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ヒット商品を生み出すマーケティング第1回 「汗ジミ」にクローズアップした理由
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ライオン株式会社
ヘルス&ホームケア事業本部 ビューティケア事業部 ブランドマネジャー
大古 勝朗
ライオンが2月に発売した制汗剤の新商品「Ban汗ブロックロールオン」の売れ行きが好調です。発売5カ月で累計販売個数は250万個を突破し、売り上げは計画の240%(対2~6月計画)に上ります。この勢いを受けて、当社の制汗剤、女性向けロールオンカテゴリーも前年比で1.4倍(2~6月)と大きく伸びています。
5カ月で計画の240%を売り上げ
私は、2011年に「Ban」ブランドを大幅にリニューアルしたときからブランドマネジャーとして制汗剤事業を担当しています。このコラムでは、制汗剤市場のターゲットインサイトや当社の商品開発、マーケティングの取り組みについて3回で紹介します。
「汗ジミ気にしない!」。これが「Ban汗ブロックロールオン」が提供したいベネフィットです。ポリマーとナノイオン制汗成分が肌に密着する技術を開発。ナノイオン制汗成分が汗の出口にぴったりとフタをします。
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「臭い 」と「汗ジミ」の違い
次に、医学的な証明はされていませんが、永久脱毛経験者の中にやたらワキ汗が出るように感じる人が多くいます。20代から30代の永久脱毛経験者は全体の35%で、そういう人達の体験がネットを中心に散見されます。
最後は、女性の服の流行や素材の変化で、色の変化が出やすい汗ジミが目立つ素材が流行しているということです。また、上記3つの社会的背景に加え、番組出演中のテレビアナウンサーやタレントの汗ジミが話題になったりしたこともあって、多くの人が汗ジミを気にしているだけでなく、社会的な関心事にもなってきていると感じました。
そこで、汗ジミを気にしている人を対象にしたグループインタビューを実施しました。議論は盛り上がり、失敗談などのエピソードもたくさん出てきたことから、実際に多くの女性が悩んでいることを確認しました。もう一方の争点である臭いに関しても同様のグループインタビューを実施しましたが、こちらは汗ジミほどのオープンな議論になりませんでした。
こうした結果から、「臭い」と「汗ジミ」はいずれも深刻な悩みではあるけれど、微妙に質の違うものであると感じられました。つまり、女性は「臭い」は一瞬たりとも出てはならないものとしてケアしているのに対し、「汗ジミ」は現実的には出てしまっているけれどポジティブに対処しようとしています。だから、多くの女性に失敗談があり、恥ずかしい思いをしているのだと感じて、製品開発に取り組みました。そして、「汗ジミ対策」をクローズアップしても、それが「恥ずかしさ」よりも「共感」に繋げられるのではと考え、ここを強調することを決めました。
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そこで「ワキ汗・汗ジミ」というニッチな言葉にスポットライトを当てました。「汗ジミ」の代表的な原因が「ワキ汗」で、密着性を高めた実感が得られることで消費者の「制汗剤」に対する意識をリードすることに成功しました。制汗力を「汗ジミ」、「ワキ汗」という言葉に変換できたことも「Ban汗ブロックロールオン」が成功したひとつの鍵になったと思います。
次回は、2011年のBanリニューアルにつながる制汗剤市場の変遷についてご紹介します。
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