭ツールによる歌舞伎メークをお湯で落とすという訴求です。もうひとつ問題となったのは、お客さまの使用感触に関することでした。発売後にお客さまから届いた声で一番多かったのは「メークが落ちていない」というものです。実は、開発段階から認識していたのですが、FWBを使ってお湯でメークを落としたときの肌の手触りと、クレンジングオイルを使ったときのそれは違うということです。
クレンジングオイルを使ってメークを落とす際に肌が「キュキュッ」とする感じが、お客さまが「メークが落ちた」と感じるサインなのです。FWBにはお湯と反応することでメークを落とす効果につながる「ヴェールアクションポリマー」という独自の成分が含まれていますが、このポリマーがお湯と反応するときに、触感として少しぬるつきを感じるため、「メークが落ちていないのではないか」という不安・不信感につながってしまいました。ホントは落ちてるんですけどね。技術的に実際起きていることと、消費者の体験から感じる印象がイコールではないときに、どんなアプローチが必要なのかという視点は、この問題を通じた気づきになりました。
ブランドサイト上で、お湯でメークが落ちる仕組みを説明
次回は、男性が女性向けの化粧品を開発するにあたっての難しさ、それをクリアするために取り組んだことなどを紹介します。